2025年2月26日にオンラインセミナー『“使いやすい”が生産性を変える!業務を効率化するためのUX/UI設計ポイント』を開催いたしました。
この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントを解説しています。
目次
UX/UIが業務効率に与える影響
使いにくいシステムは、時間のロス、誤操作の多発、教育コストの増加を招き業務効率を低下させます。そしてユーザーの不満が募った状態では結局そのシステムは使われず、代替手段(例:Excel、紙など)が併用されたり、メインで使用されたりすることになってしまいます。
特に、スマホアプリやSNSに慣れ親しんだ若い世代は、従来のシステムのインターフェースや操作性に不満を感じやすい傾向があると言われています。
業務効率を向上させるためには、直感的に操作でき、迷わず目的の操作を実行でき、誤操作を防いでストレスなく使えるシステムが不可欠です。
このような「使いやすい」システムは、従業員が本来の業務に集中できる環境を提供し、結果として企業の生産性向上に大きく貢献します。
システムの改善は、従業員の満足度を高め、企業全体の成長を促進する重要な要素となるのです。
ユーザーの負担を軽減する具体的な方法
スクロールと一覽性
上図左側の例は、マネーフォワードの年末調整の画面です。一覧性は低いものの、複雑な操作フローを段階的に表示することで、ユーザーは一度に処理する情報量を制限できます。これはチャンキング(情報を小さなまとまりに分割する)や段階的開示といった原則に応じた設計です。年に一度しか利用しないような画面でも、迷わず入力できるよう、心理的な負担を軽減し、ユーザーがステップを順に進めることに集中できます。
上図右側の例は、受注システムの登録画面です。年末調整の画面とは反対に使用頻度が高く、またユーザーの習熟度も高い画面のため、一覽性を重視し、ひとつの画面に情報を集約することで効率的な操作を実現しています。ユーザーは高い一覧性のために全体を把握しやすく、スピーディーな入力が可能になります。特に、使用頻度が高く、ユーザーの習熟度も高い業務システムでは、目的の情報がどこにあるかを探す認知負荷を最小限に抑えることが、作業速度と正確性の向上に直結します。
このように、使用頻度やユーザーの習熟度に合わせてスクロールと一覧性の高い画面を使い分けることで、ユーザーにとって使いやすい画面設計を実現できます。
一覧性の高い画面の例
Gmailは、毎日のように利用するユーザーが多いサービスです。そのため、一覧性が高いデザインが好まれます。
上図の四角で囲んだ部分を見てください。左上の「作成」ボタンを押すとメッセージ画面がポップアップで表示されますが、このポップアップ画面にもメールの作成に関する沢山のボタンがアイコンで表示されています。画面中央上部には一覽からメールを削除したり、既読にしたりといったアクションを実行するボタンがアイコンで横並びになっているほか、画面右上にはアカウント関連機能が配置されています。
このように、使用頻度の高い操作を一画面で完結させることで、ユーザーは快適に利用できます。
画面設計の前提となるユーザー理解
このような画面設計を適切に行うためには、ペルソナの定義が非常に重要です。
名前、年齢、仕事内容だけでなく、システムの使用頻度や習熟度、ITリテラシーなど、詳細な情報を定義することで、ユーザーを深く理解できます。
また、カスタマージャーニーマップも有効です。業務の中でユーザーがどのような行動をし、その行動に対してどのような感情を抱いているかを把握することで、問題点を明確にできます。このようなユーザー行動をプロジェクトメンバー全体で共有しておくと、メンバー間の認識ずれを防ぎ、意見のすり合わせが容易になります。
ペルソナ定義やカスタマージャーニーマップについて詳しく知りたい方は、こちらの記事「実践で違いを生むUX知識『ペルソナとカスタマージャーニーマップのウソ・ホント』」をご参照ください。
使いやすい帳票画面のポイント
業務システムで頻繁に利用される帳票画面の使いやすさについて、ポイントを押さえておきましょう。
- 絞り込み検索の保存機能: 使用頻度の高い絞り込み条件は保存できる機能があると、ユーザーは過去の検索条件をすぐに呼び出せて便利です。
- 一括選択ボタン: リストのヘッダー部分に、まとめて選択できるボタンを配置すると、操作がスムーズになります。
- ソート機能: リストのヘッダーに矢印やアイコンを配置し、ソート機能を提供することは、最近では当たり前になっています。
