XX
コラム 一覧に戻る
ホームchevron_rightコラムchevron_right資料公開|AI活用を「個人の業務効率化」ではなく「組織の業務変革」につなげるテーマの見つけ方
DX戦略・ITコンサル
AI・生成AI・IoT・先端技術

資料公開|AI活用を「個人の業務効率化」ではなく「組織の業務変革」につなげるテーマの見つけ方

公開 : 2026.08.25
最終更新 : 2026.09.15

2026年8月25日にオンラインセミナー「AI活用を『個人の業務効率化』で終わらせない!『組織の業務変革』につながるAI活用テーマの見つけ方ーNCDCが実践するAIワークショップのノウハウも公開ー」を開催いたしました。この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントを解説しています。

動画で見る

はじめに

「全社でAIツールを導入したものの成果が見えない」「研修を行っても現場で活用が広がらない」——。AI推進の現場では、こうした悩みが絶えません。 実際には、メール作成や議事録要約といった「個人レベルの効率化」において、すでに一定の効果を上げている企業は少なくありません。しかし、「組織全体の業務プロセスを変革するような大きな成果」には至っていないことが多くの組織で課題となっています。

今回は、NCDCがAI活用促進のためのワークショップで実践してきた知見をもとに、組織の業務変革につながるAI活用テーマの見つけ方を解説します。

AI活用が「個人の業務効率化」に留まる2つの原因

AI活用が組織の成果に結びつかない原因は、大きく2つに整理できます。

原因1 「個人」と「組織」ではゴールが異なる

個人がAIに求めるのは、手元のタスクを効率よく終わらせることです。一方、組織が求めるのは、売上・コスト・品質・スピードといった事業全体のOutcome(成果)を改善することです。

同じ「AI活用」という言葉を使っていても、個人と組織では目指すゴールが異なることがよくあります。個人の業務改善は「特定のタスクを改善する」ことが中心ですが、組織の業務改革では「プロセス全体やタスク間の繋ぎ目を変える」ことも重要です。

例えば「商品企画」というプロセスは、「市場・競合を調べる」「売りどころを決める」「企画書にまとめる」といった複数のタスクが連なって構成されています。

個人が1つのタスクをAIで効率化しても、その効果は限定的であり、プロセス間の繋ぎ目が変わらなければ、組織全体の大きな成果にはつながりません。さらに、この例で言えば、商品企画のあとには販売準備という別のプロセスが存在しており、個人のタスクを個別に改善しているだけでは、この2つのプロセス間の効率化は進みません。

必要なのは、「タスク」ではなく「プロセス」に着目したゴール設定です。

原因2 「AIでできること」の知見・手札が少ない

「AIで何かできないか?」と問われたときに個人のタスクの効率化レベルで考えが止まってしまうのは、選択肢となる知識や材料が不足しているためです。

現在のAI活用は、大きく5つの段階「プロンプトエンジニアリング・コンテキストエンジニアリング・ハーネスエンジニアリング・ループエンジニアリング・グラフエンジニアリング」に整理できます。(※「グラフエンジニアリング」は2026年7月ごろから使われ始めた言葉であり、現時点では定義などは確立していません。)

多くの現場では、上図の1か2の段階——「人がAIに渡す情報を設計する」段階——で活用が止まっています。しかし3以降では、AIが自律して複数のタスク(=プロセス)をまとめて実行することも可能になっています。

AIでできることを知るほど、「これもAIで実現できるのではないか」という気づきが増え、実際に使うことで「これもAIに任せてみよう」という感覚が身についてきます。AI活用の手札を増やし、実際に使ってみることで、「AI活用の勘所」が養われます。

「組織の業務変革」につながるAI活用テーマの見つけ方

組織の業務変革につながるAI活用テーマを見つけるアプローチには、「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つがあります。どちらも最終的には、組織のOutcome(売上・コスト・品質・スピード)の改善を目指す点で共通しています。

