2025年9月30日にオンラインセミナー『生成AI×UX/UIデザインで発想を広げる!実践事例と注意点』を開催いたしました。 この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントを解説しています。
目次
概要
手間がかかるUX/UIデザインの検討プロセスに生成AIを活かすことで、アイデア出しや検討のスピードを大幅に高めることが可能になってきました。ただし、便利な反面、権利関係や品質のばらつきといった課題があるのも事実です。最終的には、デザイナーによる良し悪しの判断やブラッシュアップが不可欠です。
本記事では、生成AIをアイデア出しに活用する方法から、実務で使う際の注意点までを解説します。
テーマ
- 生成AIとUX/UIデザインの可能性
- 発想を広げる際にAIが有効な理由
- UXデザインと生成AIの関わり方
- 実際に使う上での注意点
- デザイナーが担うべき最終工程
- 実践事例の紹介
生成AIとUX/UIデザインの可能性
まずは、生成AIとUX/UIデザインの可能性についてです。かつて手作業だったデザイン工程は、デザインツールの登場といったソフトウェアの進化によりデジタルへ移行し、効率化されてきました。そして今日、生成AIの登場によってデザイナーの役割も変化しつつあります。
AIは単なる効率化ツールではなく、アイデアの創出という知的作業をサポートするパートナーとなりつつあるのです。

AIは過去の膨大なデータから、人間には想像もつかないような組み合わせを提示してくれます。例えば「新しいアイデアを100個考えて」と指示すれば、即座に回答を得られます。
配色やレイアウト、コンセプトのラフ案作成においても、AIは非常に有効です。
AIに反復作業を任せることで、デザイナーはユーザーインタビューや戦略立案、UIの作り込みなど、人間的な感性やコミュニケーション能力が求められる「本質的な課題解決」に注力できるようになります。

UX/UIデザインのプロセスにおけるAIの活用
下図はUX/UIデザインの代表的なプロセスとITプロジェクトの流れを示したものです。

UX/UIデザインの流れはITプロジェクトの流れと親和性があります。
- 要求定義:理解・共感
- 要件定義:アイデア出しからプロトタイプ作成
- 設計・テスト:UIデザインやユーザー評価
- 運用:リリース後のユーザーフィードバック分析と改善
これらのプロセスのうち、下図の緑枠線のタスクはAIに頼める部分が多いものの、精度が低い場合も少なくありません。

万能と思われがちなAIですが、「本質的な洞察」や「共感」、「非言語的なコミュニケーション」を苦手としています。
例えば、人と人が対面で話しているときは、相手の表情やささいな仕草・声のトーンなど、言葉には出ない相手の感情を読み取ることができます。こうした非言語的なコミュニケーションは、AIで判断するのは難しいです。
また、極端な質問は別として、生成AI 肯定的な回答に偏りやすく、否定的な意見を述べることも苦手です。

AIを上手に活用するためには、AIと人、それぞれに苦手なところがあることを理解し、AIが得意なところはAIにどんどん案を出してもらい、人の手で精度を上げていくという作業分担が重要になってきます。
実践的な作業分担の事例
UX/UIデザインプロセスを効率よく精度を上げるためには、人とAIでどのように作業分担をすると良いでしょうか。
代表的なプロセスの中で、AIを使うと効率化できるところと、人が手で行う方が良いところをいくつかご紹介します。
- ペルソナの作成
- ジャーニーマップ作成・インサイト分析
- ワイヤーフレーム
- ビジュアルデザイン
- ロゴデザイン

1. ペルソナの作成
AIのターン(情報収集とプロファイル作成)

まず、ベースとなる情報は人が提供します。事前のインタビューやアンケート等で得たユーザーの生の価値観やニーズを入力データとしてAIに渡します。
AIはそこから、 Web上のデータやトレンドを加味して初期プロファイルを作成します。 ここでのAIの強みは、その圧倒的な処理能力です。例えば、「ターゲット層のバリエーションを出して」と指示すれば、メインのターゲットだけでなく、大量のパターンを効率的に構築してくれます。これは人間がゼロから考えると非常に骨の折れる作業ですが、AIなら一瞬です。
人のターン(リアリティと魂を吹き込む)

