新しい取り組みの成功確率を上げる「リーン・スタートアップ」

公開 : 2014.08.08  最終更新 : 2019.09.05
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シリコンバレーの成功しているスタートアップ企業が用いている「リーン・スタートアップ」というマネジメント手法が日本でも注目されています。
このコラムではこの手法のメリットと、NCDCが関わったプロジェクトでのリーン・スタートアップの成功事例について紹介したいと思います。

『THE LEAN STARTUP』が出版されたのは2011年

書籍『THE LEAN STARTUP』が出版され、シリコンバレーをはじめアメリカで一大ブームを巻き起こしたのが2011年。日本でも2012年には『リーン・スタートアップ』が出版されているので、最初のブームからはすでに数年が経過していますが、まだまだリーン・スタートアップというキーワードへの注目度は高いのではないでしょうか。
おそらく起業家に限らず多くの方が一度は耳にしたことがある言葉でしょう。

実はこのコラムはもともと2014年に公開されたものなのですが、リーン・スタートアップはNCDCのビジネスと相性が良い手法で、2019年現在でもNCDCに興味を持っていただく方からよく聞くキーワードなので、少し情報をアップデートしてあらためて取り上げたいと思います。

リーン・スタートアップとは?

リーン・スタートアップを簡単に説明すると「コストをそれほどかけずに最低限の機能を持った製品やサービスを短期間で作り、顧客に提供する」そして「顧客の反応を観察して改善を繰り返す事で、成功モデルに素早く近づける」というアプローチのことです(もし製品、サービスが市場に受け入れられなければ撤退も素早く行う)。

書籍『RUNNING LEAN』では以下のように表現されています。

ーー引用ここからーー  「成功するスタートアップとは、リソースを使い切る前に十分なイテレーション(反復)を行うスタートアップの事である」「リソースを使い切る前にプランA(最初のプラン)からうまくいくプランへと反復的に移行するプロセス」  ーー引用ここまでーー

リーン・スタートアップという手法は企業規模に関係ない

「リーン・スタートアップ」という名称から、このマネジメント手法はスタートアップ企業向きのものであり、日本の伝統的な大手企業には関係ないと思われがちですが、それは誤りです。
新しいマーケットを創造していくような、環境変化を予測し難い製品・サービスを開発する場合や、成功の為の方法論が確立されていない領域においては、大きな投資をすることなく素早く成功確率の高いプランにシフトできるこの手法は、企業規模に関係なくメリットがあります。そのため、リソースの限られるスタートアップ企業だけでなく、大企業でもリーン・スタートアップの手法を採用すべきシーンはあります。

余談ですが、実はこのリーン・スタートアップという名称は、もともとはトヨタ自動車の生産方式にちなんだものだそうで、書籍「リーン・スタートアップ」によると以下のように解説されています。

ーー引用ここからーー  リーンスタートアップという名前は、トヨタで大野耐一と新郷重夫が開発したリーン生産方式にちなんだものだ。リーンな考え方は、サプライチェーンや製造設備の運営方法を根本から変えつつある。価値を生み出す活動と無駄がはっきりと区別され、裏の裏にいたるまで質の高い製品が作れるようになるのだ。〜略〜 このような考え方を企業に適用し、他社とは異なる基準で自社の進捗を図るべきだとするのがリーンスタートアップだ。  ーー引用ここまでーー

伝統的な日本企業の手法がかたちを変えてアメリカのスタートアップ企業で採用され、彼らの成功によって日本に逆輸入されている事実には興味深いものがあります。
このような背景を知らないと「最低限の機能を持った試作品を短期間で作り、顧客に提供する」という手法は、新製品を出すたびに機能が追加されていきどんどん複雑化していくことが多い日本の大手企業(メーカー)とはまったく無縁のアイディアのように思えませんか?

なぜ、リーン・スタートアップが成功への近道なのか?

リーン・スタートアップと従来のアプローチを簡単に比較すると以下のようになるのではないでしょうか。

LeanStartUp_Ls

なぜ、リーン・スタートアップが今、成功へ近づくための最適な手法と考えられているのか、さまざまな新製品・サービス開発プロジェクトに関わってきた中で私たちが考える理由を3つ上げてみます。(もちろんこれ以外の理由もあるかもしれません)

  1. 一昔前と比較してビジネスのスピードが格段に早くなっている
  2. テクノロジーの進歩も加速しており、これまで実現不可能だったアイディアが、ある日突然実現可能になることがある
  3. コンシューマー向けのビジネスは特に製品ライフサイクルが短い

