間違いやすい改革のロードマップ

公開 : 2014.10.30 

こんにちは。NCDCで経営全般とビジネスアーキテクチャの視点からのコンサルティングを担当している早津です。
前回、To-Beや変革におけるロードマップの重要性と難しさついてコラムを書きました。
今回はよくあるロードマップ策定でのミスと私が考える推奨案について話したいと思います。
変革は様々な制約条件があることを先のコラムで書きました。どんなリーダーでもそのことに気づきます。「あれ? 思ったよりも変革するのがむずかしいな」と。
その結果、変革へのロードマップの第一歩として採用されるのが「自社組織の変更」です。
しかし、多くの場合、組織変更からの変革のロードマップは失敗に終わります。もしくは変革へつながる道筋にはなりません。

なぜでしょう?
組織を変更しても、その組織の中の多くの担当者にとって大きな変化が起きないからです。組織変更によって担当するクライアントが変わったとしても、定期人事異動などと変わりません。
実は組織変更で大きくそのタスクや責務が変わるのは組織の長(部門長クラス)だけなのです。
つまり、組織変更は全社変革の視点から見ると、マネジメントモデルの変更だけであり、大多数の一般の社員にとっては何も変わりません。一方、組織を変えると、ITシステムの変更も必要になりますし、名刺を刷り直したりする必要もあるかもしれません。週末に大規模な席替えが発生するかもしれません。コストはそれなりに発生してしまうのです。
「新しい社長が来てから組織が大きく変わりました。まあ、しかし私がやることは基本変わらないですね」というセリフを何度聞いたことか。
現場が何も変わらない変革は変革になりえないのです。
私が推奨する変革のロードマップの第一歩は「業務プロセスの改善」です。特にお客様とのプロセスに関連する部分の見直しや報告業務の見直しを行うことで、全体的な業務のスピードアップや担当者の負荷軽減に大きく寄与します。担当者の負荷が軽減されるだけで、モチベーションアップにつながりますし、変化を多くの社員に体感してもらうことができます。「組織変更」という大きな枠よりは細かい分析が必要になりますが、効果は絶大です。
業務プロセスは本質的には1年くらいで変化していきますが、業務プロセスの見直しは5年も10年も行っていない企業がほとんどです。それが業務ルールだと思って盲目に行っているのです。「ルールは守らないといけない」という心理の結果、改革が遅れてしまっているのです。
私が経験した業務改革の例を挙げてみましょう。
・本来お客様が行うオペレーションを社員が代行していた。なぜならシステムがわかりにくく、社員がやらないとクレームになったことがあるから。
→システムのUIを簡易的に修正して、お客様に自由にオペレーションしてもらうように変更
・商品の箱のデザインの稟議プロセスにおいて承認者の数が多く、承認の順序も考えられていない。以前ミスがあった時にこのようなフローになった経緯があるとのこと。箱のデザインなので紙での稟議となっていた。
→適切な承認者と承認ルートの再設定とIT化(電子化)により稟議プロセスの工数を半分以下に
・平日の残業時間の制約のため、結局土曜日に休日出勤の申請をせずに出勤してその週の日報などを書いている
→自宅に持ち帰ることができるタブレットの配布と直出直帰の導入、日報に必要な項目の精査により、勤務時間の短縮(適正化)
いずれに例も「変革」というほどものもでもなく、小さいレベルの改善です。しかし、多くの社員の業務を楽にすることに直結しており、楽になった分、モチベーションがあがり、本来時間をかけるべき仕事に集中できるようになります。社員の心理面の効果も大きく「新しい社長が来てから、現場の改善をちゃんと見てくれて、すごく良くなった」と思ってもらう効果もあります。このような心理的なプラスの効果は今後の本格的な改革の時に大きな力になるのです。
加えて、小さいことでも「ルールを変える」ということには反対意見が必ずでてきます。しかし、変革には必ずルール変更が必要になるため、小さいルールでも構わないので、ルールを変える部分を変化の第一歩に入れておいたほうが良いのです。
NCDCではIT導入を行う際に、上記のような経験を活かし、変革のロードマップや社員の心理までケアした提案と実装を行っています。そうすることで、使われないシステムではなく、貢献するシステム、継続改善できる仕組みができていくことを支援しています。つまり、これがNCDCが定義しているUXのアプローチと同義なのです。

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