先日、当社がソフトウェアの開発をご支援している日本ヒューム様が、国土交通省の関係者や協力会社などに向けて施工管理遠隔化技術を解説する「建設機械施工の自動化・遠隔化技術の現場検証」を開催され、NCDCのメンバーもお手伝いしてきました。
日本ヒューム様は下水道管や雨水対策に用いられるコンクリート製品のヒューム管の国内トップメーカーであり、既製コンクリート杭や壁高欄などのプレキャスト製品の製造販売や、それに付帯する工事の請負事業も行われている企業です。
目次
建設機械施工の自動化・遠隔化技術の現場検証とは?
国土交通省では、建設現場の生産性向上の取り組みとして、2016年度より、ICT施工をはじめとする「i-Construction」の取組を進めています。2024年に発表されたi-Construction 2.0では、少なくとも3割の省人化を実現し、生産性を1.5倍まで向上させるという目標を掲げています。
i-Construction 2.0では、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上することを目指し、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱として、建設現場で働く一人ひとりが生み出す価値を向上し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指して、建設現場のオートメーション化に取り組みます。
国土交通省WEBサイト「「i-Construction 2.0」を策定しました」より引用
この現場検証は、国が建設業のDX推進策のひとつとして「自動施工における安全ルール」の策定を進める中で、標準的な機能要件や現場適用に向けた効果と課題を検証することを目的として行われています。
人口減少や少子高齢化に伴う担い手不足の深刻化が懸念される中、建設現場の抜本的な生産性向上、働き方改革の実現に資する技術の一つとして、建設機械施工の自動化・遠隔化技術が期待されています。
建設機械施工の自動化・遠隔化技術は施工現場から人がいなくなるという点で新しい領域であるため、安全や品質、施工管理、技術開発等に係る新たなルールが必要となります。
国土交通省WEBサイト「建設機械施工の自動化・遠隔化技術現場検証」より引用
現場検証におけるNCDCの役割
上記の通り、建設機械施工の自動化・遠隔化技術の現場検証は国の取り組みですが、国土交通省が民間企業の協力を得て実施しています。
今回は、日本ヒューム様が「建設における自動施工機械・遠隔施工機械に関する技術」「自動施工機械・遠隔施工機械に必要となる要素技術」を持つ民間事業者として現場検証の実施者に選ばれたため、私たちはそのお手伝いで現場に同席しました。
現場検証は、試験場で模擬工事を行いながら、その施工データをクラウド上のソフトウェアで遠隔監視する実演を交えて行われます。そのため、現場検証実施中に万一ソフトウェアに問題が生じた場合に備えて、NCDCのエンジニアがサポート役として同席しましたが、現場検証はまったくトラブルなく無事に終了。
せっかくの機会なので、同席したUX/UIデザイナーなどのメンバーも一緒に施工の現場と、国土交通省の関係者や協力会社向けの説明会を見学させていただきました。
建設DXのポイント
ここからは、現場検証の模擬工事実演中に解説いただいたポイントを踏まえて、ICTを用いた施工管理システムにより建設現場にどのような効果がもたらされるのかをご紹介します。
なお、日本ヒューム様が保有されているシステムの機能やUIの詳細をここで開示することはできないため、少し抽象化して「建設業界のDXに期待される効果」というイメージでいくつかご紹介します。
安全性の向上
建設現場では、法律や業界のガイドライン、企業ごとの規定など、守るべきルールが数多く存在しており、各種ルールを遵守し、施工記録を正確に残す必要があります。
また、施工の途中で監理(主任)技術者が確認すべき項目が定められているケースもあります。
そのため、従来の建設現場では建設機械に設置された装置でデータを確認したり、施工の状態を現場まで目視確認しに行ったりする必要がありました。
ICTを活用することで、以前は現場で目視確認していたデータを離れた場所から確認したり、即時クラウドにアップされる現場の写真で遠隔地から現場のようすを確認したりできるようになります。
