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事例紹介Case
アズビル株式会社様

限られた人員で現場の生産性を最大化する 人員配置システム刷新とデータ駆動型DXへの挑戦

計測と制御の技術を核に、ビル・工場・ライフラインなど広範な領域でオートメーションを追求し続けるアズビル株式会社。同社のサービス本部では、全国のサービス拠点における限られた人員を効率的に配置し、現場の働き方改革と生産性向上を両立させるため、新たな工程管理・人員配置システム「ProfessS(プロフェスエス)」の刷新プロジェクトに取り組みました。

既存システムの保守サポート期限切れを契機に、スクラッチ開発へと舵を切った本プロジェクト。社内の複数の基幹システムやデータベースとの連携を通じて「全国の現場負荷の平準化」やその先にある「データ駆動型DX」へとつなげる取り組みについて、プロジェクトを担当されたサービス本部の皆様に詳しくお話を伺いました。

お客さまのニーズ
システムリプレイスにあたり、複数の社内システムやデータ活用基盤と密に連携し、全国サービス人員の稼働率の可視化と負荷平準化を実現できる、柔軟性の高い人員配置システムを構築できるパートナーを探していた。
NCDCの役割
パッケージ導入とスクラッチ開発のメリット・デメリット比較検討から、要件定義、UIデザイン、システム開発、基幹システムとのデータ連携、保守運用まで一貫して担当。

旧システムの保守サポート期限切れを機に、クラウドネイティブアプリケーションの開発という選択へ

はじめに、貴社の事業概要について教えてください。
鈴木氏:当社のビジネスは広範にわたりますが、大きく3つの事業に分かれています。1つ目は「BA(ビルディングオートメーション)事業」です。これは商業施設、レジャー施設、駅といった建物を対象に、空調制御や熱源制御を行うとともに、それらを防災センターやビル管理者がひとつの画面で一元的に監視できる「中央監視システム」を提供しています。私たちはメーカーとして製造業の側面を持ちながら、システムの施工から、その後のメンテナンスまでを一貫して手掛けています。2つ目は「AA(アドバンスオートメーション)事業」です。提供している制御技術自体はBA事業に近い部分もありますが、対象が工場やプラントなどの生産設備になるので、より複雑なレベル制御やプロセス制御が求められるのが特徴です。3つ目の「LA(ライフオートメーション)事業」は少し毛色が異なります。一般家庭に入っている水道メーターやガスメーター、住宅用全館空調システムなど、より一般顧客や特定分野に向けた製品・技術を提供しています。
計測や制御を中心に据えながら、幅広い事業を展開されているのですね。ビジネス上のミッションについても伺えますか。
清水氏:アズビルは今年で創業120周年という大きな節目を迎え、これを機に「人と社会の可能性を、技術で解き放つ。」というパーパスをグループ全体で発表しました。非常にスケールの大きなパーパスですが、私たちサービス部門としてのミッションは、より現実的でお客さまに近いところにあります。サービス本部のメンバーは、ビルや工場の現場で直接お客さまと向き合う機会が最も多いため、お客さまの現場に密着しながら、そこで日々発生する様々な課題を解決していくことがミッションだと考えています。
  • 今年:取材当時(2026年)
今回NCDCでは、新たな工程管理・人員配置システム「ProfessS(プロフェスエス)」の開発プロジェクトをお手伝いさせていただきました。「ProfessS」がどういったものかを教えてください。
鈴木氏:簡単に言うと、全国のサービス人員の稼働状況を調べて、どの現場を誰が担当するか人員配置の予定を立てていくシステムです。弊社の中には「ディスパッチャー」という人員配置を行う担当者がおり、そのディスパッチャーがメンバーに対して割り当てを行います。また、サービス人員自身がディスパッチャーの役割を果たすこともあります。

