山口氏 ──当社は、公立小学校様向けにドリルやテストといった教材を発行しております。今回のプロジェクトは、当社の漢字・計算のドリルに対応したタブレット向け学習者用アプリの開発というものです。学校の授業で紙のドリルとこのアプリを合わせてご活用いただくことで、より効果的な学習ができるようにという想いで企画を検討して参りました。
山口氏 ── 当社では、指導者向けのデジタルコンテンツを以前より制作していたのですが、学習者向けのデジタルコンテンツ制作は初めての試みでした。ドリルを出版している会社はいくつかありますが、競争は激化しています。そんな中で、学校や先生にドリルをご採択いただくためのポイントとして、デジタルコンテンツは有効だと考えております。また、なにより児童に当社のドリルとアプリを利用してもらうことで漢字と計算の基礎をいままで以上にしっかり習得できるようにしたいという思いがありました。
加藤氏 ── 今回リリースしたのは小学校2年生向けの漢字アプリと計算アプリです。教育現場でこれから普及が見込まれるであろうという理由からプラットフォームにはWindows 8.1を選定しています。自動採点のほか、筆順のチェックや誤答に合わせて既習の問題を再度学習する機能などがあります。
山口氏 ── 紙教材は紙ならではの良さ、デジタル教材はデジタルならではの良さがあり、それらの相乗効果がでるように注意して企画をしました。紙のドリルの付加価値を高めるアプリとして、教育現場にお役立ちいただければ幸いでございます。
加藤氏 ── 我々が所属しているデジタルメディア課がディレクションを担当し、漢字と計算のそれぞれの教材を担当している部門とチームを組んで対応しました。外部のパートナーはNCDC様と、アプリで使用するSDKをご提供いただいた会社様の2社にご参加頂きプロジェクトを進めました。
山口氏 ── NCDC様にはプロジェクト全体の進行、UIデザイン、アプリ開発をご担当頂きました。プロジェクトを進める中で要件が変わっていくこともあったのですが、こちら側の要望と、現実的な制約のなかで上手く舵取りしていただいたと思っています。
山口氏 ── 本プロジェクトについては、コンペ形式で5社にご提案をお願いしました。NCDC様に決めた理由については、最も具体的なご提案をいただけたからです。児童・教師の利用するシチュエーションを考え、RFPに盛り込んでいなかった機能も、最小限の要件として必要だと一歩踏み込んだご提案をしていただけました。他の会社様にはなかったご提案でした。学習者用のアプリとしての使いやすさだけなく、将来を見越して展開できる仕様にしてほしいという要望を出したのですが、システム構成に関しても将来像まで踏み込んだご提案をしていただけたと思っています。
山口氏 ── 大正解でした。これまで他の案件で納期直前まで、確認できるものが上がってこなくて、できたらイメージと違っていたということがありました。NCDC様は、開発状況の詳細な報告はもちろんのこと、開発途中のアプリを定例会議のたびに見て確認できたり、触ったりできる状態でご提示頂いていたので、大変安心感がありました。常に状況をオープンにしてくれていたので、問題点に直面しても議論することで解決することがでました。
NCDC ── アプリはWebサイトよりも操作がより直感的になるので、実際に触ってみないと「良い」・「悪い」の判断が難しい特徴があります。ですから、NCDCでは開発→テスト→フィードバック→修正を反復するアジャイルという開発手法を採用しました。短期間での開発が必須でしたので、品質と開発期間を両立させるため、このような進め方を提案させて頂きました。
加藤氏 ── 一番はスケジュールですね。新学年が始まる4月リリースは厳守だったのですが開発がスタートしたのは2月でした。どうしても作っていく中で要望が膨らみ、NCDC様には途中で何回も仕様変更をお願いすることになってしまいました。より良いものを作りたいという気持ちとスケジュール厳守の制約条件の中でメンバー全員が悩まされました。そんな状況下でNCDC様は我々の立場になって優先順位を考えてくれて、開発チームやデザインチームと迅速に対応して、できるだけのことをやってくれました。その結果、納得のいくアプリが期限内に完成できました。
NCDC ── 当初はマルチプラットフォーム対応のため、最初はAdobeSystemsの『PhoneGap』を使って開発をしていました。ところが使用予定の既存のSDKの一部が当初の想定と違っていたため、光文書院様のリクエストに応えるためにはPhoneGapから他の技術に移行することを含め、仕様を根本的に変更する必要に迫られてしまいました。この問題を早期に認識できたのはアジャイルの手法を取り入れて重要な部分から早期に実装を始めたからです。
山口氏 ── すごく良かったと思います。毎週1回の定期打合せを重ねていきました。その場では単なる進捗会議ではなく、決めなければいけないポイントの議論やプロトタイプによる仕様の議論、デザインの細部にわたる配慮事項など、限られた時間の中でより良い物を作るために適切にプロジェクトをリードしてくれたと思います。また、デザイン面等、こちら側の無理をかなり聞いていただいたと思っています。その点で、NCDC様のデザイナーの清水さんには負荷をかけてしまっていたかもしれないですね(笑)。
NCDC清水 ── 仕様変更が続いたのはデザイナーとしても大変ですが、それに対応できたことには開発チームが上手くサポートしてくれことが大きいです。チーム全体として「いいものにするために必要なことならできるだけやる」という意識が共有されていました。 光文書院様からの変更依頼がない場合でも、こちらで最初にできたデザインを児童の目線で見直して何回も修正しましたね。実は、気づかれていないと思いますが、ボタン類の角丸のカーブの形も児童の目にやさしい緩和曲線を使う等、デザインにこだわっています。
山口氏 ── 今後、短期間で既存の教科書や教材がすべてデジタルに置き換わることは考えにくいと思っているのですが、デジタル化によるメリットも確実にあると思っています。子どもの学習効率アップだけでなく、先生の仕事がより効率的になるという点も同じくらい大切な要素だと感じています。
加藤氏 ── たとえば採点が自動になれば、先生が児童に向き合える時間が増えます。デジタル教科書のように見たり、読んだりすることが中心の教材はデジタル化に向いている一方で、紙がベターな教材もあります。今後も先生、児童、保護者のみなさんにとって魅力的なツールを提供していくつもりです。
山口氏 ── NCDC様とは今回のプロジェクトが初めてのお付き合いだったのですが当初我々が思っていた期待を超えるご提案やプロジェクト運営をして頂きました。短期間でのアプリ開発だったのですが結果として、いいものが開発できたと認識しております。NCDC様にお願いして良かったと思っています。新しい取り組みのアイデアを練っていますので、次のプロジェクトでもご一緒したいですね。