資料公開|DXに必要な人材とは? 〜DX推進に必要なスキルと人材育成方法〜

公開 : 2025.07.10  最終更新 : 2025.10.20
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2025年7月10日にオンラインセミナー『DXに必要な人材とは? 〜DX推進に必要なスキルと人材育成方法〜』を開催いたしました。
この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントを解説しています。

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1. DXの現状と課題

DXとは何か?

まず、そもそもDXとは何でしょうか。経済産業省「デジタルガバナンス・コード 3.0」では下記と定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

この定義から、単なるツールの導入や、紙の電子化といった部分的なデジタル化ではなく、ビジネスモデルや企業文化そのものを変革し、競争力を高めることがDXの目的であることがわかります。DXの重要性は広く認識され始めており、多くの企業がすでに行動を起こしています。

実際、「DX動向調査2024」によれば、日本企業におけるDXへの取り組みは着実に浸透してきており、特に大企業(従業員1,000人以上)では9割弱が全社的にDXに取り組んでいます。

日本企業のDX推進状況

取り組みが進む中でも、成果を実感している日本企業は2023年度で6割程度にとどまります。これは、約9割が成果を実感しているアメリカと比較すると3割ものギャップがあり、日本のDXにおける大きな課題となっています。

なぜDXが進まないのか

DXが進まない最大の理由として、多くの企業が「知識・スキル・人材の不足」を挙げています。

では、なぜDXを担う人材やスキルは不足してしまうのでしょうか。主な原因は、次の3点に集約されます。

  • 求められるスキルの高度さ: DX推進者には、テクノロジーの知識だけでなく、ビジネスモデルや顧客体験までを理解し、それらを融合させる複合的なスキルが求められます。体系的な学習と経験が不可欠となるため、人材の確保・育成の難易度が高くなっています。
  • 学習時間の不足: 多くの企業で、従業員は既存の業務に追われており、新しいスキルを体系的に学ぶための時間を確保することが難しいという現実的な課題があります。
  • 既存人材との専門性のギャップ: 開発エンジニアは技術力は高いものの、ビジネスへの理解や交渉の経験が不足しているなど、個々の専門性が高くてもDX推進に必要なスキルセットの一部が欠けているため、そのギャップを埋める必要があります。

要するにDX人材の不足とは、単に「人がいない」という問題だけでなく、スキルの高度化や学習時間の不足といった、企業が内部で抱える構造的な課題が関係しています。これに加えて、DXそのものに対する「誤解」や「思い込み」も、推進のブレーキとなっています。

DXにおけるよくある誤解

DX推進には、多くの企業が陥りがちな、代表的な3つの「誤解」があります。

  • 「デジタル化=DX」という誤解: ツールの導入を目的化せず、あくまでビジネスモデルの変革がDXの目的です。
  • 「エンジニアを雇えばDXが進む」という誤解: システムを開発するだけでなく、戦略策定や組織変革の視点を持ち、社内外のステークホルダーと調整できる人材が必要です。
  • 「DX人材は外部から採用すればよい」という誤解: 優秀なDX人材の外部採用は簡単ではなく、自社の文化や事業に完全にマッチするとは限りません。外部採用に過度に依存するのではなく、今いる社員の能力を再開発し、社内で人材を育成していく視点が不可欠です。

DXは経営ビジョンから始まる

DXを真の成果に繋げるには、DXを一部門の取り組みではなく、全社的な経営課題として捉え直すことが必要です。

経営トップが明確なビジョンを掲げ、戦略を策定・実行し、その過程では「あるべき姿」と「現状」のギャップを常に把握し、社内外の多くの関係者と対話を重ねることが不可欠です。DX推進担当者は、この壮大なプロセスの全段階に関わるため、高度なスキルが求められ、業務の難易度も高くなるのです。

2. DX推進に求められる5つのスキル

本セクションでは、DX推進に特に重要となる次の5つのスキルを具体的に解説します。

  1. ビジネス構想力・変革力
  2. 顧客理解力・UXデザイン力
  3. テクノロジー適用力
  4. プロジェクトマネジメント力
  5. コミュニケーション力