「ProfessS」と既存のディスパッチシステム(パッケージ製品)との大きな違いは、社内データとの密な連携です。全国にあるサービス拠点の人員の稼働状況をしっかり可視化し、負荷の高いところへどう応援を回すかを考えたり、適正な人員配置や稼働率の平準化を補助したりすることを一番重要視しています。そのため、弊社内の基幹システムをはじめとした既存のシステムやデータベースと密に連携して、データを活用する仕組みを目指しています。
先ほど、パーパスやミッションについて伺いましたが、ディスパッチシステム「ProfessS」の開発はこれにどう関係してきますか。
木下氏:現場を支えるサービス本部のビジネス上の具体的な目標として、今最も重視しているのが「限られた人員リソースの最大効率化」と「働き方改革」です。全国のビルや工場に入って保守・点検、調整、メンテナンスを行う人員の数は有限です。この限られたメンバーをいかにうまく配置し、効率的に働いてもらうかという点は、組織の大きなミッションとなっていますので、「ProfessS」の開発は、その目標を達成する上で非常に大きな位置を占めています。
「ProfessS」の開発プロジェクトは、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。
清水氏:プロジェクトの直接のきっかけは、これまで使用していた旧ディスパッチシステムの保守サポート期限が切れることでした。旧システムは、市販のパッケージ製品を弊社用にカスタマイズし、AWSのEC2上で動かしていたものです。早期切り替えのために、当初は新たなパッケージ製品の導入を目指して社内の業務システム部に相談していたのですが、その際に「今後目指すべきデータ活用のあり方も踏まえて検討してほしい」と指摘を受けました。
木下氏:そこでNCDCさんにコンサルティングを依頼して、パッケージ製品を導入する場合とスクラッチ開発を行う場合のメリット・デメリットを整理してもらいました。それを比較・検討した結果、アズビルとしてはパッケージ製品をそのまま入れる形よりは、スクラッチ開発にした方が機能追加などに対して柔軟に対応できるのではないかという結論に至りました。
鈴木氏:スクラッチ開発も視野に入れることになった理由は、既存のディスパッチシステムでは複雑な「人員の稼働負荷の見える化」に対応しきれないということが分かったためです。サービス本部や上長は、サービス人員の負荷バランスを予測し、仕事の割り振りを行うことで稼働率のばらつきを平準化したいという狙いを持っています。スキルの違いによるばらつきはある程度仕方ないにしても、同じエリア内でも人によって稼働率が異なる複雑な現状に対応するには、社内の他のシステムやデータベースとも情報を連携する必要がありました。それを実現するにはパッケージではちょっと難しいのかなと、プロジェクトを進めていく中で私自身も思うようになりました。

ベンダー固定化からの脱却と、一気通貫対応への信頼

数あるITベンダーの中から、コンサルティングに引き続き、開発パートナーとしてもNCDCを選ばれた理由は何だったのでしょうか。
清水氏:まず、信頼できるパートナーを増やすために今回は新たなベンダーに依頼したいという社内の意向がありました。その中で、NCDCさんがAWSに関する知見が深いことや、UI/UXデザイン面でも強みを持たれていることが決め手となり、弊社としてもチャレンジングな試みとして、新たなパートナーとして採用させてもらいました。
実際にプロジェクトを進めてみてのご感想をお聞かせください。
鈴木氏:一番良かったのは、デザイン、設計、保守運用といった広範囲の業務を、1つのチームでやっていただき、窓口を一本化してもらえた点です。おそらく他社であれば「設計の話は設計担当の方に聞かなければいけない」ということが起こると思うのですが、NCDCさんでは窓口の方に伝えれば全てのことに対応していただけるので助かりました。1つのチームで対応していただいたので、すごく進めやすかったです。
木下氏:やはり、「相談のしやすさ」は非常に大きかったですね。こちらのちょっとした要望に対しても、すぐにUIデザインを作成し提案していただけたことがありました。実際の画面をお互いに見ながら話ができるため、共通認識を持ちやすく、その点は他社と比べても優れていると感じました。
また、こちらからお渡ししたマニュアルなどの情報に対する調査力・分析力も非常に高く、「そこまで短時間で分析できるのか」と感心させられました。パッケージ導入かスクラッチ開発かを検討する段階でのコンサルティングから、システム開発、さらには保守対応まで、一貫してサポートいただいているため、大きな安心感があります。
ProfessSの予定表の画面。ユーザーにとって直感的に使えるUIデザインを追求した。

環境構築からデータ連携まで、開発を通じて乗り越えた壁

ディスパッチシステム「ProfessS」開発の概要

  • コンサルティング
    既存システムのリプレースにあたり、パッケージ製品の調査を実施。実装方式をクラウドネイティブなスクラッチ開発と決定
  • 1期開発
    リソース登録や予定登録・管理機能といったディスパッチシステムのコア機能を開発
  • 2期開発
    案件の紐づけ機能などデータ連携に係る追加機能の開発や管理機能の拡充
  • 3期開発(現在)
    Outlook連携機能開発、UI改善などユーザーにとってより魅力的なシステムとなるような開発を予定
開発を進める中では、どのような苦労がありましたか?
木下氏:まず、私たち自身にスクラッチ開発の経験があまりなかったため、要件定義などの初期段階は本当に手探りでスタートしていました。一番の苦労は、1期開発における「環境構築」です。NCDCさんの側のAWSの開発環境と、弊社側のAWS実行環境の間で当初想定していなかった環境差異があったらしく、NCDCさんの環境では問題なく動いているのに、弊社側に持ってくるとうまく動かないという事例が発生していました。そうした時は、新井さん(NCDCのエンジニア)をはじめ、皆さんにオンラインでつきっきりで手伝っていただき、「ここのパラメーターを叩いてください」という風に具体的な指示をもらいながら進めました。まさに職人技のような対応でしたね。
鈴木氏:2期開発においては、本番環境とデータ連携させた際の課題が印象に残っています。今回のProfessSは、弊社の基幹システムであるSAP、BA事業のデータが入っているシステム、AA事業のデータが入っているシステムの3つからデータを連携する必要がありました。「データ活用基盤」経由での連携になるのですが、この3つのシステムが同じようなデータ項目を持っているにもかかわらず中身のデータが完全に同一ではないということがありました。例えば、社員情報を社員の名前で持っているシステムもあれば社員番号で持っているシステムもあり、さらに同じ社員番号でも異なる桁数で保持されているところもありました。受注番号なども同様で、同じようなデータを持っているように見えても実は違うという状態だったため、ここは新井さんと何度もやり取りをしてかなり苦労した部分でした。今後はデータ活用基盤の精度が上がって、このようなことは起こらないと思われますが、2期開発の時点では非常に地道な作業が強いられ、NCDCさんは根気よく一緒にがんばってくれました。
AWSを活用した「ProfessS」のアーキテクチャ図

