NCDCは2020年7月にロゴマークのリニューアルを実施しました。
その過程で作成したさまざまなデザイン資料を公開して、デザイナーから見た企業のロゴデザインプロセスを解説します。
ロゴデザインのプロセス
まず、全体の流れを簡単に説明します。
企業ロゴリニューアルに取り組む際、多くのデザイナーは下記のプロセスで作業を進めていきます。
- ロゴに求めること、背景を理解
理念、目指すべき姿、価値観、行動指標などさまざまな視点で捉える
競合他社のリサーチ
過去に使用したロゴの変遷
ロゴが抱えている問題点
他社から見た時のNCDCのイメージ
インナーブランディング、アウターブランディングとしての役割
ロゴの流行り廃り - イメージへの変換
上記1で得られたさまざまな視点を元に、形に変換しながら切り口を探していく - イメージの絞り込み
シンボル、カラー、展開ツールのビジュアル化
次章からは実際つくった途中段階のロゴデザイン案もお見せしながら各プロセスの詳細を説明します。
第一段階:ロゴに求めること、背景を理解する
詳細は別の記事「ロゴリニューアルの想いとプロセスを公開」で説明しているので、ここでは細かい解説は省きますが、まず重要なのはその企業をよく知ることです。そのために企業のブランドパーソナリティや社名の由来などをヒアリングします。
NCDCのロゴデザインの場合は、自社のロゴということもあり必要な情報はいつでもヒアリングできたので、比較的スムーズにロゴに求めることや背景の理解は進んだといえます。
クライアントワーク(受託案件)としてCIデザインに取り組む場合、どうしても決定者である会社の役員や社長がデザインの打ち合わせに参加する機会はほとんどないので、決定者の求めていることや温度感がわからず、ひたすらパターン増やすということもよくあります。
そういった意味では決定者から直接ヒアリングできた今回の制作プロセスは非常にスムーズだったかと思います。
ちなみに、ひとりのデザイナーとして外部から見たNCDCの印象(入社前に持っていた印象)は下記のようなものでした。
システム会社らしい堅実で実直なイメージ。対外的に出ているビジュアル的な面ではクリエイティブな企業という印象はやや薄い。
しかし、入社して社内から見てみると、その印象はこのように変わっていきました。
新たなメンバーが多く、それぞれが新たなことにチャレンジしていこうという意欲を持ったフレッシュでアグレッシブな会社。
こうしたギャップがあったので、外から見る印象と異なる「実際の魅力」が感じられるようなロゴにするべきではないかと、はじめに考えました。
第二段階:イメージ変換を行う
ここまではデザイナーとしては情報のインプットに時間を割きますが、ロゴに求めること、背景を理解したあとはビジュアルをアウトプットしながら議論を進めていきます。
今回のNCDCのロゴデザインのケースでは、まずはどういった方向性のロゴが良いのか議論できるようにラフデザインした大量のロゴを用意しました。
ビジュアルのアウトプットをはじめてからもロゴに対する想いを引き出すことが大切だと考えているので、最初から方向性を決めつけて絞り込まずに、さまざまなテイストのロゴを用意して率直な意見を言ってもらうようにします。
もちろんバリエーションが多いと、その分意見もたくさん出てきて収拾がつかなくなることもあるので、取捨選択しなければいけませんが、この段階でできるだけロゴについて思っていることを引き出すことで、後のプロセスでのブレは少なくなる気がします。
最初に「ロゴに求めること、背景」など、さまざまな情報をインプットをしてからアウトプットに取り組んでいくのですが、実はこの大量の案を出している段階では、その形状の示す意味などはカチっと決めずに、見た目の佇まいを重視してデザインしていきました。
最初に意味を決め過ぎてしまうとシンボルのパターン出しがうまく行かないことが多いため、あえて形を探りながら並行して意味づけを行う、もしくはとりあえず形を作ってみて意味は後付けをするというやり方です。
その方が思いがけない発見があるので、このようなデザインプロセスを辿ることが多いです。さばいた肉を熟成させるかのごとく、作成したロゴを一旦遠ざけて寝かしておくことで得られるものがあるのです(笑)。
今回のNCDCのロゴデザインのケースでは、幸いにもこのラフデザインを提示した段階でワークショップという形で社員一人ひとりの意見を聞くことができ非常に参考になりました。
