新規事業の担当部署に所属している方、これから新規事業に取り組む方にとって「どうすれば成功率の高いビジネスアイデアを生み出せるのか」は共通の悩みだと思います。
そんなときに非常に重宝するのが、市場や自社の強みについて整理する考え方の枠組み「フレームワーク」です。今回はそんなビジネス用のフレームワークの中でも、数多くのビジネスコンサルタントも使用する“マスト”な5つをご紹介します。
新規事業検討の全体像を知りたい方はこちらの記事もご一読ください。
DX時代に必要な新規事業とは? 検討プロセス&フレームワークを一挙紹介!
目次
そもそも「フレームワーク」って、何?
「フレームワーク(Framework)」とは、何らかの「型」や「構成」、「枠組み」を意味することばです。
ビジネスにおいては、新規事業を考える際、自社の強みや市場のニーズについて考えることは欠かせません。
このとき、より精度の高い調査・分析を行うために用いる思考の型・枠組みを「フレームワーク」と呼びます。各界の研究者やコンサルタントが使用し、歴史のなかでブラッシュアップされてきた方法論なので、一定の信頼性がある結論を導き出すことができます。
これらのフレームワークを使うことで、自社・市場・顧客などの周辺環境について理解を深められるため、新規事業の成功率を少しでも高めるという効果が期待できるでしょう。
フレームワークを使う必要性とは?
まず「なぜフレームワークを使うべきなのか」、その理由について3つの観点からご説明します。
その1:リスク回避
多くの新規事業が短期間で継続不可能になる原因として、市場でのポジショニングや顧客のニーズなどを理解しないまま、アイデアを実行に移してしまうことが考えられます。
客観的に分析する「フレームワーク」を使うことで、始めてすぐに失敗に気づくような「避けられる失敗」のリスクを減らすことが期待できます。
その2:スピードアップ
新規事業を立ち上げようとしているのは、競合他社も同じです。さらに消費者のニーズはめまぐるしく変化しているため、検討に時間をかけていると知らないうちにビジネスチャンスを逃している可能性もあります。
こうした環境で求められるのは、何よりスピードです。だからこそ効率良く分析できるフレームワークは、迅速に事業を実行へ移せるため、重宝するのです。
その3:アイデアの可視化
もしあなたが新規事業の担当者として、上層部にアイデアをプレゼンすることになったとします。その際、成功が見込まれる客観的な根拠を求められることでしょう。このとき、フレームワークによって分析した資料は心強い味方になります。
さらに一度分析を行えばアイデアが「可視化」されるので、チーム内で共有するのにも便利です。
新規事業の検討にマストなフレームワーク5選!
ここからは、特に重宝する必須フレームワーク5つを、それぞれの「メリット・デメリット・必要性」とともにご紹介します。
1:「PEST」(ペスト分析)
PEST分析とは、P(Political/政治的要因)・E(Economical/経済的要因)・S(Social/社会的要因)・T(Technological/技術的要因)の頭文字4つをとったフレームワークです。
政治や経済など、将来的に新規事業に影響を与えるであろう“外部環境(マクロ環境)”を分析します。新規事業は特に地盤が固まっていない状態からスタートする場合も多いため、外部環境は特に気にしておく必要があります。だからこそ、PESTで危険を予測する必要があるのです。
とても網羅的に作られているPESTですが、デメリットもあり、内部環境の変化を分析するのには向きません。また、中長期的な分析を前提としているため、「来月の市場動向を予測する」といった短期的な目的では使いにくいものだといえます。
具体的には、下図の記入例のように外的環境を4つに分けて分析します。
最初は、分析のもととなる情報の収集から始めましょう。どの分野も主観的な意見を反映しては意味がないので、公的機関・専門家が発表しているデータやレポートなど、信頼性の高いものを選ぶようにしてください。
集めた情報は下記4つの要素、そして「チャンス(好影響を与えそうなもの)」と「リスク(悪影響を与えそうなもの)」に分けて整理します。そうすることで、各要素が新規事業に対してポジティブ・ネガティブどちらの影響を与えるか、よりわかりやすくなります。
- P(Political/政治的要因)……業界・ビジネスに関係のある法律や条令、政治的な動き
- E(Economical/経済的要因)……経済の水準、為替、金利、消費者の平均所得などの変化
- S(Social/社会的要因)……人口、慣習、価値観、文化、流行などの移り変わり
- T(Technological/技術的要因)……AIやIoTなど、ビジネスを取り巻く技術の進化
2:「3C」(サンシー分析)
3C分析とは、C(Customer/顧客)・C(Competitor/競合)・C(Company/自社)の頭文字をとったフレームワークです。
