2021年3月23日にオンラインセミナー「DX人材はどこにいる? 新規採用か育成か、企業が取り組むべき課題とは?」を開催いたしました。
この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントをご紹介します。
ここ数年、さまざまな分野の企業様から「新規サービスを創るためのDX人材をどう採用・育成していけばいいのか」というご相談を受けることが多くなってきました。
そこで本セミナーでは、DX人材の採用や育成に悩まれている企業様に向けて、組織においてDXを実現するために必要な人材の定義や適性について、登用のための判断基準をご紹介します。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
日本において一般的なDXの定義は以下の通りです。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
(経済産業省 DX推進ガイドライン 2018年12月)
この定義をもう少し具体的に整理すると、NCDCではDXを大きく以下の二つのパターンに分けられると考えています。
- 新規サービス系DX:デジタルを活用した新たな収益源を作る。新たなサービス・事業を作る。
- 業務改革系DX:デジタルを活用した既存業務の変革を行う。
今回は「新規サービス系DX」を行うときに、どのような人材を登用すればいいのかを中心に、具体的な選定ポイントなどを解説します。
新規サービス系DXに必要なロール(役割)とは
新規サービス系DXに必要なロール(役割)は以下の3つから構成されます。
1儲かること(ビジネス)を考える
新規ビジネスのアイデアを出し、どのように収益を上げるかの仕組みを考える役割です。職種でいうとビジネスプランナーとここでは定義します。まずはこの人材がいないことには新規ビジネスは生まれません。
2デジタル技術で実現する人
アイデアを技術で形にし、システム・サービスを作る人のことです。ここに携わる職種は幅広く、プロジェクトマネージャー、エンジニア、プログラマー、デザイナー、などが該当します。
3持続・運用する人
出来上がったサービスを運用し、サービスを継続させる人のことです。職種としてはサポートや契約などの実務担当者、運用エンジニアです。
新規サービス系DXに適した人材の選定方法
次にそれぞれの職種にどのような人材を登用していけばいいのかをご紹介します。
なお、人材を決めていく順番も重要で、下記の紹介順(上から下)に決めていくことが大切です。
ビジネスプランナー
ビジネスを考えることがメインミッションになるため、自社既存サービスの強み弱み、経営方針、組織を体感して理解している社内人材を登用することが適切です。一通りの仕事をこなすことができるビジネスレベルを持っていて、私生活でもテクノロジーを活用している若手の登用が望ましいです。
外部からの採用はそもそも転職市場に新規事業立ち上げの成功者が少ないこと、成功体験があったとしてもまた自社の分野においては未経験である可能性が高いことから、新規サービス立ち上げの成功には繋がらないので避けた方がいいでしょう。
プロジェクトマネージャー
新規サービスの要件を定義し、開発、ローンチまでの進行管理(マネジメント)を担当するので、情報システム部門や自社のシステム開発担当者のような社内のルールやセキュリティポリシーがわかっている、社内の人材を登用することが適切です。
このポジションにプログラマーやデザイナーを登用したり、外部の開発会社に丸ごと委託すると、要件定義が当初のビジネスプランと合わなくなって想定と異なるものができてしまう可能性があるため避けた方がいいでしょう。
エンジニア
実際に手を動かしてサービス・システムを作るので、システム全般を理解して、一般的なアプリケーションを自分で設計・開発できる人。エンジニアは、基礎的なスキルがあれば状況に応じて必要なことをキャッチアップできる可能性が高いので、社内にいれば社内から、いなければ社外から中途採用しても問題ありません。
ただし、特定の領域(AIだけ、IoTだけ、データサイエンティストだけ、など)に特化した人材を採用してしまうとその後活躍できる場面が少なくなってくるので避けた方が良いでしょう(基礎的なスキル+特定の強みであれば問題ありません)。また、よくあるケースですがコーディング経験しかないプログラマーを採用することも失敗につながります。
プログラマー/デザイナー
新規サービスの場合、立ち上げ期に関してはどのくらいの規模になるのか、期間はどのくらいでローンチしていくのかによって必要な人数も変わるので業務委託契約などで外部のリソースを活用した方が良いでしょう。
ただし、その後のサービス育成期のことを考えた場合、数名社内からアサインする、もしくは中途採用を検討しても良いと思います。
実務担当者
サービス開始後の運用や顧客サポートを実施するため、自社のやり方や文化、社内の組織関係を理解している人材が適切です。外部からの中途採用は避け、社内の人材を登用した方が良いでしょう。ただし、事業が軌道に乗って業務内容がルーティン化したら外部への業務委託も可能になります。
運用エンジニア
サービスを運用しつつ継続的な改善を行うため、これまでの経緯を知っている立ち上げ期のメンバーをなるべく残すことが望ましいです。ただし、システムやサービスの成長が緩やかなフェーズに入ったら外部に業務委託することも可能になります。
セミナー後にいただいたご質問
上記の人材の選定方法について、セミナー後のアンケートでご質問をいただいたので、ここでご紹介します。
ご質問
プランナー、PM、エンジニア、プログラマーなどのうち、兼務できる職種はありますか? 実際にはすべての職種で人材を確保することは難しいので、兼ねられるものや分離が必ず必要な組み合わせを教えていただけたら幸いです。
回答
PM、エンジニア、プログラマーは広い意味ではITのSE職ではありますので、すべてのスキルを持っておられる方であれば兼務は可能かと思います。
プランナーに関してはスキルセットが異なるので兼務は難しいかと思いますが、エンジニア経験のある方がプランナーとして自身の経験を活かしたビジネスプランを立てることはあり得るかと思います。
ご質問
エンジニアがキーになるということですが、社内に必要とするスキルを持つエンジニアがおらず、採用もできない場合、外部のベンダーさんからこのようなスキルを持った人を社内に派遣するようなかたちで運用することは、ありなのでしょうか。
回答
ありです。ただし、外部に単に委託してしまうのではなく、自社の誰かをサポート役のようなかたちで付けて、将来的には自社の要員にスキルトランスファーをできるように意識して進めることが大切です。
まとめ
必要となる人材の採用順番や要件を無視して進めると、プロジェクトそのものがうまく進まず、失敗する可能性が高まります。「要件に合った人材の準備はできないが進めなくてはならない」という場合は、その部分を補い得るなんらかの確証を持ってから進めると良いと思います。
また、全てを社内人材で賄おうとした場合、採用・育成や連携に膨大な時間とコストがかかりますし、スキルありきで採用した場合それ以外に転用できない可能性があります。そういったデメリットを避けるため、外部のリソース(開発会社、コンサルティング会社など)は不足した部分のサポートとして適宜活用することをお勧めします。
DX人材に関するご相談はNCDCへ
「DX人材」を確保するためには外部から新たに採用すべきなのか? 時間をかけて社内で育成する方がいいのか? また採用するにせよ育成するにせよ、人物像をどう定め、どのようなスキルを求めれば自社のDXを推進できる人材になるのか? 考えるべき課題は数多くあります。
NCDCでは、豊富なDX支援の経験を活かして、人材の採用や育成もお手伝いしています。DXの推進や人材の確保、研修方法などにお悩みの方はぜひ一度NCDCにご相談ください。
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