モバイルアプリとWebアプリの比較

公開 : 2022.07.20  最終更新 : 2022.07.25

こんにちは。
NCDCのフロントエンドエンジニアとして、主にモバイルアプリの開発を担当している本田です。

本記事は、多数あるアプリ作成方法の中から最適なものを選択するためのポイントを解説していく連載記事のひとつです。
スマホで動作するアプリを作成する予定があり、どのような方法でアプリを作成するか検討中のIT企画の方及びビジネスサイドの方を主な読者と想定して書いていきます。
目的に応じた手法を考えていただくための参考になれば幸いです。

連載記事

  1. モバイルアプリとWebアプリの比較(本記事)
  2. ネイティブアプリとクロスプラットフォームアプリの違い
  3. クロスプラットフォームアプリ開発技術の比較(やや技術者向け)
  4. Webアプリの擬似モバイルアプリ化(PWA)について

スマホで動作するアプリの全体像

下図はスマホで動作するアプリの全体像です。種類が多すぎる上に、名称だけ見ても何が違うのかわからないという方は多いと思います。
本シリーズ記事では、この図の上から下へ掘り下げていくというスタイルで、最適な手法を選ぶためのポイントを説明していきます。


本記事では先ずモバイルアプリとWebアプリの違いを説明します。

モバイルアプリとWebアプリの違い

モバイルアプリとWebアプリは何が違うのか?
一言で表すと「プログラムが置かれている場所」が違います。

モバイルアプリは、ほとんどの場合App StoreやGoogle Playストアからアプリが配信されています。ユーザーはストアから自分のデバイスに実行プログラム(アプリ)をインストールして、デバイス内のプログラムを起動します。

一方、Webアプリを利用する場合はインストールを行う必要はなく、ユーザーはスマホのブラウザ(SafariやChrome)を用いてインターネット上のサーバーへアクセスして、サーバー上のプログラムを要求します。

例外はありますが、大まかな違いとしては次のように考えてください。

  • ストアからアプリをダウンロードして、ホーム画面にアプリが表示されるものがモバイルアプリ
  • そうでないものがWebアプリ

もちろん、モバイルアプリとWebアプリにはホーム画面にアプリが表示されるかどうか以外にもさまざまな違いがあるので、続いてそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。

モバイルアプリのメリット・デメリット

モバイルアプリの主なメリットとしては次のものが挙げられます。

  • カメラ・マイク等端末側の機能(ネイティブ機能)を利用できる
  • ホーム画面にアプリのアイコンが置かれる
  • オフラインでの実行が可能
  • 処理性能がWebアプリに比べて高い
  • ストア経由の課金処理などを簡単に行える

モバイルアプリの主なデメリットとしては次のものが挙げられます。

  • ストアからダウンロードする必要がある(まずインストールというステップが必要なためユーザーにとって利用のハードルが高い)
  • ストアの審査に通らないとユーザーに配信できない
  • ストアの審査に通らないと簡単にUpdateできない
  • 課金を行う場合、ストアへの手数料が発生する

Webアプリのメリット・デメリット

Webアプリの主なメリットとしては次のものが挙げられます。

  • ストアを通さずにアプリを実行できる(インストールというステップがなくユーザーにとって利用のハードルが低い)
  • ブラウザを通せばOSの種類を問わず動作する
  • PCでもスマホでも同じソースコードで動作する
  • ストアの審査がないためアプリのUpdateが容易

※PC、タブレット、スマホなどさまざまなデバイスで利用できますが、レスポンシブデザイン対応は行う必要があります

Webアプリの主なデメリットとしては次のものが挙げられます。

  • ホーム画面にアプリが置かれない(とくにホーム画面に通知を出せないことが多くのケースでデメリットとして挙げられます)
  • オフラインでの実行ができない
  • カメラ・マイク等端末側の機能(ネイティブ機能)を使用できない
  • 処理性能がモバイルアプリに比べて低い(あまり重い処理を実行すると動作したとしてもUXが悪化する)

Webアプリで操作できるネイティブ機能

先ほどWebアプリのデメリットのひとつとして「カメラ・マイク等端末側の機能(ネイティブ機能)を使用できない」ことを挙げましたが、細かく見ていくと利用できるもの・一部機能なら利用できるものもあり、一律に不可ではありません。
「他の機能はなくてもいいが、Webアプリで位置情報だけは使いたい」というようなケースは多々あると思いますので、続いてWebアプリでも利用できるネイティブ機能を解説します。

