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なぜ画像生成AIは業務で使いにくい?その特性と上手な活用のためのアプローチを解説

公開 : 2026.08.07

テキスト生成AIが多くの企業で業務活用されている一方で、画像生成AIの本格的な業務利用は比較的少ないのが現状です。例えば、資料を作る際に生成AIで画像を作って載せようと試みても、なかなか思い通りの画像ができずに途中で断念するようなケースが散見されます。

本コラムでは、画像生成AIの技術的な仕組みを簡単に解説した上で、画像生成AIを上手に業務に活用するためのヒントをご紹介します。

画像生成AIとは?

本コラムにおける「画像生成AI」とは、「テキストを入力することで、画像を出力するAIモデル(Text to Image)」を指すものとします。

テキストに加えて既存画像も指定して入力することも可能です(Image to Image)。

また、生成AIでは「画像を入力して分析結果などをテキストで出力する」ということもできます。これは「画像理解(Image to Text)」の領域となるため本コラムでは扱いませんが、「画像理解」の業務活用はさまざまな分野で進んでいます。
ご興味のある方はその一例を紹介した関連記事(生成AIが変えるデータ読み取り。 LLMを用いたOCRのメリットを解説)をご一読ください。

画像生成AIはどのように動いているのか?

まず、画像生成AIの利用を考えるにあたって、そのメカニズムを理解しましょう。ここでは現在主流の「潜在拡散モデル(Latent Diffusion Model)」をベースに説明します。

※本稿では、技術的な正確さより概念的な理解を優先し、抽象化して解説します。

画像を生成するために必要な3ステップ

画像生成AIは、入力されたテキストから画像を生成するまでに、主に次のプロセスをたどります。

  1. 入力テキストを意味データに変換する
    ※ 意味データとは、このコラムで用いる便宜的な名称です。コンピューターが扱いやすい数値データを指しています。
  2. 意味データをもとに画像の下書きを作成する
  3. 画像データの下書きを、画像に変換する
なぜ同じ指示をしてもモデルによって結果が大きく異なるのか?

モデルは公開されるより前に、大量のデータを用いた学習を行っています。学習時に使われた画像データや、モデルの提供元企業による調整が、出力内容に影響を与えます。
これはモデルによって同じ入力に対する出力が大きく異なる理由です。

1. 入力テキストを意味データに変換する

ユーザーが「リンゴの画像を作って」のようにテキストの指示を与えると、入力されたテキストは、意味データに変換されます。

2. 意味データをもとに画像の下書きを作成する

次に、「意味データ」を参照して画像の「下書き」が作成されます。ここでは便宜的に「下書き」と呼んでいますが、実際にピクセルデータとして描かれるのではなく、「潜在空間」という情報空間上で数値として出力されます。 

下書きは、最初は完全なノイズ(砂嵐のような状態)からスタートします。
段階的に不要なノイズを除去する作業を繰り返すと、指定された意味データ(例:リンゴ)に近い画像の特徴が浮かび上がってきます。

なぜノイズから意味ある画像を生成できるのか?

上記の方法で画像を生成する仕組みは「拡散モデル」と呼ばれ、物理学の事象からアイデアを得ています。

水の入ったコップにインクを1滴垂らすと、やがて水全体に均等に「拡散」します。

「拡散」シーンを動画撮影し、逆再生をすると、徐々に元の状態に戻ります。

拡散モデルでは、水を「鮮明な画像」、インクを「ノイズ」として考えます。
まず、鮮明な画像にノイズを加えていき、最終的にノイズだけの画像になる過程について膨大な量を学習します。同時に、テキストと画像の意味の関連付けも蓄積していきます。
これを逆変換することで、「ノイズ」から「鮮明な画像」を作り出す方法も学ぶことができます。

3. 画像データの下書きを、画像に変換する

最後に、潜在空間で作られた「下書き」を、人間が視認できる一般的な画像フォーマット(.pngや.jpgなど)のピクセルデータに変換して出力します。

以上が、潜在拡散モデルの基本的な仕組みです。

画像生成AIの業務活用の難易度が高い理由

前述の通り、テキスト生成AIと比較すると、画像生成AIの本格的な業務利用は少ない傾向にあります。画像生成の仕組みを理解すると、その理由が見えてきます。

生成後の調整難度が高い

人間による画像の作成では、画像内を部分ごとに複数のレイヤーに分けて構造化することで、ある部分の差し替えが容易となります。デザイナーが画像を扱う場合、必ずと言っていいほどレイヤー分けした画像を作成します。

しかし画像生成AIでは、ノイズから徐々に全体像を浮かび上がらせるため、出力後のレイヤー分離が難しく、これにより一部の差し替えが思い通りにいかない課題が出てきます。
このため、生成後の画像から編集を行うのは、デザイナーにとって効率の悪い方法となります。

また、画像生成AIへのテキスト入力を変更して調整を行うことも可能ですが、思い通りに調整するにはコツが必要です。
例えば、人間のイラストに対して「手のひらをもう少し開かせてください」と指示をしても、思い通りの開き具合になるとは限りません。大まかなイメージはすぐに作れても、完全に思い通りの画像にするには調整のために多くの時間がかかってしまいます。