トップダウンで見つける — データから洞察を得る

トップダウンのアプローチでは、経営・管理部門と事業部門が連携してAIの活用テーマを探索します。具体的には、「これまで活用しきれていなかったKPIのリアルタイム把握」や、「日報などの非構造化データ(文章)の集約・分析」を起点として検討します。
従来、こうしたデータ処理は「手作業で数値を集計・グラフ化するだけ」「数字の意味は別途考える」という状態に陥りがちでした。しかしAIを活用すれば、文章データも含めた集計・分析が自動化されます。さらに複数の指標を掛け合わせることで、これまで気づけなかった新たな洞察を得られるようになります。

具体的な進め方は、次の4ステップです。

  1. いまのデータが何に答えているかを書き出す — 定例で確認しているデータやレポートに、「このデータから何を知りたいのか」「どのような事実やトレンドを把握したいのか」を書き添えます。
  2. 判断に届いていない場面を拾う — 「○○は良いのに△△が悪い」など、数字は把握できていても、一概に評価や判断ができなかった場面を挙げます。
  3. 眠っているデータを棚卸しする — 蓄積しているだけのデータや、集計していない切り口、まだ指標化できていない情報がないかを探します。
  4. 期待する洞察を言葉にする — どのような結果を得たいのか、そこから何を知りたいのかを整理します。問いの形まで言語化できれば、それがAI活用テーマになります。

新しい切り口をゼロから考える必要はありません。現在の集計方法や、まだ十分に活用できていないデータの中に、AI活用のヒントがあります。

ボトムアップで見つける — Input/Outputの繋ぎ目に着目する

ボトムアップのアプローチでは、現場とマネージャーが連携し、業務を「プロセス→タスク→Input/Output」の順に分解することからAI活用テーマを探します。

業務の多くは、「Input → 処理 → Output」という流れで構成されています。あるタスクのOutputが、次のタスクのInputになるため、AIエージェントで複数のタスクをまたいだ効率化を行うためには「AIのOutputを、次のAIのInputにする」という視点が重要になります。

Input/Outputの改善を積み重ねることで、最終的にはプロセス全体の変革につながります。個人の工夫(AIの使いどころやプロンプト)を共有し、他のメンバーも再現できる状態にしたうえで、部署・組織のプロセス標準へと拡張していくことが、ボトムアップの本質です。

どちらのアプローチにも使えるコツ —  AIに逆質問させる

トップダウン・ボトムアップのどちらにも共通して有効なテクニックが、人がAIに指示をするだけではなく、AIに逆質問させる手法です。「grill-meプロンプト」とも呼ばれます。

AIに作業計画や少し複雑な処理を依頼すると、説明不足(暗黙知や前提条件がプロンプトから欠落している)が原因で自分の意図通りの出力が得られない現象がよく起こります。これを防ぐために、AIに対して「この計画のあらゆる側面について、私たちが共通の認識に達するまで、徹底的に質問してください」と指示します。

AIからは、例えば次のような質問が返ってきます。

  • この目的を達成する上で、現状のプロセスで最もボトルネックとなっているのはどの部分ですか?
  • この方向性を進めるにあたり、既存のシステムやリソースの制約はありますか?

この対話を通じて、曖昧な言葉の定義や、形容詞の意味を明確にできます。例えば、「運用を改善したい」とは具体的に何を意味するのか、「コストが高い」とは何と比較して高いのか、といった点です。

人の頭の中にある暗黙知・前提・制約・ゴールをAIに引き出してもらいながら、それらを整理してAIに正しく伝えることで、AI活用テーマの具体化につなげられます。

出てきたAI活用テーマをOutcomeで検証する

AI活用テーマが出てきたら、次の4段階で検証します。

  • Means(手段)「AIを使う」
  • Output(モノ)「便利なツール・システム」
  • Result(結果)「工数・手間が○%減」「1日あたりの処理件数が○件増」
  • Outcome(成果):「○万円/月の人件費を削減」「売上が前月比○%増」

個人の業務効率化に留まるテーマは、Result(結果)の段階までで止まっていて、事業に直結するOutcome(成果)まで描けていないことが大半です。組織の業務改革を目指すのであれば、「そのAI活用アイデアは、組織のOutcomeにインパクトを与えられるか」まで深掘りすることが重要です。

