事例紹介

事例紹介
既存事業の常識に囚われない新規サービスへの挑戦「スマート農園 ベジホーム!」
カゴメ株式会社様

野菜ジュースなどの飲料やトマトケチャップなどの調味料に代表される食品製造販売と、トマトやベビーリーフといった生野菜の生産販売も展開するカゴメ株式会社。
グループ内で情報システムなど管轄するカゴメアクシス株式会社で、新規サービス「ベジホーム!」を立ち上げた村田様・喜多様にお話を伺いました。

新規サービス企画
お客さまのニーズ
新規デジタルサービスの企画からPoC支援、商用のモバイルアプリ開発まで、多面的なサポートができるパートナーを求めていた。
NCDCの役割
事業アイデアのブラッシュアップから技術的な実現可否の検証、UX/UIデザイン、モバイルアプリ開発まで幅広くサポート。

「守りのDX」から「攻めのDX」へ

── お二人が所属するカゴメアクシス株式会社の業務改革推進部 事業DXグループはどのような役割を担う部署ですか。
── お二人が所属するカゴメアクシス株式会社の業務改革推進部 事業DXグループはどのような役割を担う部署ですか。

村田氏 ── カゴメアクシス株式会社はカゴメグループ全体のバックオフィス業務を管轄しています。
その中で、業務改革推進部はもともと業務基盤の構築や更新などいわゆる「守りのDX」を担っていました。しかし、カゴメの業績が近年は横這いで推移しているような状況が続いて成長への危機感を持ったことや、新しい挑戦の土台となる基盤整備ができてきたという背景から、狙いが「攻めのDX」へシフトし始めており、デジタル事業にチャレンジする事業DXグループがつくられました。

喜多氏 ── 事業DXグループは2020年にできたばかりなので、まずは事業のタネを探すところからスピーディに事業化するところまで、新しいやり方で実践してみること自体がひとつの目標だと考えています。
NCDCさんと一緒に作ったスマート農園「ベジホーム!」もその取り組みの一つです。

── 事業DXグループはDX戦略の要のような位置づけになるのでしょうか?
── 事業DXグループはDX戦略の要のような位置づけになるのでしょうか?

喜多氏 ── 組織面ではトップ直轄のデジタル化推進会議を新しく設立して、経営層と直接事業化の相談をできるなどスピーディなコミュニケーションの流れをつくっていただいています。
そういった意味ではカゴメ全体のDXに大きな責任を持つ部署だと思います。

村田氏 ── 実験的に新規事業を立ち上げるためのフレームワークはもともとカゴメ社内にもあったのですが、デジタルをメインに据えて従来よりも素早く事業化するための改革として事業DXグループがつくられ、会議体や意思決定の流れも構築していきました。
カゴメ全体は大きな組織ですが、現在はDXという文脈で動いているものには私たちも何らかのかたちで関わっていて、経営層にアドバイスをもらいながら進めています。

スマホひとつでトマトを育てるスマート農園「ベジホーム!」

── ベジホームという企画はどのような経緯で始まったのですか?

村田氏 ── 事業DXグループができる前に全社員からDXのアイデアを募ったのですが、その中の一つにベジホームにつながるタネがありました。
そのアイデアをブラッシュアップして現在のサービスがつくられました。

── DXのアイデアが集まった頃からNCDCも参画させていただいたと思いますが、きっかけはAWS(Amazon Web Services)様のご紹介だったのですよね?

村田氏 ── 最初にNCDCさんに相談したのはAWSのサービスを活用していたデータ分析のプロジェクトの方だったと聞いています。「AWSに詳しくデータ分析もできるパートナー」としてご紹介いただいたのですが、データ分析の会議内で社内公募したDXのタネについても議論する機会があり、その繋がりからベジホームの方も手伝ってもらうことになりました。

喜多氏 ── ちょうど新型コロナウィルスの影響が出始めて遠隔地にある農園への訪問が難しくなった頃だったので、最初のアイデアは、ウェブカメラなどを用いて遠隔地の農園をリモート視察できないかというものでした。

── NCDCからも、そのアイデアをもとに「一般ユーザーが遠隔地から栽培体験できるような仕組みにしてはどうか」とご提案したのですよね。

喜多氏 ── NCDCさんからの提案と同じようなことをカゴメ側では福岡県北九州市にある響灘菜園の猪狩社長が考えていたので、響灘菜園と一緒に企画を進めることになりました。
NCDCの皆さんにも現地視察に同行していただき、どんなかたちならユーザーに喜んでもらえるのか、具体的にどんな技術を用いるのかなど一緒に議論しましたね。

「ベジホーム!」とは?