カメラ カメラはWebアプリでも写真撮影のみであれば可能です。
しかし、写真の加工や顔認証を行う場合はWebアプリでは難しいので、モバイルアプリにする必要があります。
マイク・オーディオ マイク・オーディオはWebアプリでも問題なく使用できます。
(具体例をあげると、zoomなどはWebアプリから参加して会話している方もいらっしゃると思います。)
Push通知 × Push通知にはWebアプリは基本的に対応していません。
ヘルスケア情報 Androidの場合はGoogle Fitに連携することでWebアプリでもヘルスケア情報を取得することができます。しかし、iOSではヘルスキットへアクセスすることはできません。
生体認証 × Webアプリではモバイルアプリのように生体認証を利用することはできません。
FIDOという認証規格を利用することで可能ではありますが、技術的な難易度が高いのでここでは×という扱いにしておきます)
位置情報 位置情報は、Webアプリでも問題なく利用できます。
Bluetooth × AndroidではWebアプリでも一部Bluetoothの機能が使用できますが、iOSでは完全には動作しません。また、使用できたとしてもあくまでも実験的機能なため使用は控えた方が良いです。
バックグラウンド処理 × 基本的にWebアプリはブラウザが閉じると処理を継続することができないので、バックグラウンド処理を実装するのは難しいです。
アプリ内課金 × Webアプリではストアを通した課金を行うことはできません。課金する場合はクレジットカードを登録して処理するなど独自の実装が必要となります。

注意
Webアプリでのネイティブ機能の利用可否を説明してきましたが、これらは現時点(2022年6月)の情報です。今後対応される可能性がありますし、上記で○とされている機能でもブラウザによっては対応していない場合もあります。絶対的な正解というわけではありませんのでご注意ください。

モバイルアプリかWebアプリか?選択のポイント

ここからはモバイルアプリかWebアプリかで迷われている場合の、選択のポイントをいくつか紹介したいと思います。

機能面から考える

  • オフラインで実行する必要がある
  • Webアプリで対応できないネイティブ機能を使用する必要がある
  • アプリのアイコンをホーム画面に置きたい

これらが重要な条件となる場合、モバイルアプリを選択する必要があります。

対応デバイスから考える
対応デバイスから考える場合、PCでの動作を必要としないのであれば端末のネイティブ機能を使えて処理性能も高いモバイルアプリを選択した方がいいと思います。
反対に、PCでの動作が必要な場合は、同じソースコードでスマホでもPCでも実行できるWebアプリが重要な選択肢になると思います。

ビジネス的観点から考える
次にアプリを通じて収益を上げる場合のビジネス的な観点です。ビジネスの規模に応じて変動しますが、アプリストア経由で配布するモバイルアプリの場合、課金の15%〜30%を手数料としてストアに払う必要があります。
このストアへの手数料を支払ってもビジネスが成立する場合は、ストア経由の課金処理を簡単に行えるモバイルアプリを選択するのが良いです。

主にモバイルアプリを選択すべき理由を挙げてきましたが、上記の中で1つでも「No」と答えられる場合は一度Webアプリも検討してみてください。

※実際にはもっと多様な選択のポイントや考慮すべき制約がありますが、この記事ではわかりやすく単純な例を用いた説明に留めています。

まとめ

本記事ではまずモバイルアプリかWebアプリかの選択のポイントを解説しました。
モバイルアプリを選択した場合は、次段階の検討事項を解説する記事「ネイティブアプリとクロスプラットフォームアプリの違い」も併せてご覧ください。

どの手法を採用するか正しく判断を下すためには、アプリに求める機能性、開発コスト、保守のしやすさ、技術の将来性…などさまざまな観点を持って考える必要があります。
そのため、ビジネスサイドの方とITサイドの方、両者が参加するプロジェクトチームで協議するのがお勧めです。外部ベンダーに開発を依頼する場合は実装方式の相談にも乗ってくれるようなパートナーを選定するのが良いでしょう。

NCDCは、モバイルアプリを用いたサービスの全体像を検討するところから、アプリ開発の要件定義、UX/UIデザイン、実装まで一元的にお客様をご支援することを得意としています。
目的に応じた適切な技術の選定からご相談いただけますので、モバイルアプリの開発を検討されている方はぜひお問い合わせください

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