AIが作ったプロファイルは、あくまでデータの集合体です。ここから人が肉付け(リアリティを持たせる)を行っていきます。特に重要なのは以下の3点です。
- 価値観・感情への共感:ペルソナの本質である感情の動きや深い共感は、人間にしか理解できません。AIが作った骨組みに対し、「この人は本当にこう感じるだろうか?」と感情のレイヤーを重ねていく作業は人の手で行う必要があります。
- チームでの共通理解:AIが出したものをそのまま受け入れるだけでは不十分です。「私たちのユーザーはこういう人だよね」と、プロジェクトメンバーやクライアント全員が腹落ちするまで議論し、自分たちの思考でペルソナを練り上げることが不可欠です。
- 戦略との紐付け:複数のペルソナ候補が出た場合、「今回はこの層に注力しよう」「今、彼らが一番困っているこの課題を解決しよう」といった戦略的な意思決定は、人間が責任を持っておこないます。
実践事例:社内ドキュメント検索システムのペルソナ
では、実際にGeminiを使ってペルソナを作った事例をご紹介します。

AIは、非常に精度の高いプロファイルを返してきました。

顔写真も含め、いかにもいそうな人物像が出来上がりました。特に先輩に聞きづらくて自分で抱え込んでしまうという心理描写は、新入社員のインサイトをよく捉えています。
AIのアウトプットへの「評価」と「仕上げ」
このペルソナは一見完璧に見えますが、デザイナーの視点でチェックすると現状の課題(困りごと)にフォーカスしすぎていることが分かります。
良いペルソナには、「何に喜びを感じるのか」「どんな体験に価値を見出すのか」といったポジティブな側面も不可欠です。AIは論理的に課題を抽出するのは得意ですが、ユーザーの喜びの描写が抜け落ちがちです。
そのため、最終工程として私たちがやるべきことは、AIが作ったペルソナの山田健太さん(新人エンジニア)に対し、 「彼は何ができたら嬉しいんだろう?」 「本当にこんな性格かな? もっとこういう一面もあるんじゃないか?」 と、プロジェクトメンバーや実際のユーザーと照らし合わせながら、リアリティの精度(解像度)を高めていくことです。
AIが出した答えを正解とするのではなく、それを素材として議論し、チーム全員が「自分たちのユーザー」としてイメージできるように仕上げる。これこそが、AI時代のペルソナ作成の勘所と言えます。
2. ジャーニーマップの作成
ペルソナができあがったら、次はその人物がどのような行動・思考をしているのかを時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」を作成します。
ここでも、AIにたたき台を作ってもらい、人が深掘りをする連携プレーが非常に有効です。
AIのターン(シナリオ定義と初期案の生成)
まず、 人が対象ペルソナと具体的な場面設定(シナリオ)を 定義します。人生の長い時間軸の中で、どのシーンを切り出すかは人が決めなければなりません。迷った場合はAIにシーンの提案をしてもらうことも可能です。
今回は、先ほど作成したペルソナの山田健太さん(新人エンジニア)に対し、以下のシナリオを与えました。

AIのアウトプット:形式的だが網羅性はある
Geminiが以下のようなテーブル形式(表)で出力しました。

一連の流れや、その時々の基本的な感情、改善施策のアイデアまでしっかり記述されています。ゼロから書き出す手間を考えると、これだけでもかなりの時短になります。
しかし、デザイナー視点で見ると1つのセル内の文章が長く、直感的に理解しづらいという課題があります。また、プロジェクトごとのフォーマット(付箋形式など)には合っていないため、このままでは実務で使いにくいのが実情です。
人のターン(修正・インサイト分析)
AIが出したマップをベースに、自分自身が山田さんになりきって修正を加えていきます。

