iOSアプリリリースのポイント

公開 : 2015.10.28 

次に、アプリの配布形態についてまとめてみます。
 
配布の話を始める前に、前提知識としてDeveloper Programのメンバーシップ形態について説明しておかなければなりません。

Developer Programのメンバーシップ形態

iOSアプリを開発・配布するためには、Appleが提供するDeveloper Programを契約(購入)しなければなりません。
Developer Programの契約形態には次の4つがあります。

  • iOS Developer Program(個人)

    個人、または個人事業主の場合のメンバーシップ形態です。
    年間登録料:$99

  • iOS Developer Program(法人)

    法人としてプログラムを利用する場合のメンバーシップ形態です。D-U-N-Sナンバーによる法人登録と、審査が必要です。アプリの販売に法人名が利用可能です。
    年間登録料:$99

  • iOS Developer Enterprise Program

    法人として従業員にのみ配布するアプリを作成する場合のメンバーシップ形態です。D-U-N-Sナンバーによる法人登録と、審査が必要です。AppStoreに公開せず従業員にアプリを配布することが可能です。
    年間登録料:$299

  • iOS Developer University Program

    iOS用の開発をカリキュラムに取り入れることを検討中の高等教育機関のお客様を対象とした、無料のメンバーシップ形態です。教職員や学生はだれでもApple製デバイス用のアプリの開発とそれに必要なリソースの利用が可能です。
    年間登録料:無料

アプリの配布形態

目的に合わせて幾つかの配布形態が用意されています。

  • Development(開発用配布)

    開発中に実機に配布する形態です。Xcode端末と有線で接続してインストールする必要があります。

  • AdHoc(評価用配布)

    開発中のアプリを複数の実機端末に評価用に配布するための形態です。AppStoreを介さずに、最大100台の実機端末に配布可能です。アーカイブしたipaファイルを各端末に配布します。配布対象端末のUDIDをMemberCenterにて管理する必要があります。

  • In-House(組織内配布)

    組織内だけで利用するアプリを対象の組織のみに配布するための形態です。契約している組織内だけに限り、AppStoreを介さずに、台数無制限で配布可能です。アーカイブしたipaファイルを各端末に配布します。AdHocとは異なりMemberCenterでのUDIDの管理は不要です。ただし、契約主体法人以外にアプリ配布があった場合はiOS Developer Programのライセンスを取り消され、法的な罰則が課せられます。

  • AppStore(一般公開)

    Apple Storeにアプリを公開し、iOSユーザー全てに一般公開する配布形態です。特定ユーザー、組織への配布という設定は不可能です。

  • VPP(Volume Purchase Program)

    第三者が特定の組織に限定したアプリ(カスタムB2Bアプリ)を配布する場合の配布形態です。詳細は後述。

VPP(Volume Purchase Program)

システム開発者が特定の企業向けに開発したアプリを配布するにはVPPを利用する必要があります。
一般的にSIerがDeveloper Programに登録していない特定の顧客企業からアプリ開発を受託して開発した場合に、その企業だけにアプリを配布する場合に利用します。

VPPには以下の様な特徴があります。

  • Appleが用意した専用ストア(VPPストア)でアプリを配布可能
  • VPPストアはVPP契約者毎にプライベートなApp Storeが用意され、契約者が発行したアカウントを持った人だけがアクセスできるようになる
  • 企業に導入されたMDMソリューションとの連携も可能
  • アプリ提供者はiOS Developer Programへの登録が必要
  • アプリ利用者はVPPへの登録が必要
  • 登録は無料だが、D-U-N-Sナンバーによる法人登録が必要

VPPによるアプリ配信の仕組
iOS_AppRelease_VPP
 

配布形態のユースケース

先に述べたように、契約しているメンバーシップ形態に応じて、利用できる配布形態が異なります。
その相関関係をまとめたものが下記の図になります。
iOS配布形態ユースケース@2x
 
この相関関係を踏まえた上で、ユースケースに応じた配布形態を整理してみます。

  • 自社で社内アプリを作成・配布する
    • 配布対象デバイスが100台以内の場合、AdHocで配布
    • 配布対象デバイスが100台以上の場合、In-Houseで配布
  • SIerが特定の顧客企業内で利用されるアプリを作成・配布する
    • 顧客がiDPに登録していない場合は、VPPを利用
    • 顧客がiDPに登録済みの場合は、iDPに開発メンバー登録させてもらいAdHocかIn-House形態で配布
  • SIerが特定の顧客企業が一般公開するアプリを作成・配布する
    • 顧客名義でアプリを配布する場合は、顧客にiDPに登録してもらい、App Storeで配布
    • SIer名義でアプリを配布しても良い場合は、SIerでiDP登録し、App Storeで配布

ipaファイルのOTA配布

iOSアプリをアーカイブして作成したipaファイルを配布するには、AppStoreを利用せずに配布する方法は、AdHocやIn-Houseが利用されます。
ただし、通常、作成したipaファイルは、端末をPCに接続しiTunesやiPhone構成ユーティリティを使ってインストールする事になります。
この方法だと、遠隔地にある複数の端末にipaファイルをインストールするにはとてもコストがかかります。
この問題を解決する方法として、OTA(Over The Air)という仕組が有ります。

OTA配布の仕組

OTA配布では、インストール用のplistファイルを作成し、ipaファイルと一緒にWeb上に公開する事で、端末からはそのURLにアクセスするだけでアプリをインストールする事ができるようになります。
具体的には、以下の様な専用のURLスキームを利用してiOSからURLリンクを叩く事になります。
 urlの例 : itms-services://?action=download-manifest&url=<plistのURL>
メールなどで上記URLを連絡し、端末ユーザーにリンクを実行してもらうことでインストールを促します。
多くのMDM製品は、このOTA配布を利用して、AdHocやIn-House形式で作成したipaファイルを配信し、リモートからインストールするようにしています。

以上がアプリの配布形態についてになります。
最後のページでは、Apple審査のポイントについてまとめたいと思います。

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