- 行の表示数と視認性: リストに表示する行数は、できるだけ多く表示しつつも、視認性を損なわないようにバランスを考える必要があります。
- 最適な入力補助: 絞り込み検索のプルダウンなど、最適な入力補助を選択することも重要です。
- 簡易検索と詳細検索の使い分け: 業務システムでは細かい絞り込み検索が必要になることが多いため、簡易検索と詳細検索を使い分けるボタンがあると便利です。詳細検索を常に表示すると一覧性を損なうため、ユーザーが必要な時に切り替えられるようにします。
- カラムのカスタマイズ: カラム数が多い場合は、ユーザーが自由に表示するカラムをカスタマイズできると便利です。
- 縦横スクロールの共存回避: 縦スクロールと横スクロールが同時に発生する画面は操作性が悪くなるため、できるだけ避けるように設計します。
最適な入力補助の例
先ほど触れた「最適な入力補助」について、スマートフォンアプリの例をご紹介します。
上図のように、時間を選択する入力補助だけでもさまざまな種類があります。
1番左はカレンダーアプリの例で、時間を選択する際によく見られるドラムロールの形式です。選択肢を上下にくるくる回転させるような操作感で、時間や午前・午後を選択します。
左から2番目はGoogleマップの例で、プルダウンで時間を選択します。
左から3番目はオンライン学習プラットフォームの例で、全ての選択肢が一覽できる状態になっています。このように、決まった時間の中から選択する場合、プルダウンではなく、一覧性の高い状態で選択できる形式が最適です。プルダウンはワンクッション必要ですが、この形式ならすぐに選択できます。
1番右は時間追跡アプリの例です。画面上部のドラムロール入力に加え、画面下部には「開始」と「停止」のアイコンをドラッグすることで開始時間と終了時間=継続時間を設定できるようになっています。
このように、ユーザーにとって最適な入力補助は、その入力内容や頻度、使用シーンによって異なります。
インタラクションコスト
インタラクションコストとは、ユーザーがシステムやサービスを利用する際に生じる、アタマと体の両方の負荷のことです。
複雑なナビゲーションや情報過多は「アタマの負荷」に、小さなボタンや固いボタンは「体の負荷」になります。インタラクションコストが高いとユーザーはストレスを感じ、システムやサービスの利用を避けるようになります。逆に、インタラクションコストが低いと、システムやサービスはユーザーにとって快適で使いやすく、満足度が高まります。つまり、良いインターフェースとは、インタラクションコストが少ないものを指します。
モードレスとモーダルの使い分け
画面設計においては、モードレスとモーダルの使い分けも重要です。モードレスとモーダルの違いは、以下の通りです。
- モードレス:タスクの途中で他の操作に移るなど自由な操作ができる状態
- モーダル:一定のタスクフローを終えるまで他の操作を受け付けない状態
上図左は「モードレス」の例で、Googleフォームの画面です。一方、上図右の閲覧画面と編集画面が別れているものは「モーダル」の例です。
それぞれ一長一短があるので、ユーザーの操作の重要度や誤操作の影響度によって適切に使い分けることが望ましいです。
- モーダル: データの重要度が高い場合や、ユーザーに特定の操作に集中させたい場合に最適。誤操作による影響が大きく、入力ミスをなるべく回避したい場合はモーダル画面が適している
- モードレス: 複数の情報を比較したり、並行して作業を進めたりする場合に最適。いちいち登録ボタンを押す必要がないため、モーダルより入力が楽
誤操作を防ぐための工夫
誤操作を防ぐための工夫についても見ていきましょう。
インタラクション設計ミスによる誤操作
ユーザーは情報を入力した後、システムからのフィードバック(応答)を期待します。
この応答が適切であれば、ユーザーは安心して操作を進めることができます。しかし、応答が曖昧だったり、遅延したりすると、ユーザーは不安になり、操作を誤ってしまう可能性があります。
上図の例では、ボタンにカーソルを合わせたときに色が変化したり、選択中の入力欄の色が変わったり、送信後に「送信が完了しました」というスナックバーが表示されたりと、入力と応答の繰り返しによって操作を進めることができています。
このように、ユーザーが迷わず安心して操作を進められるように、適切な入力と応答の設計が不可欠です。応答は、視覚的な変化やメッセージなど、様々な形でユーザーに伝えることができます。
ユーザーの行動を常に把握し適切な応答を返すことで、ユーザーの誤操作を防ぎましょう。