① 1カード・1アクションへの分解:AIの長い文章を解体し、「1つの付箋には行動を1つだけ書く」というルールで整理し直します。これにより、パッと見て状況が把握できるマップになります。
② 思考の多層化:AIは「行動Aに対して思考B」と1対1にしがちですが、人間の感情はもっと複雑です。1つの行動に対し、ポジティブとネガティブが同居していることもあります。そうした微細な思考を複数の付箋で追加していきます。
③ インサイトの深掘り:ここが最も重要です。AIは論理的な思考は書けますが、ドロドロとした人間臭い「本音」までは辿り着けません。
例えば、今回のケースでAIは「情報が見つからない(困惑)」としていましたが、人間が深掘りすると、そこにはもっと深いインサイトが見えてきます。
- 本当は人に聞きたい。でも、「こんなことも分からないのか」と怒られるのが怖い
- 自分で解決して、優秀だと思われたい(評価されたい)
このペルソナの「聞きたいけど聞けない」という葛藤こそが、解決すべき真の課題です。ここを人が読み解くことで、初めて意味のある改善施策が見えてきます。
複数パターンの分析と優先順位付け
AIを使えば、このジャーニーマップを別のシナリオや別のペルソナで複数パターン作成することも容易です。いくつものマップを作ることで、共通するつまずきポイントを洗い出し、どこを優先的に改善すべきかを分析できます。
そして最後に、効果は高いがコストも高い施策を行うのか、低コストで素早くできる施策を選ぶのか。ビジネス要件と照らし合わせた優先順位付けを人の判断で行い、プロジェクトを推進していきます。
3. ワイヤーフレーム作成
カスタマージャーニーマップで必要な機能や解決策が見えてきたら、次はそれを具体的な画面の設計図(ワイヤーフレーム)に落とし込んでいきます。
ここは本来、デザイナーが専用ツールを使って行う作業ですが、生成AIを活用することで、ノンデザイナーのかたでもラフ案を簡単に作れるようになってきました。
では、具体的にどのように進めるのが良いのでしょうか。ここでも役割分担がカギとなります。

AIのターン(論理的な構造とガイドライン準拠)
まず人が、ジャーニーマップから導き出した「必要な要素」や「機能」、さらにその機能の背景となる「要求」をAIに入力します。するとAIはそれらを元にレイアウトのバリエーションを提案してくれます。
この段階でAIを使う大きなメリットは2つあります。
- 論理的な情報構造の提案:AIは世の中の膨大なデザインデータを学習しているため、一般的に良しとされるレイアウトやコンポーネントの配置を論理的に組み立ててくれます。
- 初期段階でのアクセシビリティ検証:例えばデジタル庁のデザインシステムのような公的なガイドラインや、コントラスト比などのアクセシビリティ基準をこの早い段階で満たしているかをチェックさせることができます。人間が見落としがちな基本ルールを、AIは最初からクリアしてくれるのです。
人のターン(「なぜ?」の言語化と実現性の担保)
AIが出してきた一般的に正解とされるレイアウトに対し、人はさらに踏み込んだブラッシュアップを行います。ここで重要なのは言語化です。
- デザインの説明責任:開発チームやクライアントにデザインを提案する際、「AIが作ったからこれにしました」では説得力がありません。「なぜこのUIが最適なのか」「なぜこの構成にしたのか」を、自分の言葉で論理的に説明できなければ、相手を納得させることはできません。
- ペルソナ特有の文脈:AIの提案はあくまで一般的なものです。そこに、「今回のペルソナ(山田さん)は自己解決したいのだから、類似・関連するドキュメントも表示すべきだ」といった、ユーザー特有の感情や使い方を考慮した調整を加えます。
- 開発の制約:どんなに綺麗な画面でも、実装できなければ絵に描いた餅です。このUIは今の技術構成で作れるか、工数がかかりすぎないか、といった開発の制約(実現可能性)をエンジニアとすり合わせ、現実的な形に落とし込む作業は、必ず人の手で行う必要があります。
Geminiに作らせてみる
これまでの流れと同様にGeminiに対して「社内ドキュメント検索システムのワイヤーフレーム画像を作って」と依頼してみました。

正直なところ、実務で使うには厳しいクオリティでした。

タイトルらしき文字は読めない記号の羅列になってしまいます。また、どこか不自然で、UIのセオリーから外れている部分も少なくありません。Geminiはテキスト生成やアイデア出しには非常に強力ですが、精密な画面レイアウトを描画することに関しては、現時点ではまだ精度が低いと言わざるを得ません。
デザイン特化型AIの活用例
現在おすすめできる2つのUX/UIデザイン・開発支援ツールがv0 (by Vercel)とFigma Make (by Figma)です。この2つはどちらも非常に優秀ですが、開発ファーストかデザインファーストかという特徴がはっきりと分かれています。

