
世界に先駆けて独自の人数カウントシステムを開発して以来、人数カウントと人流解析における研究開発から施工・保守までトータルにサポートする国内唯一の企業として業界のトップを走り続ける技研トラステム。
延べ10万カ所を超える導入実績を誇る同社は、現在、既存システムのクラウド化に注力しています。ユーザーの利便性向上を目指し、クラウドサービスのSSO(シングルサインオン)をサーバーレス環境へ移行する検証を実施した本プロジェクト。その背景と検証内容について、開発部の吉岡様にお話を伺いました。

吉岡氏 ── 弊社は、自社開発の人数カウントセンサーを使った計測を行っています。百貨店をはじめとした小売店や、最近だとイベント会場やテーマパーク、動物園のような施設にも弊社の人数カウントシステムを導入いただいています。
吉岡氏 ── センサーが記録したデータは元の状態のままだと活用が難しいので、我々の部署ではお客さまが活用可能な形でデータを表示するためのウェブアプリを開発しています。私はその中でも、設計・開発・保守まで含めてクラウドまわり全般を担当しています。
吉岡氏 ── 十年ほど前は、お客さまの社内LANに弊社のデバイスセンサーとパソコンを設置して、完全にローカルネットワーク上で解決するということをやっていました。ですが、これには結構なお金がかかってしまうという問題がありました。例えば、小売店さん一店舗だけで実施するには大げさすぎて小回りがきかないんですよね。それに、今は社内システムのクラウド化を進めている百貨店さんも増えています。こうした経験やお客さまの実態を踏まえて、クラウド化を進めていくというビジョンがあります。
吉岡氏 ── 弊社のメインとなっているアプリは、実はEC2のような仮想サーバーやコンテナなどサーバーありきの運用になっています。これは、先ほどお話したように、もともとお客さまのローカルネットワーク上デバイスやパソコンを設置しオンプレミスで運用していたものを、そのままクラウドに移行したためです。プライバシー保護やセキュリティのため、お客さまごとにサーバーを分けるなどして運用していますが、費用対効果的にもサーバーレス化を進める必要があると社内で合意が取れていました。ですが、サーバーレス化を進めるには問題がありました。
これまで提供してきたサービスをやめて新しいサービスとして作れば話は簡単なのですが、オンプレミスで運用していたものがベースにある、今あるサービスの延長として進めていく必要があったからです。そこで、サーバレスによる新しいクラウド型人数カウントサービスにおけるシングルサインオンのPoCを実施することにしました。

吉岡氏 ── AWSの新しいシステムやサービスにキャッチアップしていくうえで頼りになるパートナーを探していて、AWS Summitでは何社かお話をさせていただきました。いろいろなお話を伺ったのですが、弊社が採用しているKeycloakについて、唯一「こういうシステムなので、こういうことができますよ」と答えていただけたのがNCDCさんでした。
吉岡氏 ── お客さまにとっての一番の変更点は、何よりサーバーの管理をしなくてよくなったという点だと思います。オンプレミスだと、例えばパソコンが壊れてしまった場合のリカバリーが、弊社の社員が現地に行って直すか、お客さま側の情報システム担当の方が直すかということになってしまって、維持管理の負担が大きかったので。その後、一歩進んで弊社のサーバーパソコンを設置するということもありましたが、万が一のことがあった場合にオンライン上ですぐ対応できるというのはお客さまにとっても弊社にとっても大きいですね。
吉岡氏 ── 私自身サーバーレス化について経験はあったのですが、完全に新しいシステムを構築するのではなく、既存のシステムがあり、そこに新たなシステムを連携させるというのが大きな課題でした。特に、Keycloakというオープンソースのアイデンティティプロバイダー(IdP)を既存のシステムでは採用しているのですが、サーバレスアプリに対して具体的にどう設計し、実装していくのかが問題でした。お客さまごとのサーバーに振り分けるのにはすごく便利なのですが、今回のようにサーバーレスで、ひとつの大きな塊として運用するとなるとどうしても難しいところが出てきてしまって。

吉岡氏 ── 技術者目線でコードを見て実際に動かしてみたりもしていたのですが、教えていただいたことの中には知らなかったことも多かったです。例えば、Keycloakの外部ライブラリがあること、そしてその一つであるWebhookを使えば、レルム作成直後にAWSシステムと連携できることなどですね。NCDCさんとの対話の中で課題がクリアになったのは非常に大きかったです。
それに、既存システムがある上に、「こんなことがしたい」という要件定義が曖昧な段階で依頼をしてしまったにも関わらず、こちらが期待した通りの動きを実現してもらったのはありがたかったですね。

吉岡氏 ── キックオフから最後まで、定例ミーティングの際に毎回きっちりとした資料をいただけたのが印象的でした。コードは書くけど資料は作らないよ、というパートナーさんも多い中、いつでも参照可能な資料としてもらえると、我々も理解しながら進められたのでよかったです。
吉岡氏 ── 今回のプロジェクトはPoCだったのでまだ商品化はできていませんが、これを実際に商品化するために、今月から次のプロジェクトが始まったところです。このプロジェクトでは、今回のPoCで得た知見をもとに、既存のシステムの見直しとマイクロサービス化を進めていきます。実際にユーザーが使うもののベースにもなるので、トレンドを押さえたUIもNCDCさんに提案してもらえたらと思っています。

吉岡氏 ── 人数カウントは、1分毎のレコードのような形になっていて、年間で通すとかなりのデータ量になります。それを昨年と比較、さらに一昨年と比較とやっていくと膨大なデータ量になっていきます。ビッグデータの処理やクエリの高速化など、お客さまの満足度を上げるために必須のサーバーレス化を進めて、よりお客さまに喜ばれるシステムを作っていきたいです。
業界全体の課題としては、小売業界の課題感に寄り添ったサービスを作っていくことが重要だと思っています。皆さんもご存知の通り、大手ネット通販の台頭や、老舗百貨店の閉店、百貨店やオフィス、美術館やホテルといった様々な施設が集まる複合施設の登場など、小売り異業界を取り巻く環境は目まぐるしく変わっています。変化していくビジネスモデルに基づいた設計をどうしていくのかは重要な課題です。繰り返しになりますが、こうした課題にスピード感を持って対応していくためにも、やはりサーバーレス化を進めていく必要があると思います。
吉岡氏 ── 今まさに次のプロジェクトでご協力いただいているところですが、シングルサインオンの考え方はどんどん進んでいるので、我々と同じようにNCDCさんの力を借りないと前に進めないという会社さんはあるのかなと思っています。特にKeycloakに関しては、NCDCさんのようにノウハウがある会社はまだまだ少ないですが、今後使ってみたいと考える方は増えていくと思います。