エラー時の適切な表示
また、エラー時の表示も重要です。
インターネット接続がない、更新中、システム都合などで表示できない場合、上図左のように「表示できませんでした」といったメッセージとともに、更新ボタンなどを配置し、ユーザーが次に何をすべきかを明確に示すことが重要です。
上図右のように、エラーが発生しているものの、ユーザーにどうすればいいか分からない状況に陥らせる表示は避けるべきです。
モーダルの閉じにくさ、意図しない動作、スライダーの操作ミスなど
誤操作につながる要因は他にもあります。
上図左の例では、モーダルのクローズボタンが小さく背景と同化していて見えにくいため、非常に閉じにくくなっています。上図中央の例では、スマートフォンの利用を想定していないため、小さなボタンが密集しており、ユーザーが意図しないボタンを押してしまう可能性があります。上図右の例では満足度を数的に表すのにスライダーが採用されていますが、細かい数字の選択がうまくいかずユーザーはストレスを感じてしまいます。
このように、最適な画面設計ができていないケースは少なくありません。UIデザインにおいては、ユーザーの視点に立って、操作性や視認性に優れたインタラクション設計を心がける必要があります。
共通概念とメンタルモデル
最適なUIを設計するためには、「共通概念」と「メンタルモデル」という二つの似た概念を理解しておく必要があります。
共通概念
共通概念とは、多くのユーザーが持っている、製品やサービスに対する一般的な理解や認識のことです。例えば、「ドアノブを回せば開く」「エレベーターのボタンを押せば目的の階に移動する」といった操作は、多くの人が共通して理解している概念です。「ゴミ箱アイコンは『ゴミを捨てる』」「フォルダアイコンは『ファイルを整理する』」といったアイコンも、共通概念に基づいています。これらの共通概念を意識することで、ユーザーを迷わせず、直感的に操作できるUIになります。共通概念から外れたUIは、ユーザーを混乱させ、誤操作の原因となります。
メンタルモデル
メンタルモデルとは、ユーザー自身が心の中に持っている、特定のシステムや製品に対する理解モデルのことです。共通概念が多くのユーザーが持つ認識であるのに対し、メンタルモデルは個々のユーザーが過去の経験や知識に基づいて作り上げるより個人的な理解です。例えば、「ドアノブを回せば開く」という共通概念を持っていても、ドアの材質や形状、開閉方向などはそれぞれのユーザーの経験によって異なるメンタルモデルを持つ可能性があります。上図は、ユーザーの体験や行動、思考、感情などが、メンタルモデルとして潜在意識に蓄積されていく様子を表しています。画面設計をする際には、ユーザーのメンタルモデルを理解することも重要です。
業界によっては特有の経験や概念があるため、それらを考慮し、共通概念とメンタルモデルを意識しながら、ユーザーにとって何が認識しやすいのかを探りながら画面設計を進める必要があります。
ラベルは必要か?:アイコンの誤認識問題
共通認識があるにもかかわらず、意外と誤認識が起こりやすい例として、アイコンの理解度が挙げられます。
- アットマーク: 「メール」と「リンク」の両方の意味を持つことがある。
- 四角形と矢印を組み合わせたマーク: 「共有」「新規ウィンドウ」「メニューの追加オプションを開く」など、いろいろな意味で使われる。
- ハートマーク: 「お気に入り」の場合と「いいね」の場合がある。
- フォルダマーク: フォルダを「開く」、「新規作成」、「整理」するなどの場合がある。
このように、アイコンのみでは意味が曖昧な場合、ラベルを付けることでユーザーはアイコンの意味を正しく理解することができます。ただし、ラベルを付けることでUIが煩雑になる場合もあるため、常にラベルが必要とは限りません。
重要なのは、ユーザーがアイコンの意味を正しく理解できるかどうかを考慮し、状況に応じてラベルの有無を検討することです。
ユニバーサルデザインの視点
ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、国籍などに関わらず、すべての人が使いやすいようにデザインすることを目指しています。しかし、文化や習慣の違いによって、同じデザインでも意味が異なる場合があります。
例えば、トイレの男女表記は日本では色分けが一般的ですが、国際的にはピクトグラムが一般的です。また、ベルのアイコンはアプリでは通知を意味しますが、ホテルでは呼び出し、工場では作業開始・終了を意味するなど、業界によって意味が異なります。ハートのアイコンも、SNSでは「いいね」ですが、ゲームでは体力、病院では心臓といったように、分野によって意味が異なります。
