DX時代に必要な新規事業とは? 検討プロセス&フレームワークを一挙紹介!

公開 : 2020.08.12 

今は“DX(デジタルトランスフォーメーション)時代”とも呼ばれ、最新のデジタル技術を駆使して新規事業を立ち上げる企業が増えています。
ただ、技術は日進月歩。新規事業の開発を任されたものの知識が追いつかず「どこから手をつけて良いかわからない」と悩んでいらっしゃる方も多いかもしれません。

そこで今回は、このDX時代に新規事業を立ち上げ、成功へ導くためのノウハウ集として、ビジネスアイデア検討のプロセスやフレームワークの解説から、新規事業立ち上げに際してありがちな失敗例とその解決法まで、わかりやすく解説します。

いざ新規事業の立ち上げで迷ったとき、ふと立ち返る“旅のしおり”として役立てていただければ嬉しい限りです。

今、新規事業を立ち上げるべき理由とは?

そもそも先の読めない今の時代に、なぜ新規事業を立ち上げる必要があるのでしょうか。収益の上げやすい既存事業だけに専念するのは、なぜ危ないのでしょうか。その理由について、「2つ」の観点からご説明します。

(1)会社の新たな「収益の軸」をつくるため

「プロダクト・ライフサイクル」という言葉をご存じでしょうか。事業というのは、立ち上げを行う「導入期」から始まり、高い成長が見込める「成長期」にさしかかり、やがて最も収益を上げられる「成熟期」を迎えます。ただ、その先に待つのは、「衰退期」。競争が激しくなり、成長率が著しく鈍化する時期です。ごく一部の例外を除いて、商品やサービスはこの衰退期を迎えることは避けられません。たとえ今事業が順調に見えたとしても、です。
しかも、現在はVUCA(「不安定・不確実・複雑・曖昧」を意味する言葉)の時代とも言われ、先行きが非常に不透明です。事業の寿命も縮む傾向にあり、“安定神話”のささやかれた老舗・大手の倒産も年々増えています。だからこそ、既存事業に代わる新たな収益の軸を生み出すことが、企業が長期的に継続していくには不可欠なのです。

(2)次世代を担う「経営人材」を育てるため

企業を永続させるためには、「将来の幹部を育てる」という観点が欠かせません。既存事業だけで幹部を育てるには、事業をつくるという経験の場がなかったり、責任あるポストが足りなかったりするケースもあるでしょう。だからこそ見込みのある人材を新規事業に抜擢し、実践の場で経営のノウハウを学んでもらう。将来の経営を担う人材の育成にはこうした取り組みが最適というわけです。
人材を育てるという観点で言うと、新規事業を任せる人材にはある程度の権限を与える必要があります。というのも、せっかく事業を立ち上げても「決定権は上層部にしかない」となると、力を発揮する場は限られてしまうからです。何重もの稟議を通さずとも柔軟にアイデアを実行できる裁量。そして、少なくとも数年間はひとつの新規事業に専念し、自由に挑戦できる風土。これらが与えられてこそ、経営の勘やノウハウを存分に培っていくことができるでしょう。

新規事業を立ち上げるプロセスとは?

新規事業が、企業の未来にとって欠かせないものであることはわかりました。ただ、いざ自分が担当者となって立ち上げに参加する場合、どこから手をつけるべきか悩む方も多いでしょう。
ここでは、新規事業を立ち上げてから実行に移すまでの一般的なプロセス(流れ)を簡単に説明します。ぜひアイデア出しへ取りかかる前に、お読みください。

フェーズ1:アイデアを“量産”してみる

最初は、事業のアイデアをたくさん出してみることです。意識すべきは、ひとまず制約をつけず自由に考えてみること。例えば、ふだん商品・サービスの利用者として不満に関していることを挙げてみたり、身近にあるサービスを掛け合わせてみたりして、多くの切り口から、新しい商品・サービスのアイデアを広げていきます。

アイデア創出法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています
デジタル時代を勝ち抜く新規事業のアイデアとは?|2020年 保存版|

フェーズ2:「事業ドメイン」を決める

良いアイデアが見つかったら、少しずつアイデアに輪郭を持たせていきましょう。そのうえで大切なのが、事業ドメインです。事業を行う「領域」を意味する言葉です。事業ドメインには、物理的な領域(「アパレルブランドを作る」「映画館を作る」など)と、機能的な領域(「お洒落な人を喜ばせる」「映画好きに楽しんでもらう」など)があります。それぞれについて考えることで、その商品・サービスの意義ややるべきことも見えやすくなるでしょう。