オリジナリティの限界

画像を成果物とするタスクでは、成果物のオリジナリティが重要視される場合も少なくありません。
画像生成AIはモデルの構築時に、インターネットなどから取得した画像をもとに学習をしています。その学習内容をもとに新しい画像を生成しているため、企業のブランドを差別化するための新しい表現を出力することには、仕組み上の限界があります。

著作権侵害などの法的リスクがある

前述の通り、画像生成AIでインターネットから画像を学習している場合、著作権で保護された画像が学習対象になります。 これによって、他社の既存デザインと酷似した画像が出力される可能性があります。そのまま公開してしまうと、著作権・意匠権侵害につながる恐れがあり、慎重な取り扱いが必要です。

文字出力が苦手

画像生成AIで作った画像は、いびつなひらがなや漢字などが含まれる場合があります。モデルの性能向上により改善が進んでいる一方、思い通りの文字を画像内に入れるためには、まだ人間によるレタッチ作業が必要です。
また、文字が多く含まれるインフォグラフィックも苦手分野の一つです。

画像生成AIを業務活用するヒント

画像生成の仕組みから生まれるこうした特性を踏まえた上で、画像生成AIをビジネスで活用するためにはどのようなアプローチが有効なのでしょうか。

いくつか例を挙げてご紹介します。

アイデア出しやプロトタイピングへの利用

画像が成果物となる仕事の場合、前述のとおり微調整が困難であることがネックです。また、オリジナリティを求められる場合、AIの出力をそのまま利用することは難しくなります。
そのため、画像生成AIはアイディアを広げる目的に留めて利用することが有効です。例えば、同じテーマに対して複数の構図パターンを出したり、既存画像に対して複数のトーンを作成することができます。プロトタイピングの高速化により、意思決定を早めることが可能となります。これらの出力物をもとに最終成果物は人間が作成・調整するという手法は現在も採用されています。

また、特定の業務処理やデータ参照が必要である場合は、Webツールに画像生成AIを組み込んでカスタマイズすることも可能です。
例えば、既存の社内資料などをあらかじめ読み込んで、資料に基づいた画像を生成をしたい場合、読み込ませたいファイルが配置されているサービスとあらかじめ接続したうえで生成を行う、自社専用の画像生成ツールを作成することができます。

利用ガイドラインの策定によるリスク管理

社内で利用ガイドラインを設けることは、AI利用全般においてリスクを減らすために重要な点です。画像生成AIにおいて特に注意したいのは、著作権侵害の観点です。
例えば前の節で触れた「画像生成AIの出力を最終成果物としない」という条項を利用ガイドラインに含めることも可能であるほか、Adobe Fireflyなど学習データの安全性が担保されているモデルのみを利用可とするのも手段のひとつです。

また「画像編集のスキルがないため、AIが作った画像をそのままWebサイトや資料に使いたい」という場合、別のアプローチで著作権侵害リスクを抑えることも可能です。
社外に公開する前に「Googleレンズ」などの逆画像検索ツールを使い、既存の著作物と酷似していないかチェックすることで、意図しない権利侵害のリスクを低減できます。特定の作家名や作品名を入力しないルールも有効です。

AIが理解しやすいテキストの入力

画像生成AI出力の大部分は、入力となるテキストに依存します。このため、画像生成AIに適したテキストを理解して使いこなすことが重要です。
入力テキストをAIに最適化させていくことを「プロンプトエンジニアリング」といいます。何を、どのような構図で、どのようなタッチで出力するかを詳細に指定することで、想定通りの出力が得られる可能性が高くなります。

Geminiの公式記事でもプロンプトのコツが紹介されています。

例えば、「〜がない」という否定的な表現ではなく、「〜がある」という肯定的な表現で伝えたほうが思い通りの結果になるとあります。画像内の人物の視線を調整したいとき、「カメラを見ていない」よりも「目をそらしており、右上を見ている」と記述したほうが、画像生成AIが具体的に理解することができます。

プロンプトテンプレートを作成し社内で共有することで、出力のブレを抑えて業務に活用することができます。

まとめ

現在の画像生成AIは潜在拡散モデルをベースに画像を出力しています。生成方法の関係上、完成形の画像のみが出力されるので、その状態から微修正を行うのは困難な場合があります。
最初からアイディア出し・プロトタイピングを主目的として用いることで、スピーディな意思決定を補助できるほか、著作権を侵害した画像を公開するリスクを避けられます。

生成AIの導入はNCDCにご相談を

画像生成AIは、テキスト生成AIと比較するとやや難易度が高いものの、特性や仕組みを理解し適切なユースケースを選定することで、リスクを回避しながら業務に活用することが可能です。 

NCDCでは、こうした技術の特性を踏まえたAIの社内利用ガイドライン(ガバナンス基準)の策定といったビジネス・法務面でのアプローチから、業務システムやクリエイティブ制作フローへ画像生成AIをセキュアに組み込む技術開発まで、幅広くサポートしています。生成AIのビジネス実装・ガバナンス構築をご検討の際は、ぜひNCDCへお気軽にご相談ください

この記事を書いた人

木村 優里
NCDCのエンジニア/UX/UIデザイナー。フロントエンドをメインとするフルスタックエンジニアとして、設計・開発に従事。デザイナーとして業務システムのUX/UIデザインも手掛けるほか、PMやリードエンジニアとしてのチームマネジメント実績も有するなど、領域を横断して活躍している。

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