① v0 (by Vercel)
v0 は、React などの開発フレームワークで有名なVercel社が提供しているツールです。最大の特徴は、コードファーストである点です。プロンプトを入力して画面を作ってもらうと、見た目の生成と同時にReactのコード(実装コード)を生成してくれます。 エンジニアにとっては、プロトタイプを作ると同時に動くコードが手に入るため、開発スピードを上げることができます。逆に、デザイナー視点での弱点もあります。
- ビジュアル調整:純粋な見た目の美しさや細かいデザイン調整は少し弱いです。
- Figma連携:現時点では v0 から Figma へのデータ移行はできません(※執筆時点)。そのため、デザイナーが直接手で細かい作り込みをしたいと思っても、編集継続が可能な状態でFigmaにデザインデータを渡せないのです。個人的な予想ですが、将来的には Figma へエクスポートできるようになるのではないかと思っています。
② Figma Make
対する Figma Make は、デザインツールのデファクトスタンダードである Figma 上で動作する生成AI機能です。
デザイナーやチーム作業向けであり、Figma上でプロンプトを入力すると、画像ではなく編集可能なFigmaデータとして生成されます。 生成された後は、Figmaの機能を使ってオンライン上で自由に編集ができ、複数メンバーで同時に作業することも可能です。v0 同様に弱いところも存在します。
- 実装との接続:コードは出力されますが、それを実際の開発環境につなぎ込むには、やはりエンジニア側の調整や工夫が必要です。
- プランの制限:無料プランでも触ることはできますが機能制限があります。精度の高いアウトプットを求めるなら、実質的には有料プランユーザー向けの機能と言えるでしょう。

生成されたワイヤーフレーム
では実際に、Geminiに入れたのと同じ「社内ドキュメント検索システム」の条件で、両者にワイヤーフレームを作らせてみました。生成された画面のディテールに注目してください。
① v0 (Vercel) のアウトプット
まずはv0です。Geminiと同じプロンプトを入れたところ、以下のような画面が出てきました。

レイアウト左側にナビゲーション、画面上部に検索フィールド、メインエリアにカード形式の結果表示。
カードの中身
- ドキュメントのタイトル
- 本文の冒頭サマリ(最初の文章を拾ってきているようなイメージ)
- 関連タグ
- 更新日時
- ファイルサイズ
- 最終更新者の名前(と思われる人名)
必要な要素は過不足なく入っており、構成としては成立しています。ただ、シンプルで機能的ではありますが、あくまで情報の羅列に近いイメージです。
② Figma Make のアウトプット

次に、Figma Makeにも全く同じプロンプトを投げてみました。明らかに精度が高い、リッチな画面が出来上がりました。
機能の充実(v0との違い)
- 絞り込みフィルター:v0には無かった「カテゴリー別」などで絞り込めるサイドメニューが追加されています。
- ダッシュボード要素:「全ドキュメント数」「今日の更新数」といった、管理画面らしい統計情報も提案されました。
- 関連情報: 右サイドバーに「関連するドキュメント」を表示するエリアが配置されています。
また、生成時に一部レイアウトが崩れている箇所がありましたが、崩れているから直してとチャットで指示すると、綺麗に修正してくれました。
画面デザインの生成においては、Figma Makeの方が精度が高いように感じました。
4. ビジュアルデザイン作成
ワイヤーフレームが決まったら、いよいよ色や装飾を加えるビジュアルデザインの工程に入ります。ここでもAIと人間の役割分担が重要になります。

