「人生に、大切なことを、わかりやすく。」をモットーに、WEB直販型の生命保険を提供するライフネット生命保険株式会社。
同社が取り組んでいるシステムアーキテクチャの刷新プロジェクトについて、システム戦略本部の皆様に話を伺いました。
橋本氏 ── 経営方針の重点領域として、顧客体験の革新・販売力の強化などが掲げられているのですが、システムが障壁となっている面がありました。開業後10年以上経過したシステムが複雑化し開発効率が低下しているため、求められるビジネススピードに対応するのが困難になっていたのです。
そこで、システムアーキテクチャの見直しにより機動性と業務効率を上げることを目的としたWEBシステム刷新プロジェクトが立ち上げられました。
具体的なモダナイゼーションの手法としては、フロントサービスのマイクロサービス化、クラウドへの移行、クラウドネイティブなアーキテクチャの導入、そうしたアーキテクチャを最大に活用するCI/CD、アジャイルの実現などがありました。
橋本氏 ── ライフネット生命を選んでいただいたお客様がお申し込みの登録を行う画面や、お申し込み後のマイページなど、フロントのWEBサービス用のシステムを刷新することに取り組みました。
一つの理由はこの部分の旧システムがEOS(End Of Support:カスタマーサポート終了)になるタイミングであったこと、もうひとつの理由は、やはりユーザーとの接点となるフロントの改善が当社にとって最優先事項であるということです。
橋本氏 ── まずフロントのシステム刷新に関して説明すると、重要なコンセプトとして柔軟性が挙げられます。ユーザーの要望に応えられる仕組みを作ること。それができたら、今度はビジネス部門から出てくるフロント領域のUIや機能に関する改善要望を素早く小刻みに実現できるようにすること。
初期の取り組みはその土台作りという位置付けです。この土台ができると、機動性と業務効率の向上という目的が達成できるようになります。
橋本氏 ── やはり、お申し込み画面をよりお客様にとってわかりやすいものにしたいという要望はあります。まず土台作りだと言いましたが、実は並行する別プロジェクトでお申し込みフローの改善も行われていたので、それを取り込んで進めてきました。
また、旧環境で課題となっていた改善スピードを大幅に向上させることも新システムに期待されています。
橋本氏 ── そうですね。旧環境でも改善自体は随時検討してきましたが、実装が効率的ではなかったのです。従来は改善要望をある程度貯めて、ひとつの改善プロジェクトとして年に1回リリースするような進め方でした。それをもっと小刻みに、必要なものをすぐ取り入れることができるように改善しています。
峯氏 ── 以前は開発のフローがウォーターフォール型で、要望が上がってきてからシステムとしてリリースされるまで多くの時間がかかっていました。複数のプロジェクトが並行している中、それぞれで要件定義、設計、開発、テストといくつもの工程を踏んでいくためスピードがでなかったのです。
新システムではそれをアジャイルでスピーディーにやりたいということですね。
橋本氏 ── 今回は土台作りなので、開発効率がどのくらい向上したか具体的な数字を知るには今後の各プロジェクトの結果を待つ必要がありますが、その基盤は十分に用意できたと考えています。
山内氏 ── アジャイルの体制を立ち上げたので、2週間に1回リリースするサイクルは既に実現できています。これは現時点でも成果として現れていますね。
橋本氏 ── リサーチ企業のコンサルタントには、マイクロサービス化、CI/CDなど当社の実現したいことを説明し、知見を活かしたアドバイスから実務面まで幅広くサポートしてくれる会社を探しているという要望を伝え、いくつかの候補を挙げてもらいました。
橋本氏 ── 当社は金融業なので、やはり信頼性がとても大切です。そこまで考慮して十分な知見・経験がある企業を絞り込んでいくと、候補となる企業自体が少なかったようです。まず各社と会わせてもらい、その後それぞれからの提案を比較して、より実現性が高い提案をいただいたNCDCさんに決めました。
橋本氏 ── 課題は、やりたいことを実現するための知見が当時当社にはあまりなかったことに尽きます。マイクロサービス化すること、CI/CDを基盤も含めて新しく導入すること、アジャイルもほぼ経験がないのに導入することなど、どれもシステム部門にとっては大きなチャレンジでした。
そのため、社員の知識、スキルの足りないところを補いたい。社内に知見も貯めたいという考えがあって、外部の力を求めていました。
峯氏 ── CI/CDの導入に関しては、NCDCさんに入ってもらってすごく良かったなと思っています。以前よりもリリースの準備が大幅に簡略化されて、今、実際に作業のスピード感が出ています。
以前は複雑な手順があって、手順書を見ながらコマンドを打って作業するようなものでしたが、今はボタンひとつでリリースできるようなイメージに改善されています。
峯氏 ── そうですね。イメージを伝えたらそれをNCDCさんで具体化してくれたのはすごく大きな効果だったと思います。