このように、ユニバーサルデザインを実現するためには、文化や業界による認識の違いを考慮し、誰にとっても分かりやすいデザインを心がけることが重要です。
世界標準と日本の違い:PlayStation 5の事例
世界と日本の違いという観点では、PlayStation 5の事例も面白いです。
日本では長年、〇ボタンが決定、×ボタンがキャンセルの操作が一般的でしたが、PlayStation 5では、世界標準に合わせて、〇ボタンがキャンセル、×ボタンが決定になりました。このため、従来の操作に慣れていた国内の多くのユーザーが混乱したという事例です。
このように、海外と日本では違いがあるため、グローバルな視点を取り入れたユニバーサルデザインでも、地域によっては混乱を招く可能性があります。デザインにおいては、常に多様なユーザーを想定し、必要に応じてローカライズやカスタマイズを行うことが大切です。
業界特有のUIの事例
私が経験した業界特有のUIの事例をご紹介します。
以前、工作機械メーカーの画面をデザインした際、通常は帳票画面のリスト上部に配置される検索やアクションボタンが下にあったり、通常は左側にあるメニューが右側に配置されていたりしました。
様々なメーカーの工作機械の操作画面を調査すると、これは業界的には標準的なレイアウトであることがわかりました。工作機械の操作画面はタッチパネルになっているため、右手で操作する際に手で画面が隠れてしまわないよう右端にボタンを配置したり、ユーザーが押しやすい画面下側にアクションボタンを置いていたりしていたという、理にかなった設定ではありました。
しかし、一般的なアプリケーションやウェブのガイドラインに沿って見直すと、かなり乖離があることが分かりました。そこで、私は一般的なUIに変更することにしました。
ユーザーがその変更に戸惑わないか、あるいは一般的なUIにすることで使いやすくなるのかを確認するため、実際にユーザーテスト(ユーザビリティテスト)を実施し、ユーザーの操作の様子を確認しながら設計を進めました。
結果として、工作機械のUIにおいても、普段使い慣れているスマートフォンや他の業務システムなど、一般的なユーザーが持つ感覚に合わせた方が使いやすいということがユーザーテストで明らかになりました。
デザインガイドラインに従う
デザインガイドラインは、ユーザーインターフェース(UI)を統一されたルールや原則でまとめたものです。
代表的なものとしては、AppleのHuman Interface GuidelinesやGoogleのMaterial Designなどがあります。多くのユーザーが慣れ親しんでいるデザインを採用することで、ユーザーは新しいアプリやウェブサイトでも迷わず操作できます。また、開発者にとっても、デザインガイドラインは開発効率を高め、品質を維持するのに役立ちます。
デザインガイドラインを積極的に活用し、ユーザーにとって使いやすいインターフェースを設計しましょう。
Apple Human Interface Guidelinesの例
AppleのHuman Interface Guidelinesの一例をご紹介します。
- ナビゲーションバー: 画面上部に配置し、アプリのタイトルや操作ボタンを表示する。
- タブバー: 画面下部に配置し、主要な機能へのアクセスを提供する。
- モーダルビュー:重要な情報を一時的に表示する際に使用し、ユーザーに特定の操作を促す。
- スワイプアクション:リストアイテムを左右にスワイプすることで、削除やアーカイブなどの操作を実行できるようにする。
このように、一つ一つのコンポーネントに対して細かくルールが明記されています。これらのルールに沿って設計することで、ユーザーが誤った使い方をしてしまうことを防げます。
Google Material Designの例
Material Designも同様に、AndroidデバイスやGoogle系のサービスに適用されるガイドラインを用意しています。
- モーダルビュー: 重要な情報を一時的に表示する際に使用し、画面全体を覆うように表示する。
- ドロワーメニュー: 画面の端からスワイプすることで表示され、アプリのナビゲーションや設定へのアクセスを提供する。
- スナックバー: 画面下部に一時的に表示され、ユーザーに簡単なメッセージや操作の確認を伝える。
- コンテキストアクション:リストアイテムなどを長押しすることで表示され、そのアイテムに対する操作を提供する。