フェーズ3:コンセプト・理念を定める

意外と大切なのが、事業のコンセプト・理念を決めることです。事業のコンセプトとは、顧客がサービスを利用するシーンを「5W2H(誰が・いつ・どこで・なぜ・何を・どのように・どのくらいの値段で)」で簡潔にまとめたものです。これがあると、アイデアをチーム内で共有しやすくなります。また、理念は事業の「社会的意義」などを明文化したものです。これがあることで、事業を育てる情熱が高まり、チームの一体感を得やすくなるでしょう。

フェーズ4:一度、冷静な目で検討する

事業の輪郭が見えてきたら、一度客観的な目で商品・サービスを分析することが大切です。というのも、新規事業には「いざ始めてみたら思っていたよりニーズがなかった」「関連法の改正によって事業モデルに無理が出てきた」などの失敗がつきものです。少しでもそのリスクを減らすためには、勢いだけで走り出さずに、きちんと分析をすることが必要です。
分析に便利なのが「PEST」「3C」「SWOT」「ビジネスモデルキャンバス」などと呼ばれるフレームワーク(後の項目で細かく解説します)。ここで事業の属する市場やその将来性、政治や経済などの影響力を想定することで、事業アイデアの説得力がより高まっていきます。

フェーズ5:「事業モデル」を構築する

分析を終えたら、細かい事業モデルを決めていきましょう。事業モデルとは、事業に必要なリソース(人・モノ・金・情報 など)を、各工程(生産・仕入れ・物流・販促・営業など)でどう使うかをまとめたものです。これが決まれば、チームにどれくらいの人材が必要か・資金をどれくらい調達すればよいかなどがわかってきます。また「足りない人材やノウハウは、外部の協力企業を探して補おう」といった次のアクションも見えてくるものです。

フェーズ6:細かいスケジュールを立てる

ここまで来れば事業内容はかなりクリアになっているはずです。最後に「誰が・何を・いつまでにするのか」のスケジュールを立てます(取引先の開拓・アプリ開発・店舗の場所探しなど)。並行して、資金調達の方法や返済プラン、具体的な売上目標・KPI(達成指標)なども細かく決めましょう。ただし楽観的な見立てで進めると、準備が思うように進まず、士気も下がってしまいます。無理せず“現実的な”スケジュールを組むことが大切です。

フェーズ7:いざ、実行へ

事業計画が組み上がったら、商品・サービスを実際にスタートさせます。ここで陥りがちなのが、「失敗するのではないか…」との不安に囚われてなかなか実行に踏み出せないという問題です。確かに事業が失敗すれば会社の業績や自分のキャリアに影響があるでしょう。ですが、新規事業はそもそも失敗の確率のほうが高いものです。そして、一歩踏み出してしまえば、小さな失敗を繰り返しながら改善によってより良い事業へ育てていくこともできます。ぜひそれを意識し、勇気を持って事業を旗揚げしてほしいと思います。

知っておきたい「リーン・スタートアップ」
小さな失敗を繰り返しながら改善によって事業を成功に導くという点では、知っておいていただきたい考え方があります。それは「リーン・スタートアップ」です。これはベンチャー発祥の地・アメリカのシリコンバレーで生まれ、「Lean(無駄がない)」「Start-up(起業)」という言葉からなる方法論。具体的には、最小限のコストで事業を開発・運用し、素早く改善を繰り返すことで成功の確率を高めていくというものです。
リーン・スタートアップのメリットは、小規模(お試し)で事業を立ち上げるので、予算を節約できること。また、短期間でアイデア→仮説・検証→実行→改善を繰り返すので、すぐ軌道修正や撤退の判断を下せることです。先の読めない時代、新規事業に及び腰になりがちですが、後手になるほど競合と差がついてしまいます。まずは小規模・短期間で事業を始めてみることこそ、成功への第一歩なのです。

《一緒に読みたい記事》
新しい取り組みの成功確率を上げる「リーン・スタートアップ」

そのアイデアで大丈夫?“分析”フレームワーク4選!

