当社が実際に関わった「PoCの成功例」を踏まえて、PoC成功のための2つのポイントをお伝えします。
目次
PoCとは?
PoCとはProof of Conceptの略称で、日本語では「概念実証」とも訳されます。
新しいプロジェクトを本格的に稼働させる前に、それが本当に実現可能かどうかを、技術的な観点やビジネス面での効果から検証する取り組みを指します。
何のためにPoCをやるのか?
PoCの目的は新技術導入時の検証だけとは限りませんが、ここではわかりやすい例として、新技術導入のためのPoCを中心に説明します。
AI/IoT/ARなどの新しい技術を活用する前例のない取り組みは、いくらアイデアが優れていたとしても、実際に想像通りの結果が得られるのか、技術の導入にどれだけのコストがかかるのかなどの点で予測が難しく、不確実性が高くなります。
多くの資金をつぎ込んだ後で「アイデアは良かったけど、思うような結果が出なかった」「結果は出たけどコストがかかりすぎて継続できない」などという事態に陥ると損失が大きくなってしまいます。
PoCによって技術検証を行うとともに、投資判断の材料も得ることができるので、うまくいかないところがあれば大きな投資をはじめる前の段階で改善に取り組んだり、撤退を決めたりできるようになります。
よくあるPoCの失敗
しかし、PoCをやること自体が目的化してしまい、目的やその後の計画が曖昧なまま進めてしまうケースも意外と多いようです。
AI/IoT/ARなどの新しい技術の活用例と、その導入手法としてスモールスタートで迅速にビジネスの検証を進めるというやり方が広く知られた結果、「とりあえずAIを使って何かPoCをやってみたい!」という見切り発車的なケースも増えてしまったようです。
ビジネス誌などでは「PoC疲れ」という言葉もよく使われています。
中には、PoCというかたちで検証しなくても判断材料が得られそうなものまで、わざわざPoCを行なっている例もあるようです。
PoC疲れとは
意気込んでPoCに取り組んではみたものの、失敗例ばかりが続き、PoCを実施するための慣れない作業だけで関係者が疲れ切ってしまって、肝心の「検証後のステップ」に進められない状態に陥ってしまうこと。
このように、多くの意欲的なプロジェクトがPoC段階で失敗に終わってしまい、サービス提供の実現まで至らなかったため、PoCは非常に難しいと考えられている企業も多いようです。
PoC成功のための2つのポイント
NCDCでは、AIやIoTを使ったいくつかのPoCプロジェクトをご支援した経験があり、その中には、本格的なプロジェクトの展開まで進んだ事例もあります。
そうした経験を踏まえて、当社が考えるPoC成功のための2つのポイントをお伝えします。
1.PoCのゴールと、達成後の予算や体制も決めておく
PoCのゴール、何が達成できたらOKとするのかをしっかりと定義しておくことが大切です。また、PoCのゴール後の計画も立てておく必要があります。
PoCの計画例
機械学習による画像診断で80%以上の精度をクリアしたら次のステップとして〇〇に進める
アイデアが良いのに続かないケースでは、その後の計画(体制や予算など)が決められておらず、「PoCの結果を踏まえて考えよう」という取り決めにされていることがよくあります。
また、PoC後の普及に向けて人材や権限が割り当てられていないために、その後が続かない事例も何度かありました。
PoCでそれなりの結果が出たとしても、関わっていた人たちが通常業務に戻っていってしまい、その後が進まなくなるのです。
一方、成功している例では、そのプロダクト、サービスに権限を持った担当者がPoCに関与しており、PoCの成果を踏まえて社内・外の関係者にそのコンセプトをしっかり紹介し、説得しながら導入していくという努力も行なっています。
成功するPoCは…
- PoCのゴールが明確
- PoC後の計画も事前に立てられている(PoC後に一から考えるのはNG)
- 権限を持った担当者が付き、社内・外に導入を促すことができる。
2.PoCのためのPoCはNG。現場で使いフィードバックを得る
PoCのための限定的な場だけでなく、できるだけ多くのリアルな現場で使いフィードバックを得ることが大切です。
PoCの準備例
まず工場Aの一角でAIを用いたエラー検出の1stPoCを行う。1stPoCと並行して、ある程度成果が出たら次は工場B/C/Dでも試してもらえるよう手配を進めておく(興味を持ちそうな関係者をあらかじめ探しておく)
PoCプロジェクトのコアメンバー以外に、社内に新しいプロダクト、サービスを使ってくれる協力者(アーリーアダプタ)を探し、その人達を巻き込みながら成功事例をつくっていくのです。
協力者と実際の現場で試行を繰り返し、得られたフィードバックをすぐに改善に活かすという取り組みをしていたケースでは、その取り組み自体が社内の注目を集め、現場への普及にも貢献するという効果が見られました。
また、この場合も「ポイント1」で説明したように、プロダクト、サービスを継続的に改善するための体制と予算を確保しておく必要があります。
せっかく現場からのフィードバックを得られても、それがいつまでも改善されずにいたら協力者を増やすことはできないためです。
失敗例としては、PoCに関わっている企画やITのチームが事業部や工場など現場側に話を持っていくことができず(もしくは協力してもらえず)、ほとんど机上の試行錯誤だけで終わってしまうケースがあります。
こうなると、アイデアは良かったとしても何のための取り組みなのか意義がわからず、「PoCのためのPoC」だけで終わってしまいます。
成功するPoCは…
- 検証のための場ではなくリアルな現場で使いフィードバックを得ることを重視
- 現場の協力者(アーリーアダプタ)を巻き込みながら進める
- 現場のフィードバックを活かして継続的に改善する体制と予算を確保している
NCDCのPoCサポート
NCDCでは、上記のような「成功するPoC」をサポートするために、スモールスタートで効果や技術的実現性の検証を行えるPoC(コンセプト実証)サービスを提供しています。
サービス開発のコンサルタント、先端テクノロジーに詳しいエンジニア、UX/UIデザイナーなど、それぞれ専門スキルをもったメンバーがプロジェクトに参加し、企画から実施、改善のプロセスまで幅広くお客さまサポートしますので、PoCをご検討中の方、今のやり方を改善したい方はぜひご相談ください。