IoTのビジネス活用事例 代表的なパターンとは?

公開 : 2022.05.13  最終更新 : 2022.05.16
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こんにちはCTOの十川です。
今回はNCDCが得意としているIoTシステムについて、代表的な3つのパターンと、各パターンの具体的な事例をご紹介します。
IoTシステムをご検討中の方はぜひご覧ください。

IoTをビジネスに用いるメリットとは?

はじめに、なぜ多くの企業がIoTを導入しているのか?どんなメリットがあるのか? という点を、IoT利用の代表的な3つのパターンを用いてご説明します。
(なお、この記事ではモノが直接インターネットにつながることを指す「IoT」だけに限定せず、モノとモノとがクローズドネットワークで通信する「M2M(Machine to Machine)」領域の話も一部含みます。)

IoT利用の代表的な3つのパターン

1.自動化、見える化
IoT利用のよくある目的の一つ目は「自動化、見える化」です。従来は何らかの人手を介してデータを収集し、集計作業などを行なっていたものを、IoTを用いた仕組みに置き換えることでデータ収集から見える化まで自動化していくようなケースです。
自動化によるメリットは作業効率の向上もありますが、人手を介さないことでデータ取得の正確性やリアルタイム性が向上するのも大きなメリットだと考えられます。

例えば、建設・製造の現場などではその過程で多くのデータを取って記録に残していますが、従来は現場にいる人しか見られなかったデータも多いと思います。
IoTで収集したデータをクラウド上で見える化することで、現場だけでなく本社や別の部署の方など遠隔地にいる人にもほぼリアルタイムで情報共有することが可能になります。

2.データ活用
よくあるIoT利用目的の二つ目は「データ活用」です。自動収集や見える化したデータを分析してオペレーションの最適化に役立てるというような、「見る」から一歩進んだIoTの使い方です。
IoTの活用はデータドリブン経営という最近流行りのキーワードにもつながっているといえます。

3.より良いUXの提供
三つ目は、いわゆるIoTとは若干毛色が違うのですが「ハードウェアだけでは提供できないより良いUXの実現」です。
もともとハードウェアが持っている機能や物理ボタン・操作画面などのUIに、IoT 経由の機能やUI(Webやモバイルアプリによる操作性の向上)を追加することで、ハードウェア単体では実現できなかった新しいユーザー体験を提供するというものです。

IoTの活用パターンごとの事例

続いて、これら代表的な3つのパターンを具体例を交えてもう少し詳しく解説していきます。

IoTによる「自動化、見える化」例

まず活用パターン一つ目の「データ収集の自動化、見える化」です。建設機器や工場の生産装置などからIoTの仕組みを利用してデータを収集するのは特に多いパターンではないでしょうか。
NCDCでもこのようなシステムの構築は多くの実績があります。

例えば、生産装置や建設機器にデータが記録されている場合、従来のデータ収集方法はSDカードを経由していて、定期的に機械からSDカードを抜いてPCにデータを移し、エクセルにコピペしたり、システムに登録したり、人の手で作業するケースが多いのではないかと思います。

IoTシステムを用いてデータを自動でクラウドに連携できるようになると、従来は1日一回・週に一回など手作業に依存した頻度でしか見られなかったデータが、随時リアルタイムで、しかも遠隔地からでも見える状態になります。
生産装置や建設機器から直接データを収集できる場合、もともと人手を介して集めていた仕組みを置き換えるだけでなく、そもそも人力では収集が難しかったデータを取れるようになる可能性もありますし、人手によるデータ収集と比べて正確性やリアルタイム性などの面でもメリットがあります。

ここまでは「データ収集の自動化」についての話です。

「見える化」については、使用者の環境に合わせてインターフェースを提供することが重要です。
例えば、建設や製造の現場の方が使うのであれば、机とPCが揃った環境ではないケースが多いので、その場合は、タブレットやスマホで簡単に実行できるモバイルのアプリケーションとして提供するのが向いています。

一方で、現場だけでなく遠隔地のオフィスなどでも同じデータを見られるようにしたいというニーズもあります。
現場向けにはモバイルアプリを提供している場合でも、オフィスで(PCに大きなデイスプレー、キーボードなども揃った環境で)使う方向けには、Webアプリケーションが適しています。
なぜならモバイルアプリは画面のサイズが限られており、データ入力などの作業をタップ操作で大量に行うのは厳しいので、そうした作業に関してはオフィスで操作しやすいUIを持ったWebアプリケーションを提供する方が効率的です。