こうしたデザインガイドラインを活用して、効率的に、ユーザーが迷わず操作できるUIを設計しましょう。
スマホごとに異なる指で操作しやすいエリア
スマートフォンの画面サイズは多様化しており、ユーザーが片手で快適に操作できる範囲も機種ごとに異なるため操作性が多様化しています。
上図では、iPhoneの代表的なモデルを例に、指が届きやすいエリアとそうではないエリアを可視化しています。このように、画面サイズによって操作しやすいエリアが異なるため、重要な操作ボタンやコンテンツは、ユーザーがストレスなく触れるエリアに配置する必要があります。
また、ユーザーが指を伸ばす必要があるエリアには、使用頻度の低い機能や、誤ってタップしても問題ない情報を配置するなどの工夫も有効です。これらの物理的な操作性も考慮して画面設計を行う必要があります。
理解のズレを防ぐ「やさしい日本語」の適用
ここからは少し趣を変えて、やさしい日本語についてお話しします。
やさしい日本語とは、外国人、高齢者、障害者など、日本語を母国語としない人や、日本語の理解が難しい人にも情報が伝わりやすいように配慮した日本語のことです。具体的には、以下の点に注意して作られます。
- 短い文: 一文を短くし、複雑な構文を避ける。
- 簡単な語彙: 日常的に使われる簡単な言葉を選ぶ。
- 漢字にルビ: 難しい漢字にはルビ(ふりがな)をふる。
- 明確な主語と述語: 文の主語と述語を明確にする。
- 具体例や図解: 必要に応じて、具体例や図解を用いる。
これは、最近注目されている「インクルーシブデザイン」の一つでもあります。
優しい日本語が注目される背景
なぜ今、優しい日本語が注目されているのでしょうか。
日本の人口は50年後に大きく減少すると言われています。特に東京では、20年後には10人に1人が外国人になると予測されています。東京に住む外国人は、この10年間で39.4万人(2014年)から64.7万人に増加しました。出身国は190カ国に及び、多国籍化が進んでいるため多言語対応には限界があります。
また、「外国人=英語」というイメージもあるかもしれませんが、日本に住む外国人の約8割は日本語での会話が可能であるという調査結果もあります。
東京都つながり創生財団の調査では、日本人の約6割が「優しい日本語」を知らないと答えた一方で、外国人の7割が知っていると回答しました。
そして、外国人の8割以上が、やさしい日本語での情報発信を希望していることが分かりました。
業務システムにおける「やさしい日本語」の必要性
業務システムにおいてやさしい日本語への対応急務とされているのは、建設業、製造業、サービス業、介護・医療などといった業種です。これは、外国人労働者の増加に伴い、安全管理や作業指示をやさしい日本語によって正確に伝えることが必要だからです。
やさしい日本語は、様々な業種で働く人々が安心して業務に取り組むために必要不可欠な要素になっています。やさしい日本語への対応は、人手不足の解消に貢献できると考えられていますので、将来的に、現在のシステムを外国人の方々に使っていただくためにも、今からやさしい日本語のポイントを押さえておくことが重要です。
業務システムにおける「やさしい日本語」の例
実際に業務システムでやさしい日本語を適用した例を見てみましょう。
変更前 | 変更後 |
---|---|
始業・就業時刻を登録してください。 | 出勤をしたら「出勤」ボタンを押してください。 退勤をしたら「退勤」ボタンを押してください。 |
所定のフォーマットに必要事項を記入し、申請してください。 | 休みを取りたい日は、カレンダーから選んでください。 休みの種類 (例:有給休暇、 sick leave)を選んでください。 理由を書いてください。(例:病気、旅行) 「申請」 ボタンを押してください。 |
このように、「所定」「必要事項」といった難しい言葉を避け、「何をしてほしいのか」を分かりやすい日本語で具体的に説明することが大切です。
適切なマニュアルの提供方法
ここからは、適切なマニュアルの提供方法についてご紹介します。
いくら使い勝手の良いシステムを開発しても、マニュアルの提供方法が適切でなければ、新しい社内システムが社員に浸透し、実際に活用されるのは難しいでしょう。そのため、マニュアルの提供方法をしっかり把握しておく必要があります。マニュアルは大きく静的ガイドとインタラクティブガイドの2つに分けられます。
静的ガイド
- 紙媒体のマニュアル::印刷された冊子やパンフレット
- PDFファイル:デジタル化されたマニュアル
