UXとCX(カスタマー・エクスペリエンス)。その違いを考える

公開 : 2015.10.26  最終更新 : 2025.04.14
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2015年にこの記事を書きましたが、言葉の定義も変化してきていますので、改めて内容についてアップデートしたいと思います。近年、UXとUIの違いや共通点については、UX/UI関連の仕事に携わる方の間では理解が進んでいるかと思います。一方でCXという言葉はUXの文脈ではあまり聞かなくなってきた印象です。以下で解説しているUXとCXの違いですが、2025年現在ではCXの部分もUXとして語られることが多くなってきたように思います。あえてCXという言葉を使わずともUXの概念として考えることが多くなっている、つまりUXの範囲が広がり、CXを包含するようになってきている印象です。
一方でCXは、最近は別の意味で使われている事が多いです。企業ではコールセンター、コンタクトセンターの業務をCXセンターとして定義していることが増えました。従来電話のみの対応窓口がコールセンターでした。そこからメールやチャットなどの顧客対応手段が多様化し、コンタクトセンターと呼び名が変化しました。そして、最近はオンラインのサービスが増える中、従来のコンタクトセンターこそが顧客との唯一の接点となることから、ここで与える体験を重視しCXセンターと名付ける企業が増えたのが現状かと思います。

以下の説明は本来的なUXとCXの違いの説明ですが、

  • 2025年現在では、以下の説明のCXについてはUXとして語られることが多い。
  • 一方でCXはコンタクトセンターの次なる進化として、CXセンターとして使われる場合も多い。

ということを頭の片隅に入れながら読んでいただければと思います。

対象数の違い

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UXはウェブサイトやアプリ、電化製品など、単一のシステムや商品、モノなどを対象として、それらのエクスペリエンスを高めるための概念であると考えることができます。UXを最適化するための手法をUXデザインと呼んでおり、成果物がシステムUIや製品のUIになったりします。
CXは対象が複数です。カスタマーがウェブサイト(UXの対象物)でコールセンターの電話番号を調べて、そこからコールセンターに電話して、コールセンターの対応(UXの対象物)に対して不満や満足を感じる。といったカスタマーの一連の動きの中で接する(タッチポイント)複数にまたがるエクスペリエンスを高めるための概念であると考えることが出来ます。
現時点での分かりやすい違いの一つとして紹介しました。我々は少し前までは「狭義のUX」「広義のUX」という使い分けをしていましたが、「広義のUX」のことを最近はCXと呼んでいるようです。

対象の種類による違い

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UXはウェブサイトであったりアプリ、製品であったり何らかのソフトウェアやプロダクトが対象になることがほとんどのようです。一方、CXはウェブサイトやアプリといったプロダクトだけでなく、コールセンターの対応やリアル店舗での接客など、人に関するものも対象となっています。ここでもCXの方が広い範囲の定義となります。
ここまでは単純なUXとCXの違いと定義から考えてみました。我々はUXやCXのコンサルティングを行ってきていますので、その視点から実行上の違いを書いてみたいと思います。

必要な組織の違い

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UXは対象物が一つですので、企業が実現しようとした場合、その対象物を所有している組織一つの合意が得られれば進められます。一方、CXは顧客の視点から見て、一連のタッチポイント全てが対象であり、その一貫性を作る必要があります。従って、それぞれのタッチポイントを主管する組織の合意が必要になります。多くの企業のCXのコンサルティングを行ってきた経験から、それらの複数組織を横串でリード、調整をする組織が必要だと考えています。日本では顧客戦略部門やCRM部門などがリードしていることが多いです。2015年Enterprise UXカンファレンスにて米国Citrix社の取り組みを聞いたことがあるのですが、彼らはCustomer Experienceという組織やCustomer Experience担当VPなどを設置しているそうです。

構築期間の違い

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UXは対象物や組織が一つの場合が多いため、実現に特別な時間を要しません。例えば、あるシステムがあったとして、UXを何も考えない機能ベースで作ったシステムよりは時間がかかるでしょう。いわゆるUXデザインのプロセスが追加されます。CXは対象物や組織が複数に跨がりますし、PDCAを回しながら、常に改善活動をしていくことになるでしょう。従って、CXを実現するためには、ロードマップが必要になります。
さて、UXは短期間で実現可能、CXはロードマップによる段階的な実現となると、UXとCXの関係性が見えてくると思いませんか?
そうです、CXのロードマップの中の一つの段階がUXになることが多いのです。CXはUXを包含していると考えても良いでしょう。

コンサルティングなどサービス提供者としての違い

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UXデザイン等、UXの取り組みの最終成果物はUIとなるので、従来からUI制作を行っていたデザイン会社が提案して、UXデザインからUI制作を行うことが多いでしょう。どのようなビジネスでも上流工程から参画することを目指すわけで、そういった意味ではデザイン制作をしていた会社がUXデザインを取り込んでいくのは自然な流れでしょう。
一方CXは顧客戦略もしくは経営戦略からの施策であり、CRMシステムや顧客データ統合システムなど、基幹システムの知識、オペレーション教育や人員配置などの検討も必要になるため、コンサルティング会社などが提供することが多いでしょう。
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NCDCはビジネスコンサルティグからCRMのコンサルティング、データ統合のコンサルティング、デザイン制作までやっていますので、CXからUXまで手がけています。CXという言葉が認知されるまで「広義のUX」という名前でCXのコンサルティングも数多く行ってきました。また、組織横断というものがCXプロジェクトの肝になります。NCDCではSOAやデータ統合など、ITコンサルティングでも組織横断なプロジェクトを数多く実現してきていますので、そういったノウハウを活用してCXコンサルティングを提供しています。

 

早津 俊秀

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