市場調査や大量のデータ分析、仮説を精密に練り上げるといった作業に時間をかけてプランニングしても、いざ実行に移す段階になって前提が大きく変わっていたのでは折角のプランも効果を発揮できません。従って、技術や社会環境が変わる前に素早く製品やサービスをリリースし、市場の評価を見て改善をなん度も繰り返すことで正解に確実に近づいていくこのアプローチがフィットするケースが多いと考えています。
(もちろん、製品やサービスの特性次第ですので、全ての案件で「リーン・スタートアップ」のアプローチをそのまま適用することが良いとは限りません)

リーン・スタートアップの成功事例

最後に、「リーン・スタートアップ」のアプローチで新規ビジネスを軌道に乗せた事例を紹介します。

リーン・スタートアップの成功事例1
ひとつめはリレーションズ株式会社様が手がける自転車シェアリングビジネス“COGOO”です。
ビジネスの企画段階からシステムの実装、アプリやサーバーサイドの開発等、NCDCも深く関わったプロジェクトです。
自転車シェアリングのビジネスは著名な大手企業が何社か事業運営しているのですが、“COGOO”はスマホアプリを活用する事で、従来とは全く違う仕組みでビジネスを構築しました。当初は横浜国立大学で展開していたのですが、ここで改善を繰り返しユーザーである学生の評価を得たモデルにして、その後他の大学へ横展開を図りました。サービス開始してから既に3万回以上のレンタル(2014年3月12日時点、https://www.facebook.com/CogooBicycleより)を実現し、現在(2014年8月4日時点)では東京大学、一橋大学、千葉大学、京都大学、大阪大学、九州大学にも実績を広げています。

NCDCとリレーションズ株式会社様がどのようにプロジェクトを進めたかは、事例紹介のページでご紹介しています。 ぜひ併せてご覧ください。

リーン・スタートアップの成功事例2
ふたつめは大手建設会社が開発した「建設現場の杭打ちデータ管理システム」です。
建設現場では杭打ちのデータをすべて工事レポートとして残す必要があります。従来は一つの現場で何本も打ち込む杭すべてについて手作業でレポートを作成していたため、その膨大な作業量とデータの正確性が課題となっていました。
この「杭打ちデータ管理システム」開発プロジェクトは、IoTを使って人手を介さず杭打ち機の保持しているデータから直接工事レポートを作成する試みで、実用化すれば大幅な現場の作業効率化が期待できます。そのため人手不足が深刻化し、作業効率の改善を急ぐ建設会社にとっては、まさに素早く可否を判断し、可能性があるならスピーディーに実現したい仕組みと言えます。

NCDCは、このプロジェクトにPoC(コンセプト実証)段階から参加して、杭打ち機をIoT化するハードウェアの試作、現場の作業者が使うアプリケーションの開発、サーバサイドの開発などを担っています。
もう少し詳しく説明すると、まず必要な機能だけを杭打ち機に外付けで追加してIoTでデータをクラウドに送る比較的安価なシステムを開発しました。またNCDCのアプリ開発プラットフォーム「AppPot」を活用することで、現場で使うアプリの開発にかかる期間・コストも圧縮しました。そのようにしてまずは簡単な仕組みで作ったシステムをいくつかの現場での試用し、結果を踏まえて改善作業を繰り返していき、最終的には全現場で本格導入されるところまで発展していきました。
まさにリーン・スタートアップでサービスを立ち上げた事例といえます。

この事例に関連するサービス
PoC(コンセプト実証)サポート
IoT/M2Mソリューション
モバイルアプリケーション開発

リーン・スタートアップに取り組む企業にNCDCが提供できるもの

「コストをそれほどかけずに最低限の機能を持った製品やサービスを短期間で作り、顧客に提供する」そして「顧客の反応を観察して改善を繰り返す事で、成功モデルに素早く近づける」というリーン・スタートアップの手法は、小規模でスピーディーにものごとを進めることを可能にしますが、一方でそれを実現するためにはビジネス戦略、実証、システム開発といった広範囲のプロセスをスピーディーに実現できるチームが必要になります。
大手企業でさまざまな部署をまたいだ取り組みになってしまうと結局リーン・スタートアップにならないため、自社内に新しいスモールチームをつくってその機能を担うか、一元的にこれらの機能を提供できるパートナー企業を見つけるかが必要になります。

NCDCは、デザイン思考やアジャイル開発手法の活用によりこれらの機能を一元的に提供できる数少ない国内企業のひとつです。
新規製品やサービスの立ち上げにあたりリーン・スタートアップの手法を検討されている方はぜひNCDCにご相談ください。

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