モバイルアプリとWebアプリの比較

公開 : 2022.07.20  最終更新 : 2025.04.29

スマホで動作するアプリを作成する際、モバイルアプリとWebアプリのどちらを選択すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

本記事は、「多数あるアプリ作成方法の中から最適なものを選択するためのポイント」を解説していく連載記事のひとつです。スマホで動作するアプリ作成を検討中の、IT企画やビジネスサイドの方を主な読者として記載しております。

本シリーズでは、スマホで動作するアプリの全体像を示し、それぞれの特徴を掘り下げて順番に見ていきます。目的に合ったアプリ開発の手法を見つけるための参考になれば幸いです。

連載記事

  1. モバイルアプリとWebアプリの比較(本記事)
  2. ネイティブアプリとクロスプラットフォームアプリの違い
  3. クロスプラットフォームアプリ開発技術の比較(やや技術者向け)
  4. Webアプリの擬似モバイルアプリ化(PWA)について

スマホで動作するアプリの全体像

下図はスマホで動作するアプリの全体像です。
名称だけでは違いが分かりにくいスマホアプリの技術や種類について、本シリーズでは図の上から順に掘り下げて、最適な手法を選ぶためのポイントを解説していきます。

本記事ではまず、モバイルアプリとWebアプリの違いを見ていきましょう。

モバイルアプリとWebアプリの違い

モバイルアプリとWebアプリは何が違うのか?
一言で表すと「プログラムが置かれている場所」が違います。

モバイルアプリは、ほとんどの場合App StoreやGoogle Playストアからアプリが配信されています。ユーザーはストアから自分のデバイスに実行プログラム(アプリ)をインストールして、デバイス内のプログラムを起動します。

一方、Webアプリを利用する場合はインストールを行う必要はなく、ユーザーはスマホのブラウザ(SafariやChrome)を用いてインターネット上のサーバーへアクセスして、サーバー上のプログラムを要求します。

例外はありますが、大まかな違いとしては次のように考えてください。

  • ストアからアプリをインストールし、スマホ内のアプリ完結で利用できるアプリケーションがモバイルアプリ
  • ChromeやSafariといったWebブラウザを通じて利用するアプリケーションがWebアプリ

もちろん、モバイルアプリとWebアプリには他にもさまざまな違いがあるので、続いてそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。

モバイルアプリのメリット・デメリット

モバイルアプリの主なメリットとしては次のものが挙げられます。

  • カメラ・ジャイロセンサー・Bluetoothなどの端末側の機能(ネイティブ機能)を最大限利用できる
  • タッチ操作に特化したUI/UXを実現でき、直感的な操作が可能
  • プッシュ通知などの通知を送れる
  • オフラインでの実行が可能
  • 処理性能がWebアプリに比べて高い
  • ストア経由の課金処理などを簡単に行える

モバイルアプリの主なデメリットとしては次のものが挙げられます。

  • ストアからダウンロードする必要がある(まずインストールというステップが必要なためユーザーにとって利用のハードルが高い)
  • OSの種類やバージョンに依存する
  • ストアの審査に通らないとユーザーに配信・アップデートができない
  • iOSとAndroidの両方に対応する場合、それぞれのOS向けの開発が必要になる
  • 課金を行う場合、ストアへの手数料が発生する

Webアプリのメリット・デメリット

Webアプリの主なメリットとしては次のものが挙げられます。

  • ストアを通さずにアプリを実行できる(インストールというステップがなくユーザーにとって利用のハードルが低い)
  • Webブラウザ上で動作するため、OS種類による影響を受けにくい
  • Webブラウザを通じて、1つのソースコードでPCでもスマホでも利用が可能
  • ストア審査などがないためアプリのアップデートが容易
  • 開発技術の選択肢が多い
  • Webブラウザ経由なので端末のストレージ容量の節約

※PC、タブレット、スマホなどさまざまなデバイスで利用できますが、レスポンシブデザイン対応は行う必要があります

Webアプリの主なデメリットとしては次のものが挙げられます。

  • カメラ・ジャイロセンサー・Bluetoothなどの端末側の機能(ネイティブ機能)に一部制限がある
  • ホーム画面にアプリとしてアイコン表示されない
  • オフラインでの実行ができない
  • 処理性能がモバイルアプリに比べて低い(あまり重い処理を実行すると動作したとしてもUXが悪化する)
  • Webセキュリティのリスクや脆弱性の対策が必要

Webアプリで操作できるネイティブ機能

先ほどWebアプリのデメリットのひとつとして「カメラ・センサー等の端末側の機能(ネイティブ機能)を使用できない」ことを挙げましたが、細かく見ていくと利用できるもの・一部機能なら利用できるものもあり、一律に不可ではありません。
「他の機能はなくてもいいが、Webアプリで位置情報だけは使いたい」というようなケースは多々あると思いますので、続いてWebアプリでも利用できるネイティブ機能を解説します。