Outcomeまで言語化できて初めて、組織の業務変革につながるAI活用テーマとして検討できるようになります。

NCDCのワークショップ事例

NCDCでは、AI活用テーマや具体的な活用方法の検討を目的としたワークショップを実施しています。ここでは、実際のワークショップで取り組んでいる3つの事例を紹介します。

事例1 AIと対話しながら改善する

AI活用では、AIに一度指示して終わりにするのではなく、対話を繰り返しながら成果物を改善していくことが重要です。

ワークショップでは、AIに逆質問(grill-me)をさせたり、生成された内容に対してフィードバックしたりしながら、成果物をブラッシュアップします。AIとの対話を繰り返すことで、AIへの質問の仕方や指示の出し方など、AI活用の勘所を身につけることにつながります。

実際のワークショップで使ったスライド

事例2 ワークショップ事例:業務を分解する

現場から改善したい業務を洗い出し、「Input(入力)」「処理」「Output(出力)」に分解して、AIを活用できる箇所を検討するワークショップも実施しています。

業務を分解することで、InputへのAI活用だけでなく、Inputから処理への橋渡しなど、さまざまな活用方法が見えてきます。付箋などを使って業務を可視化し、参加者同士で意見を出し合うことで、AI活用のアイデアを数多く創出します。

実際のワークショップで使ったスライド

事例3 Outcomeを定義する

AI活用によって最終的に何を実現したいのか、Outcomeを定義するためのワークショップも実施しています。その方法の一つが、「エレベーターピッチ」を活用した業務の目的・成果の言語化です。

例えば、客室清掃の分野でAIを活用した業務改善を考えるとします。目的・成果の言語化をすることで、この業務の目的は「客室を清掃すること」ではなく、「ゲストが快適に過ごせる環境を整えること」と捉えられます。そうすると、「AIで清掃記録のシステム入力時間を削減する」ことが成果ではなく、AIのおかけで削減できた時間を「より良い宿泊体験の提供のために使い、結果として顧客満足度の向上やリピート率の改善につなげる」ことが本来目指すべき成果として見えてきます。

このように、AI活用の施策だけでなく、その先にあるOutcomeまで言語化することで、組織の成果につながるAI活用テーマを検討します。

実際のワークショップで使ったスライド

AIによる組織の業務改革の進め方

小さく早く始めることが重要

プロセスに着目したゴール設定は重要ですが、AIの進化は非常に速いため、全体の計画を固めてから段階的に取り組んでいくウォーターフォール型の進め方では、実行する頃には前提となる情報や技術が古くなっている可能性があります。

そのため、まずは小さな計画を立てて、実行と検証のサイクルを素早く繰り返すアジャイル型のアプローチが有効です。小さなプロジェクトであれば、大規模なシステム開発やインフラ投資を伴わず、クラウドAIの利用枠と社内の検証工数のみで少額からPoC(概念実証)をスタートでき、結果に応じた方向転換が容易に可能です。また、計画や準備にかける時間を削減できた分、次の施策の検討に充てることが可能です。まずAIを実際に使い、徐々に活用範囲を広げていくことが、結果的に組織変革への近道となります。

業務を熟知したドメインエキスパートが主導する

組織の業務改革を主導するのは、AIに詳しいDX推進室や情報システム部、外部ベンダーではなく、業務を熟知している事業部門側のドメインエキスパートであることが重要です。

情シスを通じてシステム開発をITベンダーに発注するような従来の進め方では、事業部門がIT専門家に業務を「伝える」過程で認識のズレが生じ、システムが完成してから、要件の認識ズレで業務に合わないものができてしまったと気づくケースがありました。

一方で、AI活用による業務改善の場合は、業務のボトルネックや勘所を最も理解している現場の専門家が、IT専門家を挟んだ伝言ゲームのようなやりとりをせずに、自らの知見を直接AIに伝えることができます。わからないことがあれば「例えで説明して」とAIに聞き返すことも容易です。また、試して思ったような結果が出なければ、その場で指示を修正して何度も試行できるため、従来のようなシステム化と比較して完成までの待ち時間も大幅に短縮できます。