今までの経験(クライアントのロゴをデザインする仕事)では、提示したデザインに対する意見は数日後に担当者から集約したものだけが送られてくるため、細かい意見などはふるいにかけられて伝わってこないことがありました。そうすると温度感がイマイチ伝わってこないことがあります。その点で、社員が集まってワークショップを行う中に参加し、直接多くの声を聞けるのはデザイナーにとってとてもやりやすい進め方であったと言えます。
また、先にも書いた通り、基本的に企業ロゴは企業トップの意向が大きく反映されますが、デザイナーが企業トップと直接やりとりすることはほとんどなく、担当を介してデザインを進めていくことが多くなります。
決定者の意図を汲み取ることができないとその後のデザインプロセスがスムーズに進まないことがあるので、その点でも、社員はもちろんトップ(代表の早津)も参加して行ったワークショップは非常に有意義なプロセスでありました。
第三段階:形状とカラーの絞り込みを行う
上記のとおり、第二段階で大量の案を出してバリエーションを広げるだけ広げた後、印象の良かったデザインを再度検討し直して、形状検討→カラー検討というプロセスで絞り込みを行ってきました。
形状検討
これらのデザインの中で会社のビジョンに近いコンセプトを選定して、3つの案まで絞り込みました。
この段階ではデザインの意味もしっかり整理されているので、見た目の印象とそのデザインが持つ意味の両方を説明しつつ、クライアント(この場合は自社の代表)にプレゼンテーションを行います。
その際に用いたのが下のA,B,C案の資料です。企業ロゴは名刺や封筒などに必ず使うので、ロゴ単体だけではなく展開ツールまである程度ビジュアル化した資料を用意して検討していきます。
A案
A案コンセプト
- 翼、羽ばたき → 新規事業の成功、デジタルトランスフォーメーション
- 向き合う矢印 → アジャイル開発、キャッチボール(リードするではなく)
- 手を挙げる人達 → ともに喜び、お客様と一体となる取り組む
B案
B案コンセプト
- 風車もしくはチェーンホイール → ぶれない軸で回転させる(ビジネスを前進させる)
- 花のシルエット → 花開く(新規事業を成功させる)
- 単語帳 → 方法論、メソッド(デザインシンキング、UX デザイン、アジャイル開発など)
C案
C案コンセプト
- 木の枝が上に向かって成長していく様子 → NCDC がお客様の事業やサービスを共に成長させていく
- ユニーク性、フレンドリーなテイスト → 発想力や提案力を表現。NCDC への期待値を感じられるようなもの
- 稲穂が実るような姿
3つの案からひとつに絞り込む
この3つの中でA案かC案かの二択まで絞り込まれましたが、C案ではNCDCのロゴマークとしてもっとも人目に触れる機会が多いであろうWEBサイトなどでどうしても印象が弱いことがわかり(紙媒体よりも低解像度で小さく表示される機会が多いため)、形状はA案に決定しました。
カラー検討
決定したA案をもとに5通りのカラー検討を行っていきました。
新ロゴ案完成!
こうしたプロセスを経て、最終的に採用されたのがこのデザインです。
シンボルマークとロゴタイプ
一般的に「ロゴ」と呼ばれることが多いですが、実はロゴマークは分解するとシンボルマークとロゴタイプに分けることができます。
これらで構成されているロゴを「ロゴマーク」と呼びます。
NCDCのリニューアル前後のロゴデザインを見比べると、新たにシンボルマークがつくられたのが大きな特徴です。
ロゴタイプのみとシンボルマークを含むロゴマーク、それぞれどのような特徴があるかというと….
ロゴタイプのみの場合
- 会社名を覚えてもらいやすい
- 陳腐化しづらい
シンボルマークを含むロゴマークの場合
- どういう会社か特徴などを表現しやすい
- シンボルマークがアイキャッチとなり、視認性が上がり、記憶に残りやすい
と説明することができます。
シンボルマークの有無はどちらが優れているということもありませんが、今回のNCDCのロゴデザインにおいては、シンボルマークが重要な役割を果たしています。
このシンボルマークにはさまざまな意味が込められているのですが、その詳細は別の記事「ロゴリニューアルの想いとプロセスを公開」で説明しているので、ぜひ併せてご覧ください。
NCDCでは企業のCI(Corporate Identity:コーポレートアイデンティティ)検討や、新商品・サービスのブランディングなど、デザインのご相談も受け付けています。
ここで公開したようなデザインのプロセスに関心のある方はぜひご相談ください。