先ほど少しだけ触れましたが、新規事業の成功率を高めるために欠かせないのが、分析のフレームワークです。ここでは、フレームワークの役割と種類、そして特に重宝するフレームワークを4つ紹介します。

そもそもフレームワークって何?

新規事業の成功率は高くありません。その確率は「1000件に3件(せんみつ)」とも言われるほどです。この小さな成功の可能性を少しでも大きくするためには「新サービスが進出する市場は適切か?」「長期的な需要はあるのか?」「企業の強みは活かせるのか?」など、多角的な分析が求められます。この“分析”をわかりやすくパターン化したものが、いわゆるフレームワークなのです。
客観的な視点でアイデアを検証・分析することで、事業の成功率を高められます。さらには効率良くアイデアの再現性を確かめられるので、実行までスピーディーに進めることにも貢献できるでしょう。

その1:「PEST」(ペスト分析)

フレームワークの中でも特に有名なのが、PESTです。Political、Economical、Social、Technologicalの頭文字4つをとったもので、事業を取り巻く“外部環境”を分析します。

  • P(Political/政治的要因)……業界・ビジネスに関係のある法律や条令、政治的な動き 
    例:薬機法の改正・強化
  • E(Economical/経済的要因)……経済の水準、為替、金利、消費者の平均所得などの変化 
    例:インフレ・所得の増加
  • S(Social/社会的要因)……人口、慣習、価値観、文化、流行などの移り変わり 
    例:健康食品への興味関心が増加
  • T(Technological/技術的要因)……AIやIoTなど、ビジネスを取り巻く技術の進化 
    例:ドローンによる配達技術の向上

上記のように世の中の大きな動き(「マクロ」と呼びます)を分析することで、新規事業がどのように影響を受けるか予測することができます。イメージは、3~5年後の中長期的な未来が目安。もちろん完璧な予測は難しいので、あくまで予想の範囲です。ただ、基盤の確立していない新規事業は、特に世の中の変化に影響を受けやすいもの。こうした外部の動向を先読みしておくことが、成功の確率を高めることにつながります。

その2:「3C」(サンシー分析)

世の中の大きな動きを知る方法が「PEST分析」なら、市場内に限った狭い範囲の動き(「ミクロ」と呼びます)を知る方法は「3C分析」が有効です。ちなみに3Cとは、Customer、Competitor、Companyの頭文字を略したもの。具体的には、それぞれ以下の項目について分析します。

  • Customer(顧客)……顧客のニーズ、消費行動における流行、市場の規模、市場の成長性など
    例:介護業界の市場規模●兆円、介護用品はレンタルする傾向、少子高齢化による市場成長率●%
  • Competitor(競合)……具体的な競合・その特徴、競合各社の占めるシェアなど
    例:A社は価格が安い、B社は営業拠点が多い、A社・B社・C社合わせて業界シェア70%を占める
  • Company(自社)……想定しているサービス・商品の特徴、リソース、既存事業との関連など
    例:福祉用品のサブスクリプション・低価格で豊富な商品ラインナップ、介護施設の運営ノウハウあり

「3C分析」を行うメリットは、業界内の立ち位置を明らかにし、失敗リスクを回避できることです。例えば、競合・顧客を分析することで「すでに市場がレッドオーシャン(飽和状態)だった」という失敗を避けられます。また自社を分析することで、どの点で差別化して競合と戦えばよいかもわかります。
そして、「PEST分析」「3C分析」で終わりではありません。ここで得られた情報は、次にご紹介する「SWOT分析」で活きてきます。

その3:「SWOT」(スウォット分析)

「SWOT分析」とは、上2つの分析で得た情報を活かして、ビジネス上の戦略を導き出す方法です。「SWOT」はそれぞれ、Strength、Weakness、Opportunity、Threatの頭文字をとったもの。ちなみに自社の努力によって改善できる強み・弱みを「内部環境」と呼び、自社ではどうにもならない機会・脅威を「外部環境」と呼びます。具体的には、以下のような内容を分析していくイメージです。

<プラス要素/“追い風”となるもの>

  • S(Strength/自社の強み)
    例:立地良好、チーズクリームの原産地とパイプがあり仕入れやすい、資本力による安価・大量仕入れなど
  • O(Opportunity/世の中・市場における機会)
    例:タピオカに代わってチーズティーのブームが来ている、中食文化の浸透など