社内で進められることと、専門家に相談すべきこと

AI活用による業務改革は、すべてを外部の専門家に任せる必要はありません。テーマの洗い出しや小さな業務改善は、現場が主体となって進められます。一方で、組織全体の成果につながるテーマの絞り込みや、複数の部署にまたがる仕組みづくりなどは、専門家の支援を受けることでスムーズに進められます。

社内で進められることと、専門家と一緒に取り組むことで効果を高めやすいことを整理すると、次のようになります。

場面社内で進められること専門家と一緒にやると早いこと
テーマを見つける業務を分解してAIを活用できそうな箇所を洗い出す洗い出した候補を成果に結びつく順に絞り込む
ゴールを決めるMeans→Output→Result→Outcomeを自分たちの言葉で書く数値で語れるOutcomeまで具体化する・測り方を決める
小さく試すチャット型AI・カスタムAIエージェントで手元の業務を試す自律実行の前提づくり(ハーネス・ループの設計)・既存システムとの接続
拡げる・共有するAIの使い方を持ち寄る場をつくる・社内勉強会部署をまたぐ進め方の設計・ワークショップの運営設計

関連記事「全社員にAIを配っても業務効率化が進まないのはなぜか?」も、AI活用を組織に定着させる際の参考としてぜひご覧ください。

まとめ

今回解説した内容を整理します。

  • AI活用が個人の業務効率化に留まる原因は、「個人と組織のゴールの違い」と「AIでできることの知識不足」の2点にあります。
  • 組織の業務変革につながるテーマを見つけるには、トップダウンとボトムアップの2つのアプローチが有効です。
  • 見つかったテーマは、Outcomeまで深掘りして検証します。
  • AI活用はアジャイル型で小さく早く進めることが重要です。

AI活用のテーマ検討や、活用方法の相談はNCDCへ

NCDCでは、組織全体の効率化に役立つAI活用テーマをワークショップの企画・設計・ファシリテーションを多数手がけてきました。 「1Day実践体験」から、一定の期間で業務改善ロードマップを描く「8Daysプログラム」まで、業種・職種を問わず幅広く支援した実績があります。

詳細は「生成AI活用ワークショップ」のサービスページをご覧ください。

主なワークショップメニューは以下のとおりです。

ワークショップ名対象者概要
生成AI Kick Starterワークショップ生成AIをあまり使ったことがない方2時間。生成AIを使いながら進める体験型。最終的にNCDCがレポートを作成。
AIエージェント Discovery Workshop生成AIは使っているが、AIエージェントを業務で深く活用するイメージが湧いていない方2時間。AIエージェントの適用方法と効果についてのDiscussion & Ideation。
カスタムAI業務改善ハンズオンGPTsやGemsなどを自分たちで開発して業務改善を行いたい方1〜2時間/週を8週間。コワーク・レビュー・相談会を実施し、参加者自身でAIツールを開発。
AI活用業務改善+ロードマップ策定生成AIをあまり使ったことがなく、中長期的なロードマップまで描いてほしい方2時間/週を8週間。AIの基礎的な使い方と事例紹介、業務課題の洗い出しとAI活用方法のIdeation、ロードマップ策定。
Claude活用ワークショップClaudeの各機能を使いこなして業務改善したい方3時間。Claudeと対話しながら業務課題の棚卸しと活用案のIdeation+実践。

課題・ゴール・習熟レベルに合わせてワークショップを設計・伴走します。AI活用テーマの検討や具体的な活用方法について、まずはお気軽にご相談ください。

本記事の監修・セミナー講師

大沼 翔利
NCDCのITコンサルタント。Scrum Inc.認定スクラムマスター。システム運用やプロジェクトマネジメントの経験とデザインの知識を活かして、UX/UIデザインを重視したシステム開発や、デザインシステム構築プロジェクトを中心にコンサルタントとして活躍中。

Contactお問い合わせ

本サービスの詳細についてご興味のある方は、下記よりご連絡ください。

Contactお問い合わせ

お見積もり・案件のご相談はこちら

Download資料ダウンロード

各サービス概要・お役立ち資料はこちら