「見える化」というテーマでは、リアルタイムでひとつの現場の状況を見る以外にも、俯瞰的に多くの現場のデータを分析するというニーズもよくあると思います。
その場合はBI(ビジネスインテリジェンス)ツールと呼ばれるものが向いています。データを蓄積するところまでは同じですが「ひとつの現場を詳しく見たい」と「多くの現場を俯瞰して見たい」では、集めたデータの使い方に大きな違いがあるので、見る方に応じて適切な届け方になるよう情報を加工する必要があります。

IoTを用いた建設現場の見える化(ミエルコウジ)

IoTによる「自動化、見える化」の具体例として、建設現場でお使いいただいているNCDCのプロダクト「ミエルコウジ」の仕組みをご紹介します。

ミエルコウジ」ではデータの収集方法は2つあります。

  • 建設機器についているセンサー・計測器のデータをIoTの仕組みを利用してDBに保存する
  • 担当者の方が人手で計測する

建設現場のデータ全てがセンサー・計測器を用いて取得できるわけではないので、人手を介する必要があるものはモバイルアプリで入力作業をしていただき、それらを合わせてDBに記録していきます。

記録したデータはモバイルアプリやWebアプリで見える化しているので、現場にいる方も、遠隔地(事務所や本社)にいる方も見ることができます。
また、建設プロジェクトには自社のスタッフだけでなく、発注者、協力会社のスタッフなどと企業間をまたいだ協力が必要な部分も多々あるので、他社のメンバーにもアカウントを発行して必要なデータだけを共有できる仕組みにしています。

図内に「品質管理書類」と書いてありますが、建設では社内の記録や発注者への提出が必要な書類が膨大にあるので、IoTで集めたデータと現場の施工管理者などが人手で入力したデータを用いて、必要な帳票を生成する仕組みになっています。
このようにデータの収集はもちろん、集めた情報を出力するところまでIoTシステムに組み込まれていると、業務効率化に大きく貢献できると思います。

IoTによる「データ活用」例

次は、活用パターン二つ目の「データの活用」についてです。
データ収集の「自動化・見える化」から一歩進んで、「データの活用」にも取り組むと、データに基づいた精度の高い計画を立てたり、現場作業のオペレーションを最適化したりすることが可能です。

もう少し具体的な例でご説明します。
同じ作業でも要領のいい方・そうでもない方がいたり、ベテランだけが経験として知っている暗黙知があったりして、業務効率にばらつきが出る問題はどんな仕事にもつきものだと思います。
IoTで収集したデータをもとに効率的な作業の示唆を与えるような仕組みを導入すれば、こうした課題を持つ現場のオペレーションを修正していくことができます。

IoTを用いた製造現場のデータ活用(自動車工場)

製造現場の「見える化+データ活用」の例として、NCDCでご支援した本田技研工業様の事例を紹介します。
工場内に「作業アシストダッシュボード」と呼ばれる大きなディスプレーを設置し、IoTを用いて収集した情報やそのデータを用いた作業指示をリアルタイムで表示する仕組みです。

まず背景から説明すると、この工場では従来、広い工場の中でご担当者が現場を歩き回って定期的に点検を行い、生産ライン上の情報収集を行なっていました。

詳細はここに書けないのでこの先は例え話での説明になりますが、ある装置に1,000回に一度交換しないといけない部品があったと仮定します。同じ生産装置が何台もあり、一号機は10分後、二号機は20分後に交換タイミングが来ると想像してください。

歩き回って目視点検しているときは、人によって次のような作業の違いが起きていました。

  • ある人は、一回生産ラインを止めてまず一号機の部品だけ交換。ライン再開後にしばらくするともう一度ラインを止めて、次は二号機の部品を交換する。
  • 別の人は、一度だけ生産ラインを止めて、一号機も二号機も同時に部品を交換する。

経験値から「そろそろこの近辺の装置は部品交換時期が来るので同時に作業した方が良い」と判断できる方もいれば、あちこち歩いて、単純に「今発見した交換すべき部品だけを変える」と判断している方もいて、結果的に人による生産性の差が出ていたのです。

「作業アシストダッシュボード」では、IoTの仕組みを使用して各生産装置からデータを収集して表示しつつ、何分後に部品交換のタイミングが来るというような情報まで画面上で提案しています。
ダッシュボードだけを見れば作業計画の示唆が得られるような仕組みをIoTシステムと併せて開発しているのです。

このように、IoTを用いて集めた情報がそのまま見えるだけでなく、そこから人間に何らかの示唆を与えられる仕組みを加えるのが「データ活用」の良い例だと思います。
発展形としては、IoTとAIを組み合わせて、収集したデータを用いてAIが自動的に学習し続け、より精度の高い予測を実現していくような仕組みも考えられます。

