【ベンチャー経営2】創業時に最低限必要なこと

公開 : 2014.12.21  最終更新 : 2019.09.05
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前回、起業に至る動機などについて書きました。今回は起業して一年以内に絶対に必要なことについて書いていきたいと思います。今回は精神面などの話ではなく、実務に関する話を中心にまとめておきます。これから起業したいと考えている人にとっては参考になるのでは?と思います。

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会社設立準備

手続き含めた様々な情報は税理士事務所にいけばフォーマットがあって、提案してもらえます。多くの税理士事務所が会社登記などの手続きと一年間の税理業務をセットにしたサービスを持っています。Webで検索して、何社かの提案を聞けば良いと思います。私も三社ほどの会社の提案を受けて、一社を選定しました。現在もそちらの会社に税務・人事業務をアウトソースしています。最初に選定するポイントですが、一番大事なのは「価格」でしょう。一年目からものすごくビジネスが発展して、税務の複雑なサービスが必要になる可能性は低いでしょうから、価格を抑えるのが一番大切です。私は「ベンチャーパック」みたいなものを用意している定型化されたメニューを持っている会社にしました。税理士報酬も月一万円以内で契約することができました。それで足りなくなれば会社を変える、もっと手厚いサービスに変える、を行えば良いだけです。ちなみに多くの会社が会社登記費用の手数料は税理士報酬の年間契約をすればゼロ円のところが多いです。もちろんそれは活用します。

会社設立時に決めないといけない重要なこと「資本金」について

「資本金は会社の体力や信用を表すので、できるだけ多く」などと書いてある書籍も多いと思いますが、一概にそんなことはありません。資本金が小さいと、税金の優遇策などを受けることが出来る場合があります。私が創業した2011年には資本金1000万円以下の創業間もない企業には消費税の優遇処置がありましたので、大変助かりました。今もあるのか、変わっているのかわかりませんが、そういった優遇処置を知っておくことが大変重要です。
また、NCDCは資本金800万円と少額ですが、外資系企業も含めた大手企業との契約でも資本金が小さいことで与信がNGになり、契約ができなかったことは一度もありません。提供しているサービスにもよりますが、会社の信用のために資本金を大きくするというのは必須かどうか考えたほうが良いでしょう。

事業スタート時に一番大切なこと「資金繰り」「資金政策」について

何より、これが一番大切です。学生のスタートアップなどでは創業前からVCからの投資を得てというパターンも聞きますが、40歳を過ぎて、法人向けのサービスから始めるとなると、創業時にいきなりVCから投資を得るというのは難しいでしょう。また、創業当時は株価も設立時と変わらないため、その時にVCからちょっとした金額を得ても、自分の株式比率が低くなるだけであまりメリットがないと思います。「VCには絶対に自分から声をかけるな、かけられるまで待て」とは私の先輩から教えていただいた言葉です。
その場合、最も資金を調達しやすく、株の比率も下げない方法は政府系の銀行である「日本政策金融公庫」の各種創業融資だと思います。融資には保証人や担保が必要なのが一般的ですが、日本政策金融公庫では無担保、無保証人の創業融資があります。これを使わない手はないと思います。なぜMBAなどでこれを教えないか不思議なくらいです。この創業融資を得るために手数料をとって申請書を書くサービスがあるくらいです。私は一から自分で書いて、希望の満額を融資していただきました。

次に資金繰りですが、一番大切なことはアカウンティングでもファイナンスでもなく、「生存期間を常に見ておく」ということです。つまり、契約済みのものを除いて、提案中のものがすべてロストした場合には、いつ会社の預金口座が空っぽになるのかを常に見ておくということです。エクセルのシート一枚あればシミュレーションできます。それを見ながら、「いついつまでにこのくらいのお金が入金されないといけない。そのためには、いつまでにこれくらいの請求書が発行できていないといけない。そのためにはいつまでにこれくらいの契約が締結できていないといけない」と逆算して考えるのです。
提案中に案件で「受注確率60%」などとパーセンテージで受注確度を管理している会社が多いかもしれませんが、ベンチャー企業にとっては全く意味がありません。管理すべき「ロストした場合とベストの金額で受注した場合」の両極の二点をシミュレーションするだけで十分です。それは生存期間だけが重要だからです。ベストな金額を見ておく必要性ですが、ベストであっても生存期間がどのくらいかを見ておく必要があるからです。
創業間もない企業にとってはPLによる黒字、赤字以前に口座の預金残高が一番重要なのです。その心配がなくなったら次のステップに進むべきです。

その他、大切なポイント「自分でやってみる」について

その他、創業時には様々なビジネスのためのフォーマットなどを用意する必要があります。お金を出せば、作ってもらえるものばかりですが、できるだけ自分でやってみたほうが良いと思います。自分で一度は作ることで、中身もしっかりと理解できるようになるからです。会社経営にとって無用な知識など一つもなくて、すべて知っておいたほうが良いです。見積書、契約書、請求書、給与計算、Webサイトのコンテンツ、提案書のテンプレートなども私は最初は自分で用意しました。契約書も自分で作って専門家にはレビューのみお願いしました。

今回は創業時の実務的なポイントを経験をベースにして書いてみました。次回は営業的なことや起業と独立の違いなどについて書いてみたいと思います。

連載コラム
【ベンチャー経営1】40歳からなぜ起業した?
【ベンチャー経営3】創業初期に重要な数字とは?
【ベンチャー経営4】営業経験なしの経営者がどうやって売上を?(前編)
【ベンチャー経営4】営業経験なしの経営者がどうやって売上を?(後編)
【ベンチャー経営5】新規サービスをどう作る?
【ベンチャー経営6】新規サービスをどう作る?(その2)

最後に、NCDCのサービスについて

このコラムを読んでいる方の多くは、起業に関心があるのだと思います。
NCDCでは比較的規模の大きな企業とのお取り引きが多いので、個人向けの起業支援のようなサービスはありませんが、企業内ベンチャーや新規事業開発部門で新製品やサービスの立ち上げに取り組む方のお役には立てると思います。
新サービス開発支援のコンサルティングから、UX/UIデザイン、業務システムやモバイルアプリの開発まで、一元的なサポートが可能なので、もし新規事業に取り組むためのヒントを探してこの「ベンチャー経営コラム」に関心を持っていただいた方がいれば、お気軽にご相談ください。

※この連載コラムはNCDC創業から5年目前後の2014~2016年に書かれたものです。会社の規模やサービスも徐々に変化しており2019年現在で古くなっている情報もありますが、起業やベンチャー企業で働くことに興味がある方向けに、「ベンチャー起業創業から数年目の経営者の考えたこと、やったこと」を知っていただくヒントとして、当時の記事をほぼそのまま掲載しています。

早津俊秀

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