NCDCの早津です。先日、「新規事業・新サービス創造ワークショップ」という勉強会を開催しました。非常に応募も多く、多くの方に興味のあるテーマなのだなと再確認しました。今日はNCDCとしてどうやって新規サービスを作ってきたか?の話を中心に、新規サービス策定の考え方について話したいと思います。
自社にとっての新規サービスの意義を明確に
まず最初に、新規サービスや新規事業を作る意義を明確にする必要があります。新しい収益の柱を建てるためというのが一番多いと思いますが、大手企業であれば会社のイメージアップや社員のモチベーション向上、社員のスキル習得の意義で新規事業を検討する場合もあるでしょう。注意しないといけないのは、本音では「社員のスキル習得ができれば良い」程度にしか思っていないのに表に出ている目的は「新しい収益の柱を」などと声高らかに叫ばれていることがあることです。こういったギャップがあると最後までうまくいかないことが多いです。
それでは、NCDCでは新規事業についてどう考えているか?
NCDCでは設立当初から今まで自分たちがやってきたコンサルティングビジネスを未来永劫やり続けていきたいとは思っていませんでした。コンサルティングをやるためにNCDCを設立したのではないということです。理由としてはいくつかありますが、
「そもそもコンサルティングを続けるだけであれば起業する必要もない」
「コンサルティングは自分が稼働した時間分、契約主のための価値創造となります。世の中に広くインパクトを与えることは難しい。つまりリバレッジが効きにくいビジネスモデルです。広くインパクトを与えるためには優秀なコンサルタントの人数が必要になる。しかし、人数の多い会社はしたくない」
といったところが主なものでした。
しかし、創業当初は経営を軌道に載せることが最優先ですので、コンサルティングを行いながら、新規事業の立案を平行して行っていきました。
結果として、創業二期目の途中からモバイルプラットフォームであるAppPotを開発して販売を始めました。これがNCDCでのソフトウェア販売の新規事業となりました。
新規事業を決めるための考え方は?
創業二期目の途中から新規事業としてAppPotの開発、販売をはじめたと簡単に紹介しましたが、決していきなりAppPotが思いついたわけではありません。その前段階でいくつかボツになった企画があります。例えば以下の2企画などです。
- タブレット専用のSFAアプリ製品の開発と販売
- 企業向けの簡単にチャットができるアプリ(現在でいうSlackのようなもの)の開発と販売
市場調査をして、競合分析もして、ワイヤーフレームまで作って、知り合いにインタビューなどしました。しかし、実際のサービス化までは至りませんでした。
それはなぜか?
- 市場や顧客はいるのか?(つまりはニーズがあるのか?)
- 自社の強みが活かせるか?
- 競合の状況はどうなのか?
新規事業の考え方は上記の3つで十分事足りると思っているのですが、特に「市場や顧客はいるのか?(つまりはニーズがあるのか?)」と「自社の強みが活かせるか?」の2つが揃っていないと難しいと思います。ボツになったサービスはその辺りが弱かったのです。
タブレット専用SFAの分析
- 市場:特に日本市場は軽量なノートPCとデータカードが企業から貸与されている企業が多く、タブレットでなくともほぼ業務に支障がない。よって☓
- 自社の強み:私含め、当時のメンバーで営業経験者がゼロ。リアルな営業の活動がわからない。よって☓
企業向けグループチャットの分析
- 市場:調べなくてもニーズは多くあることは明確。よって○
- 自社の強み:柔軟な働き方をしている我々自身がほしいと思うサービスを考えることができる。しかし、1ユーザ数百円といったライトなビジネスには慣れていない。よって△
このように市場や自社で可能性がある場合は競合の分析が必要でしょう。
- 競合:当時から日本製ではChatworkなどが一定のシェアを持っていましたし、Salesforce.comのChatterなども出ていました。それらの製品の課題もそれなりにありましたので、それを改善させる案は考えられました。そして、なにより競合製品が多く存在するということは市場に求められているということなので、非常に魅力的でもあります。世の中に一つの製品だけ専有されている市場などありませんので、競合がそれなりにあるというのは非常にビジネスがしやすいと判断できます。よって○
分析結果からは魅力だったのですが、ボツにしました。なぜなら、「ChatworkやChatterのようなライトな金額のサービスをやりたいか?」というところがどうしても腹に落ちなかったからです。自社分析にところになりますが、NCDCは業界をリードするような大手企業様向けに高級品を提供するところに強みがあります。どうしても低価格で大人数向けのサービスはNCDCとして最初の新規事業としては採用できませんでした。今後、ステージが変わればそういったサービスを作ることもあるでしょうが。結局は「自社分析」が☓になったということなのです。
分析は「競合がいるからダメ」とは限らない
ここで一般論ですが、上記3C分析を新規事業の分析に使用するのは非常に良いと思います。しかし、重み付けや解釈には特徴があります。特に重要なのが「自社」分析です。市場分析は多様化した現代の市場では市場が全くないということはないですし、新たに市場を作ることも容易になってきていますので、考え方や戦略次第でなんとでもなります。
競合は「競合がいるからダメだ」といった分析ではなく、「競合がすでにサービスして市場に受け入れられているというファクトから、より改善案が出せないか」といったヒントに使うことです。世の中の多くのヒット商品は二番手のものが多いですよね。競合がいたほうが良いのです。
長くなりましたので、次回はAppPot開発の分析をしたいと思います。
連載コラム
【ベンチャー経営1】40歳からなぜ起業した?
【ベンチャー経営2】創業時に最低限必要なこと
【ベンチャー経営3】創業初期に重要な数字とは?
【ベンチャー経営4】営業経験なしの経営者がどうやって売上を?(前編)
【ベンチャー経営4】営業経験なしの経営者がどうやって売上を?(後編)
【ベンチャー経営6】新規サービスをどう作る?(その2)
最後に、NCDCのサービスについて
このコラムを読んでいる方の多くは、起業に関心があるのだと思います。
NCDCでは比較的規模の大きな企業とのお取り引きが多いので、個人向けの起業支援のようなサービスはありませんが、企業内ベンチャーや新規事業開発部門で新製品やサービスの立ち上げに取り組む方のお役には立てると思います。
新サービス開発支援のコンサルティングから、UX/UIデザイン、業務システムやモバイルアプリの開発まで、一元的なサポートが可能なので、もし新規事業に取り組むためのヒントを探してこの「ベンチャー経営コラム」に関心を持っていただいた方がいれば、お気軽にご相談ください。
※この連載コラムはNCDC創業から5年目前後の2014~2016年に書かれたものです。会社の規模やサービスも徐々に変化しており2019年現在で古くなっている情報もありますが、起業やベンチャー企業で働くことに興味がある方向けに、「ベンチャー起業創業から数年目の経営者の考えたこと、やったこと」を知っていただくヒントとして、当時の記事をほぼそのまま掲載しています。
早津俊秀