NCDCでは新規事業・新規サービスのアイデア出しから企画、デザインやシステム開発による具現化、その後の販売・マーケティング戦略まで数多くのお客様を一元的に支援しています。
本記事では、新規事業立案のコンサルティング経験を踏まえて、新規事業に関するよくある誤解と、誤解のせいで躓かないための考え方をご紹介します。
目次
新規事業に関するよくある誤解
新規事業立案のコンサルティングをしていると、次のような声を聞くことがあります。これらは「新規事業に関するよくある誤解」だといえます。
- 誤解1:業界や市場をしっかり分析していくことで事業アイデアが生まれる
- 誤解2:まずはプロトタイプやMVPを作って、検証・改善していきながら大きなサービスに育てる
- 誤解3:本業の失速を補うような大きな事業の柱を作らないといけない
今回はこれらのよくある誤解のなかから、1つ目について解説します。
業界や市場の分析から事業アイデアが生まれるのか?
結論からいえば、業界や市場動向を分析したり、競合のサービスを分析したり、もしくはビジネスモデル・キャンバスのような事業創造のフレームワークを埋めていくなどしても、優れた事業アイデアがうまれてくるものではありません。
理由はいくつかありますが、主なものを次項で説明します。
業界や市場を分析してもよいアイデアが出にくい理由
無闇に業界や市場を分析しても本質は掴めない
一つめの理由は、新規事業における業界や市場は既存の主軸ビジネスと違う場合があり、何らかの事業アイデアを持った上で分析に取り組まないと、本来考慮すべき業界や市場動向・競合はわからないためです。
例えばテスラは自動車メーカーとして有名ですので、既存の主軸ビジネスのイメージで捉えれば分析する対象は世界の自動車市場となります。競合としてはトヨタ自動車や本田技研工業などが出てくるでしょう。
一方でテスラは蓄電池の事業も展開しています。もし用途を自動車に限らない蓄電池の事業を軸として考えるのであれば、分析すべき業界も競合も全く異なることになります。
このように同じ企業でもどの側面を見るかによって当てはまる業界が異なることはよくあるので、何のアイデアもなく、ただ自社の既存主要事業に関する業界や市場の分析から始めるのは、あまり良い方法とはいえません。
「市場の拡大=自社のチャンス」とは限らない
二つめの理由は、市場動向を分析して傾向がわかったとしても、伸びている業界だからチャンスがあるとは限らない。競合がいないから成功の可能性が高いとは限らないためです。
新規事業のコンサルティングをしていると、「そのマーケットは縮小傾向だからダメだ」というような発言をされる方がいます。ビジネススクールなどで熱心にされているマネジメント層の方々にこうした傾向が強いかもしれません。
しかし、新規事業の検討においては、市場の伸びは関係ないものと考えたほうが良いです。また「その事業にはすでに大手が参入しているからダメだ」という意見もよく耳にしますが、これも新規事業においてはあまり関係ありません。
新規事業では市場の拡大・縮小を重視すべきでない理由
なぜ市場の伸びや競合は関係ないといえるのでしょうか?
拡大傾向にあるマーケットに参入する場合は「新しい市場を開拓する難しさ」があります。一方で縮小傾向にあるマーケットに参入する場合には「既存の市場から奪う難しさ」があります。つまりどちらも困難な壁を超える必要はあるのです。どちらがその企業にとって有利であるかは一概には言えません。
拡大傾向で新規参入の多い市場よりも、ある程度確立していて競合も明確な市場の方が他社から「奪う」ことで成功をめざす戦略は立てやすいともいえるでしょう。
たとえば新規事業を次の2つの候補から選択することを考えてみてください。
- 高齢者向けサービス
- 小中学生向けのサービス
今後市場が拡大する「高齢者向けサービス」の方が絶対に正しい選択なのか?市場が縮小していく「小中学生向けのサービス」をやることは間違いなのか?という風に具体例を想定して考えるとわかりやすいかと思います。
少子化が進む中でも「小中学生向け」を中心とした学習系のサービスに新しく取り組み、成功している事例は皆さんが思いつく範囲でも見つかるのではないでしょうか。
市場が拡大傾向かどうかだけで一概に良し悪しの判断ができるものではありません。
もちろん、新規事業を将来100億円規模にするという目的を置いているのであれば、マーケットが数千億円の規模で伸びている方が実現の可能性が高いといえます。しかし、1億円くらいの事業規模でも成功と呼べるプロジェクトであれば、既存のマーケット規模が500億円でも5000億円でも目標達成できる確率に大きな違いはないのではないでしょうか。
新規事業では大手企業が競合にいてもよい理由
「大手がすでに参入しているからダメだ」という意見に関しても、新規事業においてはあまり関係ありません。すでに世の中にある多くの産業は競合企業が多数あり、大手が参入しているケースも多いでしょう。しかし、新規参入企業の入る余地がまったくない業界などありません。
