資料公開|エッジAI、IoTの活用事例から学ぶエッジコンピューティング

公開 : 2021.04.22  最終更新 : 2021.06.24
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2021年4月20日にオンラインセミナー「エッジAI、IoTの活用事例から学ぶエッジコンピューティング」を開催いたしました。この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントをご紹介します。

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分散型アーキテクチャとして注目を集めている「エッジコンピューティング」ですが、実際のところ「クラウドコンピューティング」とどう違うのか、またどういった場合に活用すると効果的であるのか、実例とともにご紹介します。

エッジコンピューティングとは

近年一般的に利用されるようになった「クラウドコンピューティング」は、インターネット上にあるクラウドサーバーにデータを集約しあらゆる処理をします。

それに対して、各種端末(センサーやカメラ、スマートフォンなど)の近くに分散配置されたコンピューターで、インターネットに流す前にデータを取り扱う仕組み、すなわちローカルの環境とインターネットの間にあるのが「エッジコンピューティング」です。

次に「エッジコンピューティング」を活用することのメリット・デメリットをご紹介します。

エッジコンピューティングのメリット

  • 通信コストが削減できる
    例えば、動画や画像などのデータ処理を全てクラウドで実行してしまうと通信コストがかかりますが、エッジであればある程度のデータを貯めて、後で取り出す(クラウドと通信をする)ことができるのでコスト削減につながります。
  • リアルタイム性が高い
    データの収集などを行う場合についても、ネットワークを介さずに集計できるので即時性高くデータを処理することができます。
  • 通信障害につよい
    インターネットの通信障害が起きても影響を受けることがないので、欠損することなくデータの収集が行えます。
  • レガシーな装置とクラウドを中継できる
    インターネットに接続できない古い装置からエッジ側でデータを収集して、さらにそのデータをクラウドへ送ることができます。エッジ側がレガシー装置とインターネットを中継をするようなイメージです。

エッジコンピューティングのデメリット

  • 拠点ごとにサーバーを設置する必要がある
    複数の拠点で実施したい場合、拠点数分のサーバーが必要になるため、サーバーを物理的に管理するための工数がかかるようになります。
  • 高いマシンスペックが必要なものは苦手
    例えば、AIの学習のようなハイスペックな処理を行う場合、対応できるマシンは高価になるため、各拠点に配置・管理するにはコストがかかりすぎる可能性があります。

エッジサーバーで気をつけるべきこと

エッジサーバーの利用は非常に便利ですが、実際導入するには物理的に検討しなければならないことがいくつか出てきます。

  • 物理的なセキュリティ
    サーバーを盗まれたり、壊されたりするリスクがあるため設置場所のセキュリティ管理が必要になります。
  • 電源の確保
    オフィスや工場など電源が取りやすい環境なら問題ありませんが、自動車などにエッジデバイスを設置する場合どのように電源を確保するのか検討する必要があります。
  • クラウドとの通信
    エッジを使ってデータを処理し、クラウドにデータを集約して活用をする場合、どうやって通信するのかを検討する必要があります。一般的にはSIMを活用しますが、大量の端末を利用する場合には通信量も増え、ランニングコストがかかるので要件に応じて選定する必要があります。
  • 防水・防塵・熱・炎天下への対応
    エッジデバイスを外で使う場合も想定されますので荒天(雨・炎天下)への対応が必要になることもあります。端末を保護するケースを工夫する必要がありますが、電波を妨害してしまうような素材(アルミなど)もあるので配慮が必要です。
  • デバイス認証へのセキュリティ
    エッジの活用においてはパスワードの変更管理が非常に重要です。初期パスワードのまま変更せずに使用して情報流出してしまったという事例も少なくありません。
  • ソフトウェアのバージョンアップ
    端末数が多い場合、全ての拠点へ行ってバージョンアップ作業をすることは現実的でないので、遠隔で実施できる仕組みなどの検討をする必要があります。

エッジでやるべき処理とクラウドでやるべき処理

仕組みを理解できたら、次は何をクラウドで処理して何をエッジで処理するかを考えなければなりません。エッジを活用する場合、先述のように気をつけなければならないことが多いので、基本的にはデータの集計や分析、AI学習、ビジネスロジックが関わることについてはクラウドで実施するのが良いでしょう。

一方、クラウドにアップするためのデータを集める・データを整える、その場で答えを出すようなAIの推論処理を行うなどはエッジで実施していくのが良いでしょう。また、一つのプロジェクトにおいてどちらか片方を使うのではなく、処理したい内容に応じて組み合わせることが重要です。