<マイナス要素/“向かい風”となるもの>

  • W(Weakness/自社の弱み)
    例:店舗スタッフの不足、ノウハウの不足、ブランドとしての認知度の低さなど
  • T(Threat/世の中・市場における脅威)
    例:少子高齢化による若者の減少、飲食業界を志望する人材の減少、円安による仕入れコスト増加など

「SWOT分析」を行うメリットは、世の中の動向と自社の優位性を照らし合わせ、マーケティング戦略を決められること。戦い方がわかれば、事業の成功率もグンと上がることでしょう。
このように「PEST分析(外部環境の分析)」→「3C分析(内部環境の分析)」→「SWOT分析」の順に進めれば、情報を余すことなく活用できます。

その4:「ビジネスモデルキャンバス」

最後に紹介するフレームワークは、「ビジネスモデルキャンバス」です。上で述べた3つの分析方法は、アイデアを考える初期段階で「そのアイデアに勝算はあるか?」を見極めるものでした。一方でビジネスモデルキャンバスは、勝算がありそうだとわかったアイデアを「より具体的なビジネスモデル」にまとめるもの。「どう収益化するか」「リソースはどう使うか」といった9つの項目を埋めていき、ビジネスモデルを1枚の表にまとめます。

  • 顧客……商品・サービスの利用者 例:家にいながら自分に似合う服を探している人
  • 価値……顧客に提供できる価値 例:事前登録した身体データをもとに服を試着・購入できる
  • 販路……どう商品・サービスを届けるか 例:自社ECサイト(通販)
  • 顧客との継続的な関係……顧客との接点の作り方 例:会員制(登録は無料)
  • 収益……マネタイズの方法、売上の種類 例:サイトを通じた商品の売上、アパレルブランドからの広告費
  • リソース……活用できるキーリソース 例:セレクトショップの運営ノウハウ
  • ビジネス活動……事業で必要となる行動 例:ECサイト開発・運用
  • ビジネスパートナー……委託先・仕入先等のパートナー 例:各アパレルブランド、配送会社
  • コスト……事業を進めるための費用 例:ECサイト開発・運用費

ビジネスモデルキャンバスのメリットは、たった9つの項目を埋めるだけで、アイデアの価値がひと目でわかること。詳細な事業計画書を作らずとも、チーム内で効率良くアイデアを共有できます。そして、ある程度実行までの道筋が明らかになるため、立ち上げの準備もスムーズになります。成功率を高めるために、ぜひ推奨したいフレームワークです。

各フレームワークについてはこちらの記事でも詳しく解説しています
新規事業の検討に役立つフレームワーク“5選”|図解付き|

新規事業に起こりがちな“課題”とは?

いざ新規事業を考え始めてみたものの、思わぬ“壁”にぶつかる場面も多々あるかもしれません。そこでここでは、新規事業を立ち上げるときに起こりがちな「失敗例」、そしてその解決方法を3つ紹介します。

失敗例1:顧客ニーズ・市場の動きを読み誤った

面白そうなアイデアだったのに、いざ事業を始めてみると収益が上がらない。こうした失敗はビジネスアイデアを考えるフェーズに、問題が潜んでいる可能性が高いです。
解決策としては、フレームワークを使った十分な分析を怠らないこと。「本当にこの商品・サービスは、顧客がお金を払って利用したいものなのか?」を冷静に考え、アイデアを見直しましょう。分析に自信がない場合は、外部のコンサルタントも活用しながら、正しい手順で進めることをおすすめします。

失敗例2:人的リソースが圧倒的に足りていない

いざ本格的に事業を開始しようとしたら、人手不足でプロジェクトが回らない。これはまずスケジュールの見立てに問題があることが考えられます。また、新規事業の担当者に十分な裁量と時間が与えられていないのが原因というケースもあります。新規事業の担当者の悩みとして「既存事業の業務も並行して担っている」「新規事業に割く予算が少なく、メンバーを集められない」という声も多く聞かれます。
こうした問題を避けるためには、担当者が新規事業に腰を据えて取り組める「時間の余裕」と「裁量」を持つ必要があるでしょう。