AIのターン(配色やスタイルの提案)
まず、AIには配色のアイデアやスタイルのバリエーションを出してもらいます。ここでAIを使う最大のメリットは、人間が陥りがちなバイアスを打破できることです。
私たち人間が業務システムの配色を考えると、過去の成功体験や無難さを優先して、例えば「業務システムなら青系(寒色系)」を選んでしまいがちです。 しかしAIは、そうした固定観念にとらわれません。暖色系の配色や意外な組み合わせなど、人間が自分では避けがちなパターンも含めて、フラットに選択肢を提示してくれます。
また、色のコントラスト比や文字の視認性といったアクセシビリティチェックも、この段階でAIに判定させ、修正のヒントをもらうのが効率的です。
人のターン(感性と文脈の微調整)
AIは効率化には役立ちますが、最終的な品質を決定づけるのはやはり人の手です。具体的には、以下の要素は人間がこだわって調整すべき部分です。
- ブランド価値の体現:単に綺麗やかっこいいという見た目の話だけではありません。 そのサービスのブランド哲学や価値観、そしてターゲットユーザーの感情に最も響くものは何かを選定し、その理由を明確に言語化する必要があります。 それぞれのサービスが持つ「らしさ」をデザインにしっかりと落とし込む作業は、人の手で行います。
- デザインの一貫性(Consistency):すでにデザインシステムやガイドラインがある場合は、それに沿って調整を行います。 特に、兄弟アプリや関連サービスとして横展開していくケースでは、プロダクト全体で同じようなユーザー体験を提供する必要があります。UIコンポーネントの共通化など、全体を通した統一性のチェックは人の目で見て行っていきます。
- 感性的な微調整:データでは測りきれない、ユーザーの使い心地や美的な満足感を決定づける部分です。
- 色の微妙なトーン:グレーとひとことで言っても、実はバリエーションが多く非常に幅広い色です。黒と白だけのグレーもあれば、若干青みを入れたグレーもあります。そのような微妙なトーンの違いを調整します。
- 視認性の向上:関連する要素は1つの塊として見えるように近づける、要素ごとに同じデザインルールを適用する、といった「 近接、整列、反復、対比」の 調整を行い、パッと見た時の視認性を良くしていきます。
- インタラクションの細かいタイミング:アプリなどでボタンをタップした時の反応や、アニメーションの動きです。どのような動きをするか、状態変化にどれくらい時間をかけるか等の細かいタイミングの調整も必要になってきます。
生成されたビジュアルデザイン
では、実際に生成AI(v0とFigma Make)にビジュアルデザインを適用してもらった結果を、プロの視点でチェックしてみます。
v0 (Vercel)

v0は、プロンプトで特に指定はしませんでしたが、ダークモードを提案してくれました。無料プランでここまで作ってくれるのは高評価ですが、ブラッシュアップすべき点も多いです。
- コントラストが強すぎて目が疲れる:背景が真っ黒な上に、彩度の高い(鮮やかな)色が乗っているため、長時間見ていると目がチカチカしてしまいます。
- 修正案:原色(赤・青・緑など)を使うなら彩度を落とす(くすませる)工夫が必要です。逆に原色を使うなら、背景を少し明るいグレーにすると目に優しくなります。
- 境界線がわかりづらい:左側のナビゲーションと、右側のメインエリアの境目が非常にわかりづらいです。ワイヤーフレームの段階ではあったカードの枠も色の差がなくなり、カードの良さが消えてしまっています。
- 修正案:カードの背景をもう少し薄くするなどして、エリアを明確にする必要があります。
- 全体的に単調:色の差や文字の大小差(ジャンプ率)があまりありません。
- 修正案:重要な文章はもっと大きく、補助文章とは差をつけて、メリハリを出してあげる必要があります。
Figma Make (Figma)

Figma Makeは「白ベース」で作ってくれました。パッと見は良くできていますが、業務システムとして見ると調整が必要です。
- 色の数が多すぎる:青、緑、オレンジ、紫など、画面全体に色が入っている箇所が多すぎます。
- 修正案:重要なところだけに色をつけ、それ以外は無彩色(白・黒・グレー)にするという配色の調整が必要です。
- 色が薄く、文字が見づらい:全体的に色が薄く、文字にも薄いグレーが使われています。背景色と馴染ませるのはおしゃれですが、業務システムのUI設計のポイントである「見やすい・使いやすい・迷わせない」という観点からすると、改善すべき余地があります。
- 修正案:視認性を重視するなら、文字は黒に近い色を使い、重要な文字には太文字を使用した方が良いです。
- 情報がごちゃついている:テキストの項目が多く、どれを見たらいいのか、どれが重要な情報なのかが分かりにくくなっています。
- 修正案:一覧画面では必要な要素だけを出して、細かい情報は詳細ページで見せるなどの工夫が必要です。
アクセシビリティのチェック

ビジュアルデザイン作成の後には、アクセシビリティチェックもAIにおこなってもらいました。 今回は、デジタル庁がサイトで公開している「アクセシビリティ観点での留意点」を参考に、チェックをするよう指示を出しました。v0もFigma Makeもそれぞれ結果を出してくれました。ただし、ここでアクセシビリティチェックを行ったからといって、それでUIが最適化されたというわけではありません。 実際にはまだ見づらいところや、使いにくいところはどうしても残っています。そのため、最後はやはり人の手で調整が必要です。「このペルソナだったら、どのような画面の使い方やユーザー体験が最適なのか」という視点を忘れずに、人の目でチェックをして仕上げるようにしてください。
5. ロゴの作成
ロゴデザインも生成AIで行うことができました。v0は仕上がりがイマイチだったので今回は省きましたが、Figma Makeにこのサービスのロゴ作成を頼んだところ、いくつか案を出してくれました。

