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本記事では、前々回の記事、前回の記事に引き続き、新規事業に関してよくある3つの誤解と、誤解によって失敗しないための考え方をご紹介します。
新規事業に関するよくある誤解
- 誤解1:業界や市場をしっかり分析していくことで事業アイデアが生まれる
- 誤解2:まずはプロトタイプやMVPを作って、検証・改善していきながら大きなサービスに育てる
- 誤解3:本業の失速を補うような大きな事業の柱を作らないといけない
最終回となる今回は、新規事業立案に関するよくある誤解についての解説の最後、誤解3について説明していきたいと思います。
新規事業の達成目標をどう設定するか?
日本の誰もが知っているような大企業が新規事業を企画する際、「現在のメインの事業が失速していくことは見えている。だからそれに取って代わる事業を生み出さないといけないのだ」という意気込みで取り組まれている場合があります。
もちろん目標を高く設定してチャンレンジしていくことは素晴らしいことですが、その目標を達成することは非常に難しいです。かつ企画・実行した新規事業が本業に取って代わるほど成長したのかは10年や20年経ってみないとわかりません。したがって、新規事業に取り組む際の意気込みとしては良いのですが、具体的な達成目標とするのは間違っています。
達成したか、していないか認識できないものを達成目標とすることは相応しくありません。最終目標(ビジョンに近い概念的なもの)としては良いと思いますが、これからの3年、5年で、新規事業が現在のメイン事業に取って代わるような事は、そう簡単には起こり得ません。
3年、5年で達成するための具体的な目標の設定が必要です。そしてプロジェクトメンバーもその5年先くらいの目標を常に意識して行動することが大切です。5年先の目標が達成できたとすると、そのずっと先には本業を超える事業への成長が待っているかもしれません。
そしてもう一つ、新規事業を企画する際に大切なことはなにか?
規模などを目標にするよりも、
「何らかの顧客ニーズを満たすもの、何らかの社会的課題を解決するものなのか?それを自分たちがやる意味や強みはあるのか?」
というシンプルな問いに答えられる事業を徹底的に考えることだと考えています。
本業の失速を補う方法
それでは短期で本業の失速を補うにはどうしたら良いのか?
このコラムを書いている2024年現在では本業に匹敵する第二の柱を得るにはM&Aの方が確実です。
例えば2026年には停滞が始まると予測される自動車メーカーにとって、全く新しい事業で現在の自動車ビジネスに取って代わるものを生み出すのは難しいでしょう。
そうすると同じ自動車メーカー同士のM&Aがまずは行われるはずです。すでにこの20年ほどで相当のM&Aが実施されてきました。次は自然に考えれば、バイクメーカー、バスなどの特殊な自動車メーカー、船舶メーカー、自転車メーカーなどか、移動体、エンジン、モーター、電池、交通といったキーワードの分野をM&Aしていくことになるでしょう。
つまり比較的短期で本業の失速を補うような大きな事業はM&Aに任せて、ITを活用した新規事業立案の目的は新しい価値を生み出す、新しい市場を作る、新しい技術のノウハウをためるといったものにするということ。ゼロから1への挑戦自体に意味をもたせるということです。ゼロから100への挑戦を最初から考えるのは難しいですから。
本業に取って代わるような大事業の育て方
もちろん、新規事業で本業に取って代わるようなビジネスが生まれないと言っているわけではありません。
先に書いたように、「何らかの顧客ニーズを満たすもの、何らかの社会的課題を解決するものなのか?それを自分たちがやる意味や強みはあるのか?」を突き詰めて、事業化していき、改善やピボットを続けていくと20年後くらいには本業に取って代わるようなビジネスになっている可能性もあるかと思います。
例えばSONYは昔はオーディオ関連の製造業でした。そこからパソコン事業を生み出し、携帯電話、ゲーム端末、ゲームソフトへと既存ビジネスとの連続性を持ちつつも、自社の強みを活かしながら新規事業を展開していきました。
途中で保険や銀行といった金融系のビジネスに進出したところは本業とは離れたビジネスであったと思います。どういった経緯で金融業に進出をしたのかはわかりませんが、「金融の新規ビジネスはじっくり育ててうまく行けば期待できる」くらいの判断だったのではないかと想像します。現在は非常に大きなビジネスに成長していますが、それまでには相当な年月がかかっていると思います。途中で断念した金融サービスなどもあったのではないでしょうか。「パソコン事業がシュリンクする可能性があるので、短期的に金融でパソコン事業をカバーしなければならない」というような考え方であったなら、現在のように成功していなかったかもしれません。
ユニクロ創業者の柳井正氏も自身の功績をまとめた著書に『一勝九敗』と名付けているように、「10回新しいことを始めれば9回は失敗する」と考えているそうです。ですからユニクロでは新規事業は撤退のルールを決めておき、大きなキズにならないように撤退して次を考えるという方針になっているようです。10年以上前でしょうか。ユニクロの店舗で野菜の販売を行うという新規サービスがあったかと思います。ビジネスモデルとしてはかけ離れているわけではありませんし、自社で野菜の生産を行っているわけではないでしょうから、リスクの低い新規サービスだったかと思いますが、早いうちに撤退したと記憶しています。キズは非常に小さかったでしょうし、そこで得た失敗からのノウハウの方が大きな成果となったかもしれません。後の新しいビジネスなどに活かされているではないでしょうか。
新規事業の方向性は、こう定める
みなさんも新規事業を企画実行する際には「ビジョンは大きく」ですが、アイデア時点では市場規模などよりも「何らかの顧客ニーズを満たすもの、何らかの社会的課題を解決するものなのか?それを自分たちがやる意味や強みはあるのか?」にフォーカスして、ゼロから1への挑戦に意味をもたせる方向で考えてみてはいかがでしょうか?
その際に、あらかじめ撤退の条件を決めておくと、より身軽にチャレンジがしやすくなるかもしれません。
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