失敗例3:デジタル技術に関するノウハウがない

今や新規事業とデジタル技術は切っても切れない関係だと言えますが、必ずしもIT分野に明るいメンバーが参加しているとは限りません。「デジタル技術を活用すればもっとうまくできたはず」「AIやIoTという言葉に期待しすぎて、その技術を具体的にどう使うかしっかり詰められていない」ということは得てして起こりがちです。
解決策のひとつは、デジタル分野に強いコンサルファームに支援してもらうこと。そして、できればアイデア出しの段階から参画してもらい、ITシステムの実装まで伴走してもらうことです。そうすることで、日々新しく出てくるテクノロジーを上手にビジネスプランに組み込んでいくことができるようになります。
デジタル技術のような専門分野に関しては自社で解決することにこだわらず、外部を上手に活用しながら知識やスキルを移管してもらう。これも大切な考え方なのです。

外部専門家の活用法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています
新規事業の立ち上げを成功させる「コンサル活用法」とは?

これからの時代、新規事業は“DX”なくして語れない

先ほど述べたように、現代の新規事業にはデジタル技術の活用が欠かせません。この「デジタル技術」が企業にもたらす影響について、“DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)”という言葉があります。「そもそもDXの意味は?」「新規事業との関係は?」など、知っておくべき知識にも簡単に触れておきます。

そもそも“DX”とは?

DXとは、もともとは2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱されたもので、下記の概念だそうです。

「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」

2020年の今となっては「ITが人々の生活を変化させる」というのは当たり前と思える考え方ですし、これはビジネスに限らず世の中全体の変化についての抽象的な説明にすぎません。今流行りのビジネス用語としてのDXを成立させるには少し別の解釈が必要になります。
実はビジネス用語としての「DX」にはさまざまな定義があるようですが、ここでは、おそらく日本でもっとも知られている経済産業省によるDXレポートを参照します。

IDCJapan株式会社の定義を引用したDXレポートによるDXの定義は以下の通りです(経済産業省『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』より引用)。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

長いので、ここではDXの定義を簡単に「既存のビジネスモデルにとらわれず、新しいデジタル技術を活用することによって、新たな価値を生み出していくこと」として話を進めたいと思います。

なぜDXの考え方が、新規事業に必要なのか?

なぜ、DXレポートに書かれているように「新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して…」デジタル領域での競争に加わる必要があるのでしょうか? 大きくネガティブ・ポジティブ2つの観点から、お伝えします。

消費者の行動が変わる

1つは「ビジネスにおいてそもそも既存の方法論が通用しなくなっている」ということ。例えば、今やホテルや飲食店の予約はネットでスムーズに行えて、インターネットをつなげば家電すら遠隔で操作できる時代です。こうしてデジタル技術によって消費者の行動が変わることを、デジタルディスラプションと呼びます。
デジタル技術によって置き換えられた世の中は、もはや既存事業のノウハウだけでは太刀打ちできません。だからこそデジタル技術を使って新規事業を生み出すことは、もはや必然であり、避けては通れない道であるとも言えるのです。

新たな市場が生まれる

2つめは、「新たなビジネスチャンスが生まれている」からです。デジタル技術の浸透によって、消費者の行動は「モノ」から「コト」へ。「購入」から「シェア」へというように大きく変化しています。顧客のニーズが変化すれば、そこに新たな市場が生まれるということです。
デジタル技術によって生み出されたビジネスチャンスに、デジタル技術を持って参入する。これは企業にとってポジティブな行動であり、さらなる飛躍を遂げるきっかけでもあるのです。

DX時代で新たに加わる、新規事業のプロセスとは?

では、DX時代において新規事業の開発プロセスは、どう変わるのでしょうか。新たに必要となるプロセスを2つ紹介します。

(1)IT技術を取り入れたビジネス戦略

当然ながら、デジタル技術を取り入れる場合、そのためのシステムを開発したり、既存の基幹システムに接続したりする必要が出てきます。しかし、日本の大手企業の多くではIT部門が「レガシーシステム(古いシステム)の保守に追われ、IT分野での新たな取り組みをする余力を持っていないと言われています。
経済産業省(DXレポート)の言葉を借りれば、DXの推進には「レガシーシステム(古いシステム)の刷新」が求められるということ。この点については新規事業という一分野の問題ではなく企業全体の問題になりますが、最新のIT技術をビジネス戦略に盛り込み、ITとビジネスの各部門が一体となってDXに取り組んでいく必要があります。

(2)「PoC」を駆使したより細かい検証

PoC(Proof of Concept)は「概念実証」と訳され、試作開発によってビジネスアイデアの価値を検証する工程を意味します。例えば、新規事業でアプリをリリースする際は、まずプロトタイプ(改善を前提とした初期モデル)を開発してみる。実際にそれを使ってみて、ユーザーの抱きそうな不満を確かめ改善していく。こうした検証を入念に行い、未然に問題を防ぐ必要があります。
新規性が高く、実際にユーザーに試してもらわないとビジネスモデルが成立するかどうか予測が難しい事業においては、必須プロセスと言えるでしょう。

DX時代だから起こりうる、新規事業の“落とし穴”とは?