提案されたロゴには、それぞれのデザイン意図やコンセプトの説明も軽く添えられています。
パッと見でそれなりのものができるので、仮のロゴとして使う場合や、そこまで制作にお金をかけられない低コスト開発の場合、あるいは特定の少人数が使用するようなシステムなどであれば、AIで作ったロゴをそのまま使用するのも十分可能だと思います。
(ただし、AIは学習データから既存ロゴと似たものを生成する可能性がありますので「仮のロゴ」だとしても権利関係の問題を引き起こさないよう注意は必要です)
UIデザインの活用まとめ
UIデザインフェーズのまとめとして、大きく3つのポイントがあります。
1. GeminiやChatGPTはUI作成には不向き
GeminiやChatGPTにUI作成を指示してみましたが、生成された画面デザインはいまいちで、UI作成そのものには向かないという結果でした。 ただ、全く使えないわけではなく、テキストベースでの提案やアドバイス(画面構成や配色の案出しなど)や、挿絵のようなイラストや写真の生成には活用できます。UI作成に利用するなら、画像生成ではなく、テキストでの相談相手とするのが良いでしょう。
2. ツールはゴールに合わせて使い分ける
今回使用した v0 と Figma Make は、どちらも初期案としては十分使えるレベルでした。v0 はコード生成をゴールとする場合におすすめであり、Figma Make はデザインの細かな作り込みをゴールとする場合におすすめです。
ただ、これまでの比較は執筆時点でのものであり、v0もFigmaも今後さまざまなアップデートがあると予想されます。デザイン作成・開発において、どちらの生成AIも力強いパートナーになってくれることを期待しています。
3. 使いやすさの最大化は人の手で
ユーザー特有の使い方を考慮し、使いやすさを最大化するための仕上げは人の手で行う必要があります。
- アナログなUIが正解の場合もある:AIはおしゃれでトレンド感のあるUIを作ってくれますが、ペルソナによっては、押した感のある大きくて立体的なボタンや、紙に印刷した帳票のような、あえてアナログなUIが最適解の場合もあります。
- 業務特化のUIが必要:業務システムでは特殊なUIが必要になるケースが多く、既存のUIコンポーネントを組み合わせただけでは、業務をストレスなくこなすことはできません。「誰が、いつ、どんなシーンで触るのか」を想像しながら、オリジナルのUIを作成することも必要です。
これらを理解した上で人の手で作り上げ、ストレスなく業務が完了できるかをユーザーテストで検証し、ユーザーの本質的な課題に応える「最適解」を具現化していってください。
AIは「道具」であり「パートナー」
AIはUX/UIデザインの効率化と質の向上に大きく貢献してくれます。しかし、最終的にユーザーにとって本当に使いやすいか、これが最適なのか、という微調整は、人の手で行うことが大事です。
AIはあくまで人の思考を深め、広げるための「道具」です。人が意図を持って使いこなすことが重要であり、なぜAIの提案が良いのか、本当にユーザーの課題解決につながっているかを常に問いかけながら進める姿勢が必要です。
また、なんでもAIに任せるのではなく、使い分けも重要です。人が行う方が早くてクオリティが高い部分は自分でやる。逆に、自分が苦手だと感じる部分はAIに任せる。互いに補完し合いながら、全体の精度を高めていくことが大切だと考えています。
生成AI利用時の注意点
著作権・肖像権の問題
ここまで「生成AIは便利だ」という話をしてきましたが、業務で利用する際には必ず押さえておかなければならない注意点があります。それが権利と品質の問題です。特に著作権や肖像権については、知らずに使ってしまうとトラブルになる可能性があるため、以下のポイントを理解しておく必要があります。
1. 「パクリ」になっていないかの確認
AIは過去の膨大なデータを学習してコンテンツを生成しています。その学習データの中には、当然ながら著作権で保護された作品も含まれています。そのため、AIが生成した画像が、意図せず誰かの既存の作品に酷似してしまう可能性があります。
最近でも「これ、あの作品のパクリじゃないか?」といった問題が散見されます。たとえAIが作った素晴らしい画像であっても、すでに似たような作品が存在しないか、特定の著作者の権利を侵害していないかをしっかりと調査・確認する必要があります。