PEST分析が「外部環境」だけだったのに対して、3C分析は自社とそれを取り巻く顧客や競合といった「事業環境」分析する手法です。このフレームワークを使うことで、顧客のニーズを正しく見極め、市場で自社がどのポジショニングにあるかを知ることができます。それにより、新規事業の戦略も見いだせます。一般的には「PEST分析」の次に「3C分析」を行います。「PEST分析」と「3C分析」を順に使うことで、効果を発揮します。
ちなみに3C分析では、「顧客→競合→自社」の順に分析しなければ十分に効果を得られません。というのも、ターゲットとなる「顧客」が正しく定まっていないと、似て非なる業界の企業を「競合」と判断してしまう恐れがあるからです。また「自社」についても同じで、顧客・競合を正しく見定められないと、自社の強みも決めることができません。正しい順番で分析を行うようにしましょう。
- Customer(顧客)……顧客のニーズ、消費行動における流行、市場の規模、市場の成長性など
- Competitor(競合)……具体的な競合、その特徴、競合各社の占めるシェア、業界内でのポジションなど
- Company(自社)……想定しているサービス・商品の特徴、リソース、資本力、理念、既存事業との関連など
3:「SWOT」(スウォット分析)
「SWOT分析」とは、上2つの「PEST分析」「3C分析」で集めた外部環境・事業環境の情報を解釈して、ビジネス上の戦略目標を設定する方法です。
「SWOT」は、S(Strength/強み)・W(Weakness/弱み)・O(Opportunity/機会)・T(Threat/脅威)の頭文字をとったものです。S・Wはそれぞれ自社の強み・弱みを意味し、O・Tはそれぞれ市場における機会(良い影響)・脅威(悪い影響)を意味します。
「SWOT分析」は分析の範囲が「PEST分析」や「3C分析」と同様ではあるのですが、人による「解釈」を主体にしているところが最大の特徴です。例えば「これは機会に見えて、実は脅威では?」「『接客の質が高い』という曖昧な部分を強みと言ってよいのだろうか?」など、分析する人によって解釈が異なる場合が出てきます。
具体的には、下記のように「プラス要素」「マイナス要素」に分け、それぞれの事例を考えるとスムーズです。
【プラス要素/新規事業に“良い影響”を与えるもの】
- S(Strength/自社の強み)
- O(Opportunity/世の中・市場における機会)
【マイナス要素/新規事業に“悪い影響”を与えるもの】
- W(Weakness/自社の弱み)
- T(Threat/世の中・市場における脅威)
4:「ポジショニングマップ」
ポジショニングマップとは、ターゲットとなる顧客に提供できる価値から、市場における「優位性」を分析するフレームワークです。
縦軸・横軸にそれぞれ商品・サービスの特徴を挙げ、枠内に競合名を書き入れます。それによって、自社がどのポジションを狙えば優位に立てるか、という戦略目標を可視化できるのがメリットです。
ちなみに競合の誰もいない場所を「ブルーオーシャン」と呼び、うまくいけば独占的なシェアを獲得できます。逆に競合がひしめいている場所は「レッドオーシャン」と呼び、価格競争が激しくなっており、利益が上げにくい領域です。
デメリットとしては、縦軸・横軸の取り方を間違えると、見当違いな分析になってしまうことです。ターゲット顧客が商品を選ぶときに判断するポイント(購買決定要因)を正しく踏まえたうえで、作図するようにしましょう。
5:「ビジネスモデルキャンバス」
ビジネスモデルキャンバスは、思いついたビジネスアイデアを深掘りし、整合性を確かめるフレームワークです。
具体的には下記の9つの項目について、検討して埋めていきます。
ビジネスモデルキャンバスのメリットは、1枚の紙でアイデアの整合性が一目瞭然なことだといえるでしょう。「顧客にどんな商品、サービスを提供できるのか」「どんなコストがかかるか」などのビジネスモデルが可視化できるため、チーム内での共有や上層部への説得材料としても便利です。
デメリットとしては、サービスの内容から顧客のこと、コスト構造のことまで網羅する必要があり、ある程度ビジネスに関する知識がないと表を埋められないことが挙げられます。その点では事業分析の初心者だけで扱うのには向かないフレームワークだといえます。
- 顧客……商品・サービスの利用者
- 価値……顧客に提供できる価値
- 販路……どう商品・サービスを届けるか
- 顧客との継続的な関係……顧客との継続的な接点の作り方
- 収益……マネタイズの方法、売上の種類
- リソース……活用できるキーリソース
- ビジネス活動……事業で必要となる行動
- ビジネスパートナー……委託先・仕入先等のパートナー
- コスト……事業のための費用
まとめ
いかがでしょうか。こうしたフレームワークは、知識だけでなく何度も実際に使い、フレームワークに沿った思考がスムーズにできるようになってこそ大きな効果を発揮します。まだ十分に使いこなせないという場合はコンサルタントを活用するのも有効な手段です。
たとえば、NCDCでは立案・検証をサポートする新規サービス実現コンサルティングや、短期間に新規サービスの立案方法を学んでいただく新規サービス立案ワークショップ(社員研修としても活用可)などのサービスを提供しています。
ぜひこうした外部リソースも利用しながら、新規事業を成功につなげてほしいと思います。