次に弊社が関わった事例の中からエッジがどのように活用されているのかをご紹介します。

事例1:エッジAIで車内の動画解析

自動車内をカメラで撮影し「乗車中の人がシートベルトをしているかどうか」を確認・通知してくれるアプリを開発しました。

この事例では、エッジ側でシートベルトの検知を行いました。
これは「シートベルトをしているかどうか」の判断は即時性が求められることであることと、動画をクラウドに通信すると通信にコストがかかってしまうことに起因します。
電源は車のシガーソケットから給電し、車内に設置することが前提だったため防水などはそこまで気を使わず簡易的なプラスチックのケースに格納しました。

クラウド側では「何がシートベルトであるか」の機械学習を行いました。
具体的には実際の自動車を用いて人が乗車している動画を撮影し、それぞれの画像について「これがシートベルトである」という正解を与えていく(アノテーションを付ける)ことで精度を高めました。

画像を認識させるために一万枚ほどの画像を処理しました。一部オフショアを活用したのですが膨大な量だったのでチェックだけでもかなりの工数がかかりました。
また、夜間の運転にも対応できるよう赤外線での画像にも対応できるようにするのが技術的には非常に難しい対応でした。

より詳しい内容については別の記事でもご紹介していますのでご参考にしていただけますと幸いです。
百年以上の歴史を誇る老舗ハードウェアメーカーが挑む、AIを活用した新規事業開発

事例2:エッジAIで商業施設の人の流れや人数を感知

商業施設への来場者数カウントを目的として、AIを用いた人流検知を行いました。

この事例では、リアルタイムで人数をカウントしたいことと、クラウドだと通信コストがかかるため、全てをエッジ側で行いました。

電源は、常設ではなく端末を一時的に設置して活用することを想定してモバイルバッテリーからの給電を行いました。
通信に関してはエッジサーバーに一時的にデータを貯めておいて、撤去後に回収することにしたためWebへのアクセスはできないようにしていました。ただしトラブルがあった時に対応しなければならないためWi-Fi通信で単純な制御だけはできるようにしておきました。

「人かどうかを判断するAI」については特別な学習は行わずGoogleが配布している人検知モデルを活用しました。
AIアプリを作るにあたっては、この「学習」に非常に工数(コスト)がかかるので、対象が汎用的なものであれば公開されているモデルを活用することで比較的安価に、早く作ることができます。
(一方で、先述のシートベルトのように、検知の対象が特殊な場合は既存のモデルがないので一から作る必要があります)

事例3:工事機器が持つデータをIoTで即時クラウド連携

建設機器から取得したデータを現場だけでなく、事務所などの遠隔地でもリアルタイムで確認できるよう、建設機器と連携したアプリを作りました。

具体的には以下の図のように、元々あった機器をエッジサーバーと繋いでデータを吸い上げ、その後クラウド上のシステムに格納するような仕組みになっています。
また、格納されているデータはタブレットなどの端末でも見ることができるようにしました。

データの処理はほとんどクラウドで行っているのですが、工事現場の機器はインターネットにつながっていないので、エッジコンピューターが中継機としての役割を持っている事例と言えます。
具体的にエッジでやっているのは、吸い上げたデータの整形とクラウドへの送信だけなのですが、この仕組みがあることで即時性、効率化を実現できたと言えます。

この事例では、エッジサーバー、クラウドサーバーともにAWSのサービスを利用していて、管理更新の手間や、大量データの処理などはスムーズに行えました。
エッジとクラウドの通信についてもAWSを活用していることで非常にセキュアな環境を提供してくれています。こういったものを活用することで、手間なく、安全に、アプリを運用することができます。

端末の電源については工事現場ということもあり簡単に給電することができました。保管方法については防水防塵に気をつけなければならないのでプラスチックケースとプラスチックバックを使ってテストを行いました。

まとめ

エッジコンピューティングは、単純なデータ集計、AIの推論など行う場合には通信コストも削減でき、即時性も担保されるので非常に向いています。
一方で、AI学習、分析などの高度な処理はクラウドの方が適しています。また、エッジを活用する場合、物理的管理が必要になるため、安全を保ちながらどのように管理していくかの仕組みも同時に検討してく必要があります。

もちろん、どちらを活用するのかはプロジェクトの目的や状況に応じて選択することになると思いますが、メリット、デメリットを考慮した上でエッジとクラウドをうまく組み合わせていくことが重要です。

NCDCでは、ご紹介した事例のように、初期要件の検討段階から導入までご支援が可能です。また、実際にエッジコンピューティングを導入する際は、プロジェクトの内容に即した最適な構成を提案させていただくことが可能です。

エッジAIやIoTの導入をご検討中の方は、こちらのフォームからお気軽にご相談ください。

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