響灘菜園で栽培している市場に滅多に出回らない高級トマト「ぷるりん」を、自分好みにカスタマイズした栽培方法(水/実/葉の量)で自分だけのオリジナルトマトとして育てられる“スマート農園”サービス。

── 社内の承認はすぐに得られましたか。
── 社内の承認はすぐに得られましたか。

喜多氏 ── 社内では響灘菜園の応援がありましたし、市場のニーズに目を向けると、都内の人が少し離れた場所で野菜の栽培などを楽しむ貸し農園サービスが流行っているという背景があり、リモート栽培という企画の理解は得られやすかったのかなと思います。

村田氏 ── 農業は栽培期間と収穫期間があって毎月安定した収入が得られるモデルではないのですが、ベジホームはサブスクリプションモデルを採用することで農業の収入が不安定という課題の解消に挑戦するという面もあります。
そうした意義も評価していただいてスピーディな事業化に至ったのかなと思います。

── 「攻めのDX」へのシフトという話もありましたが、サブスク型のデジタルサービスは他にも提供しているのですか?
── 「攻めのDX」へのシフトという話もありましたが、サブスク型のデジタルサービスは他にも提供しているのですか?

村田氏 ── デジタルサービスとしては、栽培記録を管理しつつアドバイスも得られる「トマサポ!」というアプリが先にローンチされていますが、収益を生むサービスではありませんでした。
カゴメが取り組むデジタルメインの新サービスで、収益化を目的とした事業はベジホームが初めてです。

喜多氏 ── 失敗を許容する文化も大切にしており、たくさんの事業のタネが並行して走っていますが、その中でもベジホームは事業化まで進んだ先行例の一つなので、社内で一定の評価を得られていると感じます。
事業DXグループが主体となって初めて事業化まで進めたプロジェクトだったので、社長と直接話せるレポートラインなどは個人的にすごく新鮮で、カゴメの風通しの良い文化を感じられました。とても貴重な経験をさせてもらっていると感じます。

── サービスローンチから今までの状況はいかがですか?

喜多氏 ── スモールスタートを目指したので大々的にプロモーションはしていないですが、店頭イベントなどで「ぷるりん」を試食していただきながら「こういうトマトの栽培がスマホでできるのですよ」とご紹介すると、お客様の反応はとても良いです。
まだ事業の規模は小さいですが良いスタートが切れた印象です。

村田氏 ── サービス開始の時点では響灘菜園の40程度のスラブ(トマトの苗を植える培地)しか確保していないので、カゴメの新規ビジネスとしてしっかり広告していくのはまだ難しい状況です。
今後はベジホーム用のスラブをより多く確保するのと同時に、どうやってお客様を集めるのかスケールの仕方も考えていかなければならないですね。
予算の問題で当初削った機能もいろいろあるので、この事業が好調で追加開発できるようになったら、またNCDCさんにと一緒にやっていきたいなと思っています。

スモールスタートに適した容易なデプロイや拡張性を考慮してNCDCから提案した「ベジホーム!」のアーキテクチャ

ただの御用聞きではない、共創者のスタンスが良かった

── NCDCと一緒にプロジェクトを進めてみた感想はいかがですか?
── NCDCと一緒にプロジェクトを進めてみた感想はいかがですか?

喜多氏 ── NCDCさんはとても積極的に意見を出してくださって「カゴメのお客様のために何がいいのか」を寄り添って考えていただいけるパートナーだなと感じました。発注者とベンダーという関係ではなく、身内のような感覚でなんでも相談しやすかったです。
私自身はモバイルアプリの開発に関わった経験がそう多いわけではないですが、「言われた通りに作ります」という姿勢のベンダーさんと比べて、NCDCさんはプロジェクトへの参加姿勢が少し違うなという印象です。

村田氏 ── 私も、NCDCさんは共創者のスタンスで来てくれることがよかった点だと思います。
御用聞きでも私たちの考え通りのものはできるかもしれませんが、その範疇を超えられないという問題があります。NCDCさんは一緒に考えて積極的に提案してくれるので、私たちのアイデアがどんどん良い方に膨らんでいきました。
自分達にはない考えや見えない景色を共有してくれる姿勢がとてもありがたかったです。

── 印象に残っていることは何かありますか?
── 印象に残っていることは何かありますか?