DX時代の新規事業は、このように過去の事業立ち上げよりも複雑なプロセスや専門的なノウハウが必要になってくるといえます。ここでは、そうした状況だからこそ陥ってしまう新規事業の失敗例と、その解決策について紹介します。

(1)IT技術をうまく戦略に落とし込めない

「AIを使った新規事業を考えろ」と言われたけれども、どう活用すればいいのか見当もつかない。新規事業の担当者からそんな話を聞くこともあります。
解決策としては、アイデア創出フェーズの時点で、ITに強い人材をチームに加えること。社内で人材を確保できなければ、IT系コンサルファームのコンサルタントをはじめ外部のプロを早めに頼ることが肝心です。具体的にその技術の持つ可能性や開発コストがわかる人に最初から伴走してもらえば、その後の工程も円滑に進みます。

(2)IT人材のミスマッチが起こっている

先の「レガシーシステム」の問題点で説明した通り、企業によっては「ITに強い人材が、新規事業ではなく旧システムの運用に割かれている」という風に、人材のミスマッチが起こっていることもあります。
解決策としては、人材の配置を早めに見直すこと。そして、その方法がわからなければ、ITに強いコンサルタントに相談することです。コンサルファームの中には、アイデアの創出からIT人材の育成、人材配置の見直しまで支援してくれる会社もあります。そうしたパートナーを早めに見つけることも、ひとつの戦略です。

外部専門家の活用法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています
新規事業の立ち上げを成功させる「コンサル活用法」とは?

DX時代の今、新規事業を成功に導くには?

“DX時代”の新規事業についてさまざまな視点で説明してきましたが、結論としては、現代は自社だけで新規事業をいきなり成功に導くのは至難の業だといえます(とくに新しい技術を活用するケースにおいては)。

ご紹介したプロセスやフレームワークも、正しく使って初めてその効果を発揮します。しかし、外部環境の分析においてはこれからのデジタル技術動向の知見が求められたり、ユーザーとの接点としてデジタルデバイスの活用が欠かせなかったりと、ある程度の知識がないと難しいところがあります。
こうした知識を新規事業の担当者がイチから学ぶには時間がかかりますし、何よりスピードがものを言うDX時代に、無駄な時間はかけていられません。

だからこそおすすめしたいのが、外部のリソースを思い切って頼ってみること。特にIT系専門のコンサルファームは、デジタル技術を用いて新規事業を立ち上げてきた、豊富な実績とノウハウがあります。
予算の問題からコンサルタントの活用に二の足を踏む企業もあるかもしれませんが、依頼する相手をしっかり見極めれば、結果的に自社のリソースだけで時間をかけて努力するよりも費用対効果は高いといえます。自社だけで済ませて、失敗の多大な負債を背負うより経済的である可能性もあります。

ぜひコンサルタントを選ぶ際は、次の2点ご注目ください。
1つは、「丸投げすれば指示通りやってくれる会社」ではなく、「パートナーとして一緒に事業を育ててくれる会社」を選ぶこと。後者なら、成果物だけでなく、自社に対して豊富な知識とノウハウを提供し、スキルを移管することも可能です。
またもう1つは分析や報告書作成だけで終わる会社ではなく、仮説立てや検証、実際のシステムの実装まで、総合的に対応してくれる会社を選ぶことです。そうすれば、工程ごとに別会社へ依頼する手間も省けますし、それによる情報の分断やコストの増加も防ぐことができます。

NCDCは、デジタル領域の新規事業に欠かせない要素にフォーカスし、一元的にサービスを提供しています。お客様を主役にとらえ、スキル移管を第一に考えたプロジェクト設計を行うことが大きな特徴です。
DXや新規商品・サービスの開発に関する課題をお持ちの方はぜひ一度ご相談ください

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