開発の内製化指向がもたらすメリットとは?

公開 : 2014.07.08  最終更新 : 2019.09.05

私は20年近く様々なお客様のシステム構築に関わってきました。その経験から、情報システム部門や情報子会社に期待されているミッションを達成するためには「内製化」への舵取りが必須ではないかと思っています。今日は「内製化」のメリットについて書きたいと思います。

内製化のメリット1 「スピード」

スピード開発が一番のメリットでしょう。外部に発注するためには仕様を明確に定義する必要がありますし、RFPを記載し、何社とも話をしてベンダーを選定する必要があります。価格の妥当性や技術力やプロジェクト管理手法、担当してくれる人との相性などを考慮する必要があります。こんなことを考えている間に、プロジェクトが始まるまでに相当の時間がかかってしまいます。ここまで短くても三ヶ月はかかっているのが一般的ではないでしょうか?
また、プロジェクトが始まってからも時間がかかります。外部に委託した場合、モノを作っている工数は全体の工数の半分くらいと言われています。つまり半分は管理や調整のための工数になります。10人のエンジニアが稼働するプロジェクトを委託したとして、実際にモノを作ってるのは5名程度なのです。そうなると多くの人が頑張ってくれているにも関わらず、モノができるまでに思ったより時間がかかるということになります。
これが内製化になると、必要最低限の調整と管理だけで進めることができるようになります。私が以前IT部門の責任者をしていた企業ではできるだけ内製化をしていました。従業員が500名程度の企業でしたが、設計BOM系のシステムなどでも一人の優秀なエンジニアが三ヶ月くらいで一人で作っていました。もちろん設計レビューはソースコードレビューは組織としてやっていましたが。
つまり、内製化によって、管理、調整、ドキュメンテーションが最小限にでき、システム完成までの時間が短縮されます。

内製化のメリット2 「技術力」

仕様の調整だけを行ない、作るところを外部に委託していると技術の空洞化が起きてしまいます。システムはモノ作りであり、作りが大変重要です。作りの部分のスキルが空洞化してしまうと、大変な事業リスクを背負うことになります。例えば、大きなトラブルが起きた時、委託先の企業で当時システムを作った担当者が転職してしまっているとどうなるでしょう。立派な設計書があるだけでは、トラブルを解決することは難しいでしょう。そんな時、システムの作りまで理解している社員の力が必要になります。
内製化によってシステムを構築することが最も技術スキルを身につけ、維持し続ける最適な方法でしょう。
最近のITでは要素技術の選択肢が非常に多様化しており、常に技術動向を把握、活用することで、できることもコストも大きく変わってきます。それらを把握しておくためにも内製化によって様々な技術スキルを社内に蓄積することのメリットは大きです。

内製化のメリット3 「コスト」

コストは一概にメリットとはいえませんが、しっかりと比較検討が必要です。
社員として抱えるということは、人件費としての固定費がかかることと、雇用の自由な調整がしにくくなります。例えば、この一年は人が20人必要だが、三年後には10人で良いので、10人は異動や解雇といったことが簡単にはやりにくい企業が多いでしょう。
しかし、外部のエンジニア一人あたり月100万などを支払っていくことのコストもばかりになりません。また、スピードのところで述べたように、作る部分の倍くらいの費用を払うことになります。外部へのSI費用が億単位のプロジェクトも少なくありませんが、それが高過ぎると感じませんか?内製化して社員の人件費はかかるとしても、外部への費用の半分以下でまかなえることが多いと思いますし、技術の蓄積とスピードを手に入れることができるのです。
外部に見積依頼を行うと20〜30億円かかるといわれているプロジェクトの計画部分のコンサルティングを行ったことがありますが、そのときは「少しずつ内製化していけば、5億円もあれば十分できる」というのが我々の出した結論でした。

内製化は難しいとお考えの方へ

現在は外部委託がメインになっているし、技術力もない状態で内製化へシフトするのは難しいと考えている方も多いと思います。もちろんいきなりすべてを内製化することは困難ですが、たとえば、将来の内製化を目指して技術移管を前提とした外部パートナーとの共同開発から取り組んでいくという方法もあります。
NCDCでも、技術コンサルティングとしてプロジェクトに参加してほしいというご依頼をいただくことが多いですが、その際に、将来的な技術移管は可能かというご相談もよく受けます。
NCDCではAIやIoT、クラウドサービスの活用といった比較的新しく難易度の高い技術を扱うことが多いため先端テクノロジー導入支援という名称でサービス化していますが、他社でも技術移管を前提とした開発支援サービスを提供されているところはあると思います。もし信頼している委託先があれば、相談してみてはいかがでしょうか。

早津俊秀

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