IoTプロジェクトの進め方 検証から商用化へ

公開 : 2022.06.29  最終更新 : 2022.06.30
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こんにちはCTOの十川です。

IoTのビジネス活用事例 代表的なパターンとは?
IoTの導入時によくある課題
と2つの記事を書いてきましたが、このシリーズ最後の本記事ではIoTプロジェクトの進め方について書いていきます。特に、どのように検証を始めて、検証から商用への準備はどう進めると良いのかといった話を説明したいと思います。

NCDCはIoTを用いたプロジェクトの実績が豊富なので、経験から学んだ注意点を皆さんにお伝えできれば幸いです。

新規IoT導入はPoCからはじめよう

前の記事でIoTプロジェクトを推進していく際の最初のポイントについてこのように書きました。

最初は「この機器からこんなデータを収集したら役に立つはずだ」という発想から始まると思いますが、それが技術的に可能なのかどうか? アイデアの実現可能性が最初のポイントになります。

これについてもう少し具体的に説明します。
例えば「新しい技術を導入して、今多くの手間がかかっているこの作業を効率化しよう」というコンセプトを思いついたとします。
机上ではいくら優れた案に見えたとしても、それが正しい考えであるとは限りません。
少なくとも、下記のことは慎重に確認しながら進める必要があります。

  • 考えている仕組みが技術的に実現可能なのか
  • そのやり方で本当に今抱えている課題を解決できるのか

とくにIoTやAIなど新しい技術を使う場合、確立された技術に比べて不確定要素も多いため、PoC(Proof of Concept:コンセプト実証)から始めるのがおすすめです。
どう頑張っても今ある技術で実現できないようなアイデアを考え続けてもあまり意味はないですし、技術面では想定通り動いたとしても、もしそれが課題解決の手法として間違っているのであれば早めに方向転換しないといけません。
PoCにより、まずそれらの点を明らかにしていくのです。

IoTのPoC計画を立てるヒント

PoCは「最小の構成」で行うということが重要なポイントです。
「技術的に実現可能なのか」「その手法で問題解決できるのか」など検証テーマを絞り、その検証のみができれば良い最小の構成で実行するということです。

もちろん事業化してく最終段階では全国展開や量産が必要になったり、運用のことを考えたりする必要が出てくるプロジェクトはあると思います。だとしても、実現できるかどうかもわからない段階で全国展開を考えた準備をするのは無駄だといえます。
PoCでは将来の展開はさておき、優先的に検証すべきことのみに取り組むのです。

とはいえ、「PoCの企画段階では最小構成で考えていたが、PoCの実施に向けて関係者が増えるにつれて求められることが増えていき、コスト・時間が膨らんだ上に、結局何を検証するのか不明確になってしまった」というような問題はよく起きます。
そうした悩みを解決するための予防策をひとつご紹介します。

早めに関係者とPoCの目的を共有する

PoCの計画を企画部門と外部ベンダーだけで決めてしまい、協力してもらう現場の方やシステム部門の方はあとから関与するという進め方だと、上記のような「関係者が増えると要求も増えていく」という問題が起きがちです。

NCDCがお客様と一緒にPoCの計画を立てる場合は、早めに関係者を巻き込んでワークショップなどを行いながら「このPoCの目的は何か」「何を検証できたらOKなのか」などを話し合い、意識合わせをする時間をよくつくっていただきます。
そうした議論の場でもし追加の要望が出てきたら「最小限の検証だけなら1ヶ月で済みますが、要件を追加していくと3ヶ月かかり、コストも増えます」など判断材料になる情報を関係者にご説明して、まず最小構成でのPoCに取り組む意義をご理解いただきながら準備していきます。

AIやIoTを利用するプロジェクトでのPoCの進め方については別の記事もありますので参考してください。
成功例に学ぶ、PoCで失敗しないための2つのポイント

現場導入のトライアルをしつつ本格展開への準備を

PoCでコンセプトは間違っていないと証明できたら、その次に小さな規模で現場導入のトライアルをやってみるという進め方が良いと思います。例えば工場の一部のラインで試しに使うとか、ひとつの工事現場で試しに使うというイメージです。