1. ビジネス構想力・変革力

新規事業の立案でも既存事業の変革でも、ビジネスモデルの検討は必要不可欠です。デザイン思考などの手法を理解し、周りを巻き込みながらファシリテーションする力が必要になります。

新規事業創造のプロセス

ブレインストーミングでアイデアを発散させ、フレームワークを用いて収束させます。その後、SWOT分析などを行いアイデアを可視化し、ビジネスモデルキャンバスで事業性を検証します。さらに顧客ニーズを深掘りし、最終的に事業計画を策定します。

既存事業変革のプロセス

3C分析やSWOT分析で現状と市場動向を調査し、変革の方向性を定めます。その後ロードマップを策定し、施策を実行します。施策実行にあたっては、カスタマージャーニーマップなどを用いて顧客視点でサービスを具体化し、システム開発へとつなげます。

これらのプロセスで重要になるのが、特にUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインです。顧客価値を最大化するため、ユーザーになったつもりで考えることが求められます。

2. 顧客理解力・UXデザイン

UXデザインでは、事業者視点(事業として成立するか)と使用者視点(ユーザーは本当に使ってくれるか)の両方を持つことが重要です。

ビジネスモデルキャンバス

事業の構造を可視化し、事業者自身の視点でビジネスを客観的に捉えるためのフレームワークです。事業が提供する顧客への価値を真ん中に置き、その価値を軸に9つの構成要素に分解します。これにより、ビジネスの全体像を直感的に把握でき、チーム内で共通認識を醸成したり、強みや弱みを分析したりする際に役立ちます。

カスタマージャーニーマップ

ペルソナ(仮想的なユーザー像)を設定し、その行動、思考、感情を時系列に可視化することで使用者視点を得るフレームワークです。時系列のアクションごとに整理することで、事業者目線では気づきにくい顧客の本音や課題を浮き彫りにし、顧客満足度の高いサービス開発や改善に繋げることができます。

3. テクノロジー適用力

今日のDXを成功させる上で鍵となるスキルが、テクノロジーを最適に活用する力です。特に「アーキテクチャ」「データ分析」「生成AI」といった技術分野への深い理解と、それらを的確に使いこなす力が求められます。

アーキテクチャ

サービスを効率的に開発・運用し、コストを最適化するために、適切なアプリケーション開発手法の理解が重要です。例えば「クロスプラットフォーム開発」は、一つのコードでiOSとAndroid両方のアプリを開発できるため、コストと期間を大幅に削減できる有効な選択肢の一つです。事業の要件から逆算して、最適な技術構成を設計・選択する能力が求められます(例:宿泊予約サイトのリアルタイム更新要件に対し、SPAとFlutterを採用し工数を1ヶ月短縮するなど)。

データ分析

企業に蓄積されたデータを価値あるものに変え、ビジネス変革へと導くのがデータ分析の役割です。DXのビジョンから逆算して「どのデータを収集・管理すべきか」を設計し、目的に合った分析手法を用いて仮説検証を行う力が不可欠です。やみくもにツールを導入するのではなく、まず「データを使って何を達成したいのか」という目的を明確にすることが、データ分析を成功させるための第一歩となるのです。

生成AI

生成AIの登場で業務は劇的に変化しており、業務効率化やパーソナライズされた顧客体験の提供が可能です。生成AIの特性やリスク(情報漏洩、誤情報など)を正しく理解し、自社の課題に合わせてどの技術と組み合わせるかを総合的に判断する力が求められます。自律型エージェント、MCP、AXなど、最新技術の動向を常に把握しておくことも重要です。例えば、「カスタマーサポート業務を効率化したい」という目標に対し、過去の問い合わせ履歴やFAQを使い生成AIをファインチューニングするアプローチが検討されます。どのタイミングでどの技術を選定するかの「目利き力」が重要になります。