こうした技術により、従来は人間が大型の建設機械に近づかなければできなかった確認業務を遠隔化し、工事を中断せずに進められるようになります。
この点から、ICTを用いた施工管理技術は安全性の向上と施工の効率化に貢献するといえます。
施工状況の即時見える化
ICTを活用することで、遠隔地にいる工事関係者にもほぼリアルタイムで、現場の詳細なデータを伝えることができます。
以前は、建設現場の施工管理責任者は日中ほとんど現場にいて、現場業務を終えたら事務所へ戻り書類をまとめるという働き方が当然のものとされていましたが、施工状況を遠隔地でも確認できるようになると現場と事務所を行き来する回数を減らすことができます。
承認の遠隔化
工事の種類にもよりますが、建設現場では施工の途中で監理(主任)技術者が確認すべき項目が決められていることがよくあります。従来は施工が一定の段階まで進んだら監理(主任)技術者の承認を得るまで工事を中断する必要がありました。
施工状況を即時見える化するシステムと承認機能が揃っていれば、承認者が常時現場に張り付いていなくても適時確認・承認を行うことが可能です。
監理(主任)技術者は確認のタイミングが来るのを現場で待ち続ける必要がなくなりますし、現場の方も承認を得るまでの待機時間を減らし、残業の要因となる非効率的な時間を削減することができます。
業務の標準化
先に、建設現場には「法律や業界のガイドライン、企業ごとの規定など、守るべきルールが数多くある」と紹介しましたが、各ルールに則り業務を進めるためにはさまざまなルールの理解や、正しい手順で滞りなく現場の進行を管理できる経験が求められます。
とはいえ、人手不足の昨今、経験豊富な施工管理者を全ての現場に配置するのは難しいため、経験や勘に依存しない業務の標準化は欠かせません。
ICTを用いた施工管理システムを導入した場合、事前に管理の手順をシステムに登録しておけば、システム画面に表示された手順に従って業務を遂行できるため、経験の浅い方でも正しい手順で管理を行いやすくなります。
帳票類の作成効率化
施工管理に必要なデータや現場で撮影した写真などをクラウドに収集しておけば、管理のために必要な各種帳票を簡単に作成できるようになります。
これにより、現場の人員が現場業務を終えたら事務所へ戻り書類をまとめるという作業を削減することができます。現場業務後の事務作業の多さは建設業界の長時間労働の原因のひとつと考えられており、帳票類の作成効率化は働き方改革に貢献するものとして期待されています。
データ連携
建設DXに欠かすことのできないBIM(Building Information Modeling)の活用が進んでいる場合は、施工管理システムにデータ連携機能を用意することでリアルタイムの現場データ(進捗状況や検査記録などの施工管理情報)をBIMデータの該当箇所に記録させることも可能です。
現時点ではまだ設計から竣工まですべてのデータをデジタル管理するような標準的な手法は確立されておらず、各社がそれぞれデジタル活用による効率化に挑戦しはじめているのが実情のようですが、将来的には標準的なデータ連携の方法を確立して、企業の垣根を越えた業界全体の効率化に貢献することも期待されています。
最大60%程度の作業時間削減効果が期待される
安全性の向上、業務の標準化などいくつかのポイントをご紹介してきましたが、総合するとやはり作業が効率化できて、従来よりも少ない人数、短い時間で工事を進められることが建設DXの大きなメリットではないでしょうか。人手不足や働き方改革への対応を迫られる建設現場では、まさに喫緊の課題として取り組む必要があるポイントです。
日本ヒューム様のご説明によると、現場検証で行った工事の場合は施工管理システムを用いた施工に熟練してくれば、従来の方法と比較して最大60%程度の作業時間削減効果が期待されているそうです。
DXのご相談はNCDCへ
今回は、日本ヒューム様が建設DXの分野で先進的な取り組みをしていることから国土交通省の現場検証に選定され、システム開発のパートナーである私たちもその現場に参加させていただきました。
NCDCは、このようなデジタル活用の先進的な取り組みをされている企業をサポートした実績が豊富にあります。とくにモバイル、クラウド、IoT、AIなどの新しい領域の技術を取り入れたシステムの開発に企画段階から参画し、検証から開発・運用までサポートできるのが特長です。DX推進のパートナーをお探しの方は、ぜひご相談ください。