例えば「銀行業」。統合を繰り返しメガバンクと言われている大手企業の寡占状態に見えます。しかし、ネット専業銀行などが新たに参入し、成功しているところもあるでしょう。
競合が多く、大手企業もいる市場は「市場として認知されている」ともいえます。この場合、新たな事業を始める際にいちいち説明をしなくて世間にその価値をわかってもらいやすいというメリットがあります。
新規事業で「銀行」を始めるとの説明を聞いて「銀行ってどんなビジネスなのですか?」という質問をする人はいないはずです。
一方で、新規事業として「SNSを活用した高齢者向けのコミュニティビジネス」を始めると説明をしたら「それって具体的にはどんなビジネスなのですか?」「利用者のメリットは何ですか?」「どうやって収益を得るのですか?」という質問が必ず出てくるでしょう。
新しい市場は競合が少ないというメリットもある一方で、世間に「市場を認知させる」ことや「どのような価値を提供できるのかを理解してもらう」ことから始めないといけないため、大きなデメリットもあるといえます。
業界や市場のことよりもまず自分たちを知る
市場の成長性や競合の有無を知っても、それだけで新規事業のアイデアは生まれない。
ではどうしていくのが良いのか?
「重視するのは市場性や競合ではなく、自分たち」です。
自社の強みを徹底的に深掘りしていくことが何より大切です。もっと具体的にいうと自社の強みというより新規事業を検討しているメンバーの強みと言い換えても良いくらいです。
例えば、私が新卒で入社したNTTは現在ホームページを見るとグループで従業員数が33万人となっています。NTTの強みは「離島を含めた日本のどこにでも通信のネットワークが敷設されていること」そして「潤沢な資本力」あたりでしょうか。
だからといってNTTが新規事業検討を行う際に「全国に張り巡らされた通信ネットワークこそ我々の強み」とはじめから軸を限定して考えてしまうと、視野が狭くなります。もちろん間違っていないので、そういった新規サービスを考えるのも良いでしょう。しかし、もし新規事業検討メンバーが「携帯などの無線系の領域に強く、かつ実業団として多くのスポーツにも参画している」という強みを持っている場合は「無線通信を活かしたスポーツ分野の新しいサービス」が考えられるかもしれません。
メンバー個々がワクワクするようなテーマを考える
NCDCではよく新規事業立案のワークショップを行っていますが、私がファシリテーションを行う際には最初の自己紹介で参加者に「趣味」なども聞くようにしています。これは単なるアイスブレイクの意味だけではなく、「新規事業推進メンバーの個人の強み」を共有するという目的も持っています。
個人の強みはつまり「趣味」「推し」などでも良いのです。個人にフォーカスするのはおかしいことではありません。反対に、個人的に全く興味がない分野の新規事業推進チームの一員になったときのことを想像してみてください。興味がなければその分野について学ぶのも大変でしょうし、面白くないと思います。
新規事業推進は個人としてもワクワクするようなテーマでないと、数々の試練を乗り越えて成功まで推進するのは難しいといえるでしょう。
NCDCが新規事業のアイデア創出を支援させていただいたプライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社様では、テーマにほとんど制約を設けずに新規事業のアイデア出しに取り組まれていました。
この事例では、世界トップクラスの車載用電池メーカーという既存事業に捉われることなく、検討メンバー個々が興味を持った領域でやってみることを許されていたため、多様な発想が可能になったといえます。
新規事業の検討テーマに制約はなく、サーキュラーエコノミーに関連するものでも、社内の困りごとから発想を得るものでも、一般の生活者向けのものでもかまいません。
私が今取り組んでいるテーマは、従来の事業であるハードウェア販売とは異なるサービスビジネスに取り組んでみたいとの考えが軸にあるのですが、サービス提供の対象者は自動車業界の方、それ以外の業界の方、そして一般消費者など幅広く候補となります。
新規事業検討という重責を任されると「業界や市場をしっかり分析してからはじめよう」という方向に意識が向く方は多いと思いますが、それよりも「自社の強み、推進メンバーの強みを最も重視する。個人レベルの興味がある業界なども有力な候補となる。」という方針で考えてみることをお勧めします。
新規事業検討のご相談はNCDCヘ
NCDCは、デジタル領域の新規事業に欠かせない要素にフォーカスし、一元的にサービスを提供しています。新規サービスのアイデア創出や評価、検証などの進め方に課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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