カメラ Webアプリでも基本的な写真撮影のみであれば可能です。
しかし、スマホのデフォルトのカメラアプリが備える高度な機能(色彩補正、シャープネス補正)などは、ブラウザ経由のカメラ起動では最大限使用することは難しいです
マイク・オーディオ WebRTCなどの技術の普及もあり、マイク・オーディオの入出力はWebアプリでも問題なく利用できます。
(zoomなどをWebブラウザから利用されている方も多いと思います。)
プッシュ通知 × 基本的には、Webアプリはプッシュ通知に対応していません。
ヘルスケア情報 AndroidではGoogle Fitと連携することでWebアプリでもヘルスケア情報を取得できる場合があります。
しかし、iOSではヘルスキットへアクセスすることはできません。
生体認証 「WebAuthn(FIDO2)」と呼ばれる技術を利用することで、Webアプリでも以前と比べると比較的容易に生体認証を実現できるようになりました。
位置情報 位置情報は、Webアプリでも問題なく利用できます。
Bluetooth × ChromeやSafariなどの主要なブラウザでは、AndroidであればWebアプリでも一部Bluetoothの機能が使用できますが、iOSでは使用できません。
(Bluetooth機能に特化したブラウザ(Bluefyなど)を介せば、iOSでも一部使用できる場合もありますが、一般的なブラウザでは使用できないと考えた方が無難です。)
バックグラウンド処理 × 基本的には、Webアプリはブラウザが閉じると処理を継続することができないため、バックグラウンド処理はできません。
アプリ内課金 × Webアプリでは、App StoreやGoogle Play Storeの決済システムを直接利用することはできません。
クレジットカードを登録して処理するなど独自の実装が必要となります。

【注意】Webアプリでのネイティブ機能の利用可否を説明してきましたが、これらは記事更新日(2025年4月)時点の情報です。今後対応される可能性がありますし、上記で○とされている機能でもブラウザによっては対応していない場合もあります。絶対的な正解というわけではありませんのでご留意ください。
プッシュ通知やバックグラウンド処理については、PWAという技術を用いるとWebアプリでも対応が可能な機能もありますが、本記事ではPWAは一旦考慮せずに「基本的にはできない」としております。PWAについての詳細はこちらの記事を参照ください。

モバイルアプリかWebアプリか?選択のポイント

ここからはモバイルアプリかWebアプリかで迷われている場合の、選択のポイントをいくつか紹介したいと思います。

機能面から考える

  • Webアプリで対応できないネイティブ機能を使用する必要がある
  • オフラインで実行する必要がある
  • ジェスチャー操作を主としたユーザー体験としたい
  • 特定のハードウェアが提供するSDK等を利用したい場合

これらが重要な条件となる場合、モバイルアプリを選択する必要があります。

対応デバイスから考える
特定の端末のネイティブ機能を最大限に活用したい、加えて、PCでの動作を特に必要としないのであれば、モバイルアプリが有力な選択肢となります。

一方、PCを含む複数のプラットフォーム(スマートフォン、タブレット、PCなど)での動作を視野に入れる場合、Webアプリは非常に重要な選択肢となります。

ビジネス的観点から考える
アプリのターゲットユーザー層と、ユーザーがアプリをどのような状況で利用するのかを考慮することは、モバイルアプリとWebアプリの選択において非常に重要です。

例えば、社内メンバーのみが使用する業務効率化アプリや、既存の特定サービス契約者が利用する付加価値アプリのように、利用者が限定されている場合はモバイルアプリの選択が有効です。
ホーム画面にアイコンを表示させたり、プッシュ通知を活用したりと、日常的なアクセスを促しやすいです。
また特定の業務で必要となるデバイス機能(例:バーコードリーダー、NFCリーダーなど)との連携も強みです。
セキュリティ面でも、不用意なアクセスも防ぎやすく、生体認証なども利用できるので情報管理に適した機能を利用しやすいでしょう。

一方で、アプリをきっかけに新規顧客を獲得したい、提供する内容についてより多くの人に認知してもらいたい、といった目的を持つ場合は、Webアプリの方が適している可能性があります。
Webアプリは、URLを知っていれば誰でも手軽にアクセスできるため、広範なユーザーにリーチしやすいという大きなメリットがあります。
検索エンジンからの流入も期待できるため、SEO対策を行うことで潜在的な顧客層への認知度向上に繋がります。また、SNSやメールなどでURLを共有することで、バイラルな拡散も期待できます。

主にモバイルアプリを選択すべき理由を挙げてきましたが、上記の中で1つでも「No」と答えられる場合は一度Webアプリも検討してみてください。

※実際にはもっと多様な選択のポイントや考慮すべき制約がありますが、この記事ではわかりやすく単純な例を用いた説明に留めています。

まとめ

本記事ではまずモバイルアプリかWebアプリかの選択のポイントを解説しました。
モバイルアプリを選択した場合は、次段階の検討事項を解説する記事「ネイティブアプリとクロスプラットフォームアプリの違い」も併せてご覧ください。

どの手法を採用するか正しく判断を下すためには、アプリに求める機能性、開発コスト、保守のしやすさ、技術の将来性…などさまざまな観点を持って考える必要があります。
そのため、ビジネスサイドの方とITサイドの方、両者が参加するプロジェクトチームで協議するのがお勧めです。外部ベンダーに開発を依頼する場合は実装方式の相談にも乗ってくれるようなパートナーを選定するのが良いでしょう。

NCDCは、モバイルアプリを用いたサービスの全体像を検討するところから、アプリ開発の要件定義、UX/UIデザイン、実装まで一元的にお客様をご支援することを得意としています。
目的に応じた適切な技術の選定からご相談いただけますので、モバイルアプリの開発を検討されている方はぜひお問い合わせください

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