当初自分達で考えていた素案をベースとしながら、具体的なAWSのアーキテクチャにどう落とし込むかに関しては、ほぼNCDCさんに提案してもらった感じです。
山内氏 ── やりたいことの他に、実はいろいろな条件もありました。既存の機能は維持したままマイクロサービス化する、当社独自のAWS利用に関するガイドラインに準拠したセキュリティを実現するなど。そういう制約を加味して、アーキテクチャを具体化していくところがNCDCさんの凄さだなと思いました。
私がとくに感心したのはフロントに立つ人がフルスタックであることです。アプリもインフラもわかる人なので、こちらが何人も会議に出ていろいろな領域の話をしてもNCDCさんの方はたった1〜2名で対応できてアウトプットも早いので、スムーズに話が進みました。
峯氏 ── 少し違うなと思うことがあっても、切り替えの速さがまた凄かったですね。「じゃあ、こうしましょう」とすぐに新しい提案をしてくれるので助かりました。
橋本氏 ── もともとはマイクロサービス化するためのソリューションとしてKubernetes、AWS Fargate、Amazon Elastic Container Service (ECS)などを検討していました。
その中でNCDCさんから「今回の要件を踏まえて考えると、AWS Lambdaの方がより管理工数/想定コストを抑えられるのではないか」と提案をもらい、それを採用しました。
Serverless Frameworkを活用することで、設計工数も大幅に減らせたと聞いています。
峯氏 ── NCDCさんからの提案という点では、AWS CloudFormationをつかったIaC(Infrastructure as Code)の導入もそうなのですが、これがすごく助かりました。環境構築のコスト削減ができたことと、コードでの管理になるので人的ミスのようなリスクを下げられたことが今とても役に立っています。
橋本氏 ── 社内の担当者の代替りなどもあったので、UIのデザインが一部で不統一になっているという問題がありました。当社はCXを重視しているので、それが改善すべき課題であるとの認識はありましたが、デザイン担当者の自由度を奪ってしまうような逆効果を生まない、最適なレベルのガイドラインを定め切れず、なかなか具体策までは踏み込めていませんでした。
今回、フロントのシステムを刷新する中で、やはりデザインの標準化が必要だということに行きつき、NCDCさんはデザインもできると聞いたので打診させてもらいました。
峯氏 ── そうですね。以前もそういう話が出たことはありましたが、あまり具体的に話は進みませんでした。NCDCさんはすぐに問題意識を共有して対策を提案してくれたので、とても助かりました。
UXデザインから実装までよくわかっているNCDCさんだからこそ、すごく早く共感してもらえたと思います。
橋本氏 ── 担当領域に線を引いて「そこから先はうちではやりません」という企業はよくあるのですが、NCDCさんはいい意味で泥臭いところもあって、多少無理な要求や、担当領域以外の質問をしても真摯に応えてくれたのがとても助かりました。
わかりやすくいえば、最後までトラブルにも付き合ってくれるという安心感がありました。
山内氏 ── システムを結合するときにトラブルシュートが続く期間がありましたが、自分たちがこのプロジェクトの中心的な部分を担っているという意識を持って、自社で構築したところ以外も協力してくれたと思います。
例えば、アプリの開発会社さんに非がある時でも、最初からそう主張するのではなく「NCDC側でここまで調べた結果、アプリのこの部分に問題があると推測しています」と伝えてくれるので、相手が腹落ちするコミュニケーションをとれていたと思います。
ライフネット社内の一員のような、大きな責任感を持って関わっていただけたのはとてもよかったです。
峯氏 ── ふわっとした希望を伝えても応えてもらえる。1を伝えたら10をやってくれるような対応力は他のベンダーにはないものだと思います。こちらにはあまり知見がなかったので、そこは非常に助かった点ですね。
また、技術に精通したメンバーをアサインしてもらったおかげで物事がスムーズに進んだと思います。プロジェクト後半の開発定例会などは、本当は当社と開発会社だけでやればいいのですが「NCDCさんがいた方が話は早いね」という意見があって、予定外だったのですが会議に参加してもらうことになりました。
コミュニケーションのスムーズ化という点でかなり貢献してもらえたのではないかと思います。
峯氏 ── NCDCさんと一緒に作業しながらプロジェクトを進めるような体制がとれたのはとてもよかったです。その経験により自分の知見はかなり増えたので、今後のプロジェクトでは他のメンバーにも同じようにサポートしてもらえるとうれしいです。
橋本氏 ── 先にリリースしたフロントシステムの刷新だけに留まらず、システム全体のモダナイゼーションは継続して推進していきます。
今はまだ土台をつくっただけで、これからエンハンスをかけていく必要があるので、その点でのアドバイスなどは引き続きNCDCさんにお願いしたいと思っています。