4. プロジェクトマネジメント力

DXの取り組みは不確実性が高いプロジェクトになることが多いため、目的達成に向けて全体を牽引していく強力なマネジメント力が必要です。

  • 目的・目標の合意
  • 期間とスコープ(範囲)の明確化
  • コスト(予算)管理
  • 品質管理
  • 変更管理プロセスの確立
  • 体制と役割分担の明確化
  • 適切な契約形態(準委任、請負など)の選択

5. コミュニケーション力

DX推進には、常に人とのコミュニケーションが伴います。経営層、関連部署、外部ベンダーなど、多くのステークホルダーとの合意形成や調整が不可欠です。

特に、変革に対する抵抗勢力との交渉や、部門間の利害調整など、厳しい局面を乗り越えるための交渉力や精神的な強さが求められます。根回しや適切なエスカレーションといった、組織を円滑に動かすための高度なコミュニケーション力も必要です。

3. DXを推進する人物像と育成方法

ビジネスアーキテクトとは

これまで「DX推進者」と呼んできた役割は、IPAが定める「デジタルスキル標準」において「ビジネスアーキテクト」に該当します。ビジネスアーキテクトとは、DXの取り組みにおいて、目的設定から導入、効果検証まで、関係者との調整を重ねながら一気通貫で推進できる人物を指します。

しかし、このビジネスアーキテクトは、DX関連人材の中で最も不足していると言われており、40%以上の企業が不足を感じています。

これは、ビジネスとITの両面を理解し、組織横断で変革を推進するなど、求められるスキルが幅広く、業務の難易度が高いためです。

ビジネスアーキテクトの育成

「コミュニケーション力」のように経験を通じて磨かれるスキルもあれば、「ビジネス構想力」「顧客理解力」「テクノロジー適用力」のように、業務だけでは体系的な学習が不可欠なスキルもあります。

性質の異なるスキルをバランス良く育むためには、単発の研修やOJT(現場での実務を通じた職業教育)だけでは不十分であり、以下の「4つの柱」を意識した、包括的な育成の仕組みを構築することが有効です。

  • 組織文化の醸成と環境整備
    • 経営層の継続的な関与と支援
    • 失敗を許容し、異分野協力を促進する文化の構築
    • 権限委譲と意思決定プロセスの改善
  • 体系的な育成プログラムの設計
    • 幅広い知識・スキルを習得するためのプログラム提供
    • 外部トレーニングや専門書籍の活用
    • ナレッジマネジメントの仕組み
  • 実践的な経験機会の創出
    • 戦略的プロジェクトへの積極的な参画
    • メンター制度の導入
  • 適切な評価とフィードバック
    • 明確な評価と報酬制度の確立
    • キャリアパスの提示と多角的な視点での評価

まずは「小さく始める」ことから

DX成功に向けた最も確実で効果的な第一歩は、「小さく始めてみること」です。4つの柱を全て完璧に揃えてから始めようとすると、いつまで経っても第一歩を踏み出せません。まずは自社の状況に合わせて、「プロジェクトマネジメントのスキルを強化する」「データ分析のチームを立ち上げる」など、できることから一つずつ着手することが重要です。

NCDCのサービス紹介

NCDCでは、座学中心で実践的なスキル習得に繋がりづらいという課題に注目し、「実践に特化」し「短期間」で即戦力となるビジネスアーキテクトを育成するプログラムを提供しています。

紹介された研修サービスは「超・実践的 DX ビジネスアーキテクト育成プログラム」です。

特徴は以下の3点です。

  • アウトプット中心:多くの演習や課題を通じて、実践的に学びます。
  • 実践的な内容:現役のDXコンサルタントが講師を務め、実案件の悩みにもお答えします。
  • 短期集中:3日間のプログラムで、コンパクトに必須知識を習得できます。

プログラムは、DXの基礎からビジネスモデル創造、UXデザイン、テクノロジー選定、プロジェクトマネジメントまでを網羅し、最終日にはビジネスのアイデア出しから事業計画策定までを一気通貫で体験する総合演習を行います。

ご興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

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