村田氏 ── プロジェクトの進め方はITの専門家でない私たちにとてもわかりやすいものだったと思います。とくに初期からInVisionをつかって「絵」を見ながら機能面とUI面の議論(要件定義)をしてもらえたのが好評です。この手法なら認識の齟齬があまり生じないと思いました。
他のプロジェクトでは最初は文字情報だけで要件を整理していき、「絵」になるのはかなり後なので、どうしても人によってイメージのずれが生じがちです。
アプリのUIはこのサービスにとってとても大切な要素なので、最初からUIの認識を合わせながら進められたのは有効だし、効率的でもあると思いました。
実は最近他のベンダーさんとのプロジェクトでもNCDCさんの進め方を参考にしていて、私にとっての指針みたいになっています。

喜多氏 ── ベジホームのデザインもNCDCさんに方向性から提案してもらいましたが、最初から当社との間でギャップがなかったですね。私たちのイメージと提案していただいたビジュアルがピッタリはまった感じがしました。
現地視察の段階からずっと寄り添っていただいたプロセスがあったからこそ、デザインのコミュニケーションもまったく不安がなく進められたのかなと思います。こうしたサービス開発においてデザインは後で考える一部品などではなくて、一連の流れと共にあるべきものなのだなと感じました。

村田氏 ── NCDCさんは企画、デザイン、開発が一体になっていて、サービスやアプリのイメージをビジュアルで示してもらえたので、社内の理解も得やすかったですね。
今までにないサービスの場合、何をやりたいのかを経営層にイメージしてもらえないと事業化の話は始まりません。短時間で行うトップへの報告で何が有効かというと、やはりビジュアルなんですよね。

喜多氏 ── 早めに形を作ってイメージを擦り合わせた上でどんどんアップデートしていくアジャイル的な進め方をさせてもらったのがすごくよかったと思います。社内でレポートラインを通すという意味でも、この進め方はすごく助かりました。

業界の常識に囚われず思考の鍵を開くパートナーとして期待

── カゴメのDXを推進していく上での今後の目標や、解決したい課題があれば教えてください。
── カゴメのDXを推進していく上での今後の目標や、解決したい課題があれば教えてください。

村田氏 ── デジタル化推進会議で話したらすぐに経営会議で決裁を取るという事業DXグループの企画の進め方は、ある意味特別扱いでした。
しかし、DX推進という目的はあれども、収益化を目指してサービスを立ち上げるのなら、それは他の新規事業と同じように評価が必要であり、レポートラインを再検討すべきではないかという議論も出ています。
ベジホームが世に出たことで、社内も変革期に入ったかなという感じですね。

喜多氏 ── 事業DXグループに対する社内の意識は、以前は自分とは無関係な部署という捉え方が多かったように思いますが、最近は良くも悪くも反応が集まってくるようになりました。
社内のDXへの関心を一層高めていくために、今がとても大切な時期なのかなと考えています。

── 情報を集約してカゴメのDXを社内外にわかりやすく発信するような役割も期待されているのですか?

喜多氏 ── 社内にDXの情報発信をしていくことは私たちの仕事のひとつです。また、社外に対しても情報発信することがDX銘柄の取得などにつながると考えられるので、積極的にメディアへの発表も行っていきます。

村田氏 ── 社内の関心という点では、デジタル化推進会議でも以前より多様な意見が増えてきています。関与する人が増えると判断のスピードという面で少し心配は出てきますが、カゴメのDXを本気で考える人が増えてきた証なので良い傾向だと捉えています。

── そのような状況も踏まえて、NCDCに今後期待することがあれば教えてください。
── そのような状況も踏まえて、NCDCに今後期待することがあれば教えてください。

村田氏 ── 業界を問わずDX担当部門の方に共通の悩みかなと思うのですが、自分たちだけではアイデアが枯渇してくるという課題はありますね。多様なデジタルの新技術がありますが、それが新しいビジネスのタネになり得るのか、実用的なのかを専門知識なしで判断するのは難しいです。
NCDCさんのような多くの企業と最前線の取り組みをしているパートナーには、私たちの思考の鍵を開けてくれるようなアドバイスを期待しています。

喜多氏 ── 大切なのはPX(People Transformation:人の変革)だとよく上司が言っています。DXを考える中で私自身は学びが多かったので、ベジホームを作った今回の経験を今後のさまざまな取り組みに活かして、会社全体の成長に貢献していきたいと思っています。
また、カゴメが新しい取り組みを続けることで、食品業界に新たな気づきを与えるような役割を果たせたらうれしいですね。

村田氏 ── 食品業界は基本的にモノ売りのビジネスなので、コト売りのアイデアを持って、体験や情報を新しい収益の柱にできるようになると、DXの本質に近づくのかなと思います。
今回、モバイルアプリで一般のユーザーと弊社の農園をつなげるサブスク型のサービスという新たなビジネスモデルを創出しましたが、これからも新しい価値をNCDCさんと一緒に考えていけたらうれしいです。

村田 智啓 氏
村田 智啓 氏
カゴメアクシス株式会社 業務改革推進部 事業DXグループ
喜多 真紀子 氏
喜多 真紀子 氏
カゴメアクシス株式会社 業務改革推進部 事業DXグループ
関連サイト

カゴメ株式会社

ページトップへ

お問い合わせ

NCDCのサービスやセミナー依頼などのお問い合わせは
下記のお電話 また、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

050-3852-6483