IoTによる「より良いUXの提供」例

最後に、活用パターン三つ目の「より良いUXの提供」についてです。
一般的に、工場や建設現場などで用いられるハードウェアには物理ボタンは数多くは付いていません。操作パネルが付いていても画面サイズはそう大きくないケースがほとんどで、その操作性は決して良いとはいえません。
そういったハードウェアをソフトウェア(モバイルアプリやWebアプリ)と連携させ、より良い機能や操作性を加えることで、新しいユーザー体験をお客様に提供するのがこのパターンです。

例えば、工場の生産装置は制御室などの特定の場所でコンピュータを操作して細かい制御を行うケースも多いと思います。この場合、生産装置の横に立って現場を目視確認しながら細かく設定を調整することは難しいです。
しかし、IoTやM2Mという技術を用いることで、従来は制御室に行かないとできなかった操作を手元のモバイル端末で行うことが可能になります。

モバイルアプリを用いた制御装置の操作

具体例として、NCDCでご支援したアズビル様のPoC事例を紹介します。

アズビル様が提供している制御装置は多い場合は何千もの設定パラメータを持つものもあるのですが、それを制御装置に付いている何種類かの小さいボタンだけで設定するのは難しいので、少し複雑な設定になると装置の近くにPCを置き有線で繋いで作業しているそうです。
今のところは設定を触るたびに現場にPCを持っていって作業するのが常識的なやり方だそうですが、アズビル様では、何千もあるパラメータの中でもよく使う設定については無線で繋いだモバイルアプリで簡単に操作できないかと検証を始められています。
そうすることにより、現場の作業者がケーブルをあちこちに繋ぎ変えたり、PCの置ける場所を探し回ったりする無駄な時間のない、新たなUX(制御装置の操作体験)を提供しようと試みられているのです。

モバイルアプリを用いた演奏体験の拡張

ここまでは主にBtoB領域の話を紹介してきましたが、「より良いUXの提供」はBtoC領域の方が力を入れて取り組まれるケースが多いと思うので、最後にNCDCでご支援した楽器メーカー様のコンシューマー向けサービスの事例を紹介します。

もともと電子ピアノのような電子楽器には小さな操作パネルがついていて、ユーザーはそこで音色を選んだり、リズムを設定したりするのですが、これをモバイルのアプリケーションと組み合わせることで、ハードウェアの持つUIだけでは実現できなかった新しいUXを提供するというプロジェクトです。

例えば、電子ピアノの練習をすると日々の練習履歴がモバイルアプリに自動で記録されて継続するのが楽しくなるとか、その履歴を他の人にも共有できるので誰かと一緒に励まし合って練習できるというような、従来のピアノというハードウェアだけでは提供できなかった新しい使用者体験を提供しています。

また、ギターのエフェクターと連携するモバイルアプリもあります。ギターのエフェクターは小さなハードウェアに付いているツマミやスイッチで演奏中に音の設定を切り替えるのですが、この方法では複雑な操作を瞬時に行うのは難しいといえます。
これもモバイルアプリと連携させてよく使う設定などをプリセットしておくことで、数多くの複雑な設定があっても演奏中に片手でパッと切り替えることが可能になります。

こうしたハードウェアとモバイルアプリを組み合わせることで新しい価値(今までにないUX)を提供しようという企画は、ハードウェアの次世代機を開発するときに考えられて、まずプロトタイプを作ってみるようなケースが多いと思います。
NCDCはUXデザイン、モバイルアプリの開発、ハードウェアとスマートデバイスの連携方法の検討など、こうした企画に必要な機能をワンストップで提供できることがひとつの特徴なので、これから具体化に取り組みたいという方はぜひご相談ください

IoTのご相談はNCDCへ

IoT利用の代表的な3つのパターンとして「自動化・見える化」「データ活用」「より良いUXの提供」を紹介しましたが、同じようなパターンの中でも少し違うやり方をしているケースや、複数のパターンを組み合わせているケースもあると思います。
この3分類は、あくまでもIoT利用のメリットをわかりやすくする説明するためのものと捉えてください。
実現したいこと次第で選ぶべき機器、使用する技術などさまざまな要素も違いが出てきますので、IoTの企画に新たに取り組む際はパターンに捉われず自由に考えてみることも大切です。

NCDCなら、IoTを用いて何が実現できるのかアイデアの検討段階からご支援が可能です。IoTの導入をご検討中の方は、こちらのフォームからお気軽にご相談ください

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