先ほど、将来は全国展開や量産が必要になるようなプロジェクトでもPoCの段階でそこまで考える必要はないと書きましたが、現場レベルでのトライアルができるくらいまで進んだら、「実際に全国展開するには何が必要か」を考えはじめても良いと思います。
例えば、ハードウェアをどの程度量産する必要があるのか、管理機能としてどんなものが必要になるのか、どの程度のセキュリティレベルが求められるのか…など、さまざまな条件を具体的に検討していきます。

そうすると費用もある程度具体的に見えてくると思います。例えば「全国の工場にこの装置を導入するとコストはどのくらいか」や「全国から集めたデータをクラウドに置くとしたらクラウドの費用は毎月いくらかかりそうか」という目安がわかってきます。
そうした費用そのものの算出も必要ですし、多くの部署が関わるプロジェクトだと費用を社内のどこが負担するのかといった問題も出てくるので、関係者間の調整が必要になってくると思います。
そうした展開への準備を進めながら、現場レベルでのトライアルによって得られたユーザーのフィードバックを取り込んでいき、実用化に繋げていく流れになると思います。

IoTを用いるPoCに取り組み易い環境がある

最後に、PoCで必要になるコストについてもう少し詳しく触れておきます。最近は、ハードウェア、ソフトウェアとも利用し易いものが世に出ており、IoTプロジェクトのPoCを行いやすい環境が整ってきています。
NCDCは建設業界向けのIoTプロジェクトの経験が豊富にあるので、これを例に安価にクイックにPoCを行うために役立ちそうなものを少しご紹介します。

NCDCが関わった建設業界向けのIoTプロジェクトで代表的なものは、具体的には次のような機能を持つ施工管理システムです。

  • IoTを用いて建設機械などから施工に関するデータを取得
  • 現場でも遠隔地でもほぼリアルタイムで施工状況を確認できるようにクラウド上で可視化
  • 施工管理に欠かせない帳票作成などを自動化

このシステムは、大きく分けると「現場からデータを集める」「集めたデータを処理する」という2つの領域があります。
前者では現場で建設機械などからデータを収集してクラウドに送るハードウェア(エッジサーバ)が必要です。後者ではデータを溜めてWEBアプリなどで可視化するための環境(クラウドを利用)が必要になります。

IoTのPoCで用いられるハードウェアの例

まずハードウェアの方ですが、エッジサーバとは簡単にいうと小さなコンピュータのような装置で、この上で簡単なプログラムを動かしたりインターネットと通信したりできるものです。
コンピュータというと高額なイメージがあるかもしれませんが、PoC用のプロトタイプであれば十分に使用可能なハードウェアが1台5,000円〜1万円程度で市販されています。

最近は半導体不足で在庫が少ないという問題がありますが、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)やM5Stack(エムファイブスタック)などいくつかの製品があり、小ロットで問題なければ手に入ると思います。

ハードウェアは高機能を求めればいくらでも高いものがありますが、PoCの段階ではこういった安価に手に入るものを使ってプロトタイプを作ります。
もちろん商用展開時も同等の安価なハードウェアでいいのか、それともハードな環境で長期間使えるような耐久力のある高価な産業用ハードウェアを使わないといけないのかはあらためて検討が必要になります。

IoTのPoCで用いられるクラウドの例

クラウドの利用についても、近年小さく始めやすい環境にあります。
そもそもクラウドはほぼ初期費や固定費がなく、使った分だけの費用を払うというモデルになっているので、扱うデータの量などにより変わりますが、小規模なIoTの検証ならだいたい月額数千円〜数万円程度から利用できます。

また、AWSやAzureなどのメジャーなクラウドサービスではIoTに活用できるサービスがあらかじめ提供されています。例えば、クラウド上でソフトウェアの一括配信やエッジサーバのエラーのログ監視などができるAWS IoT Greengrassなどのサービスがあるので、こうしたものをうまく使えば自分達が一から開発する量を抑えてシステムをつくることができます。
単に環境としてクラウドを用意するのではなく、クラウドサービスをうまく使い倒して安価にクイックに検証をはじめることを意識して設計していくと良いと思います。

IoTプロジェクトのご相談はNCDCへ

NCDCはIoTやAIを利用する新規性の高いサービスの立ち上げ支援を得意としており、企画から、検証計画の策定、検証用のプロトタイプの開発、商用利用まで多くの実績があります。
IoTを用いたプロジェクトをご検討中の方はぜひご相談ください

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