- Webページ:オンラインで閲覧できるマニュアル
- ヘルプページ:システムに組み込まれたヘルプドキュメント など
インタラクティブガイド
- チュートリアル:システムの操作をステップごとに体験できるガイド
- オンボーディング:新規ユーザーにシステムの基本的な使い方を教えるガイド
- ガイドツアー:システムの主要な機能を順番に紹介するガイド
- ツールチップ:画面上の要素にカーソルを合わせると、説明が表示されるガイド
- チャットボット:ユーザーの質問に自動で回答するガイド
近年、静的ガイドよりもインタラクティブガイドの採用が増加しています。
静的ガイドは、紙媒体のマニュアルやPDFファイルなど、情報を一方的に提供するものです。一方、インタラクティブガイドは、チュートリアルやオンボーディングなど、ユーザーが実際に操作しながら学べるものです。
インタラクティブガイドは、ユーザーが能動的に学習できるため、理解度が高まりやすく、使い勝手も良いというメリットがあります。しかし、静的ガイドに比べて作成に手間がかかるというデメリットもあります。
重要なのは、製品やサービスの特性、ユーザーのニーズに合わせて、適切なガイドを選択することです。
現状、業務システムにおいてインタラクティブガイド(オンボーディングやガイドツアーなど)をしっかり取り入れているケースはまだ少ないのではないでしょうか。より良いガイドを作成するために、要件定義段階からしっかりとケアすることが大事になってきます。
オンボーディングUIの例
インタラクティブガイドにおけるオンボーディングUIの例をいくつか紹介します。
- ウォークスルー型: ログイン前やアカウント登録後に表示される、アプリの基本的な使い方をステップごとに紹介する画面。
- ツールチップ型: はてなマークやインフォメーションアイコンをタップすると、その機能の説明がポップアップで表示される。
- コーチマーク型: 画面上にオーバーレイ表示され、ステップごとにヘルプテキストが表示され、ユーザーが順番に操作を確認できる。
- モーダルダイアログ型: 重要な情報や確認事項をモーダルで表示する。
- チェックリスト型: ユーザーが確認すべき項目をチェックリスト形式で提供し、進捗を確認できるようにする。
- パーソナライズ型: ユーザーの行動履歴や属性に合わせて、最適なガイドを提供する。
このように、オンボーディングUIは多様化しています。様々な画面で最適なUIをインタラクティブガイドで表現することで、ユーザー体験を向上させることができます。
インタラクティブガイドの最新の流れ
近年では、インタラクティブガイドにおけるユーザーの行動データを収集・分析し、ガイドの改善や最適化につなげるサービスやプロダクトが増えています。多くのSaaSプロダクトが、自社プロダクトの利用状況を分析し、オンボーディングやガイドの改善に活用しています。A/Bテストツールなどを利用して複数のガイドパターンを比較検証し、より効果的なガイドを作成できます。例えばwalkme、pendo、Appcuesといったツールを使うことで、ユーザーの行動データを分析し、ガイドの改善に役立てることができるでしょう。
このように、より精度の高いガイドを検証しながら作り上げていくことが、現代のプロダクト開発における主流になりつつあります。
UX/UI設計・改善のご相談はNCDCへ
ここまで、業務システムの使いやすさを向上させるためのポイントを挙げてきました。デザイナーの方でなくても、すぐに実践できるポイントがいくつかあったかと思いますので、ぜひ取り入れていただけたら幸いです。
NCDCでは、業務システムUX/UIデザインをはじめ、UI改善のコンサルティングや、UXデザインを実践しながら学べるUXデザインワークショップなど、関連する幅広いサービスを提供しています。
デザインを外注していて十分なリソースが確保できていないプロジェクトを抱えるお客様に、UX/UI設計ノウハウをお伝えして「デザインの内製化」を支援した実績もあります。
新規システム開発、既存システムのUI改善、またはUIデザインの基礎知識の習得など、UX/UIデザインに関するご相談がある方はぜひお問い合わせください。
UX/UI設計・改善のご相談はNCDCへ
NCDCでは、UXデザインコンサルティングをはじめ、UXデザインを実践しながら学べるUXデザインワークショップなど、関連する幅広いサービスを提供しています。
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