2. AI生成物に「著作権」は認められるか?
逆に、自分がAIで作ったものに著作権が発生するかも気になります。結論から言うと、単純な指示で作ったものには、著作権が認められない場合が多いです。
- 認められないケース:「桜の木を描いて」といった簡単なプロンプトを一回入力して出力されたもの。これには人間の創作的な意図や関与がほとんどないとみなされるためです。
- 認められる可能性が高まるケース:「樹齢数百年の、風になびくしだれ桜を描いて」のように複雑な指示を与えたり、一度出たものに対して「花の色をもっと白っぽく」「枝ぶりをこう変えて」と反復して修正を行ったりした場合。このようにAIと人の反復作業があり、人が創作に深く関与しているとみなされれば、著作権が認められる可能性が出てきます。
3. 利用規約(商用利用)の確認
各生成AIツールには必ず利用規約があります。Adobe Stockなどの素材サイトと同様に、商用利用をする場合には「クレジット表記が必要」「特定のライセンス契約が必要」といった条件が定められていることがあります。 ツールごとにルールは異なるため、使用する前には必ず規約に目を通し、商用利用が可能かどうかを確認してください。
4. 品質と倫理の問題
生成AIが作成する画像には、片腕が消えてしまっているような不自然な描写や、倫理に反する偏見が含まれてしまうケースがあります。プロンプトの質や学習データの偏りによって、こういった不正確なデザインが生まれる可能性があるので、AIが作ったからといって良しとせず、必ず人の手でチェックをしてください。
また、AIは古い情報や誤った情報を学習していることがあり、それをさも正解かのように出してくることがあります。AIは万能ではなく間違った情報を出すこともあるので注意が必要です。
5. セキュリティの問題
業務で使う上で一番大事なのがセキュリティです。社外秘の情報(機密情報、個人情報、取引先情報など)の入力は情報漏洩につながる恐れがあります。 必ず会社で許可されたツールのみを使用し、機密情報は入力しないでください。
まとめ
生成AIは非常に便利ですが、デザインプロセスを自動化するものではなく、発想を広げるための道具でありパートナーであるという点は忘れないでください。
開発職、企画職、セールスの方など、デザイナーではない方々も生成AIを使って成果物を作ることがあると思います。もし、「本当にユーザーニーズにマッチしているか?」と判断に迷った場合は、ユーザーやペルソナについて詳しいデザイナーに聞くのがベストです。
デザイナーが担うべき「4つの最終工程」
生成AIを上手にデザインプロセスに取り入れていくと、 デザイナーの役割は以下の4つの工程に集約されていきます。
- 共感と洞察:ユーザーの潜在的なニーズや感情を読み解く力です。反復的な作業はAIに任せて、デザイナーは「より深くユーザーを理解すること」に時間とパワーを割いてください。
- 戦略的思考:ビジネス目標やユーザーの課題と結びつけ、プロダクト全体の体験を設計する力です。
- コミュニケーションと調整:チームメンバーや社内外の関係者と連携し、ビジョンを共有する力です。
- 最終的な品質保証:デザインに関する最終的な責任は、やはりデザイナーが負うべきです。細部までこだわり、緻密な仕上げを行う部分には、しっかりと時間をかけてください。
最後に。
生成AIはもはや「検索ツール」ではありません。今後、生成AIは 業務においても、私生活においても、私たちの想像力を引き出し、共に歩むために無くてはならないパートナーになっていくでしょう。AIという強力な相棒を味方につけ、皆さんにしか描けない新しいユーザー体験を形にしていってください。
AI活用に関するご相談はNCDCへ
NCDCには、UX/UIデザイナーに加え、システム開発エンジニアやITコンサルタントが在籍しており、幅広い領域でAI活用をご支援しています。
・ 『システム開発におけるAI活用セミナー』の開催、AIを取り入れたプロジェクト支援
・ UX/UIデザインを学びたい、実践できる人材を育成するためのコンサルティング
・ 各工程における生成AI活用方法やツール選定のコンサルティング、さらにツールを使いこなすための伴走支援
など、実務に役立つご提案が可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