手作業の集計を自動化し、高稼働率の定着を目指す

一般社員のみなさまが、ProfessSの使用を開始したところだと伺っています。プロジェクトの進捗状況について教えてください。
鈴木氏:1期開発では実際にシステムを使えるレベルまでコア機能を実装し、2期開発では主に基幹システムやデータ活用基盤との連携部分の開発を進めてきました。
実は、現状ではまだ一般社員は1期開発のコア機能しか使用していません。リプレース以前のパッケージ製品は、シンプルな工程管理専門のアプリケーションだったため、それと比較すると現在のProfessSは案件の紐付けなどのためにどうしても入力する情報が多くなってしまっています。そのため、ユーザーはまだProfessSの利点を十分に享受できていないのが現状です。
ですから、今期(3期)以降の開発で、ユーザーの目に見えるプラスアルファのメリットをどれだけ提示できるかという段階にあります。
今後はどういった機能の開発を予定されていますか。
鈴木氏:今まさに進めようとしているのは、Outlookとの連携です。今まではディスパッチシステムに自分たちの予定を入れることでサービス本部内での把握はできていたものの、他部署の予定を確認して会議を入れるときなどはOutlookの予定も確認する必要があり、二重管理・二度手間になっていました。今期でProfessSとOutlookの連携を実現できれば、予定を入れたり確認したりする手間が半減しますので、効率は倍になるのかなと期待しています。
管理側のサービス本部の立場から、ProfessSにどんなメリットを期待されていますか。
鈴木氏:サービス本部としての視点では、集計作業がかなり効率化されます。今までは月単位の稼働率を手作業で集計し、各拠点の数値をメールで配信していましたが、それが自動で出るようになります。さらに、BIツールを活用することにより、これまでは営業にあまり開示できていなかった稼働率データに誰でもアクセスできるようになります。営業側でも稼働率を把握してお客さまに説明しやすくなりますし、見たい時にいつでも見てもらえる状態になります。

そして、2期開発で実装した案件の紐付けが実用化され、上司や部署の人間が稼働負荷を可視化できるようになれば、適正な人員配置が可能になると思います。そうすることで、今まで人手不足などの理由で対応できていなかったお客さまへの対応が可能になったり、お客さまをお待たせすることなくサービスを提供できるようになったりすることが期待できます。
現在、アズビルとしては人員の無駄を無くすために、より高い稼働率を目指しています。一方で、特定の人だけが沢山残業をして極端に高い稼働率になっているというようなばらつきもあります。この山の積み崩しができるようになり、みんなの負荷が平準化されれば、サービス人員の業務効率向上につながると考えています。

全社DXの推進と2030年問題。業務改革とスキル継承に向けた展望

アズビル様では全社的なDXの推進も行われていると伺いましたが、今回のプロジェクトとの関係や、今後の社内DXの課題について教えてください。
鈴木氏:今回、直接基幹システムからデータを取るのではなく、社内の「データ活用基盤」を経由して連携できたことは、全社的なDX推進、データ活用の推進と同じ方向を向けていると感じています。私個人としても、このProfessSの開発がなければデータ活用基盤に触れる機会もなかったので、自分の成長という意味でも良かったと思っています。

すでに全社的なDX推進に関してもNCDCさんにご相談させていただいていますが、全社統一のクラウドストレージへの移行といった具体的な課題から、そもそも業務の棚卸しができていないためDXによる効率化が思うように進まないといった、より手前の段階の課題まで、さまざまな課題を抱えています。特に、慣れ親しんだやり方を変えることへの抵抗感がある社員に対して、どう向き合っていくかは大きな課題だと感じています。
木下氏:現場にはまだまだ「紙」での運用が大量に残っています。アズビルが納品した機器は現場で10年、20年と長く使われるものが多く、当時のデータが紙でしか存在しない現場がたくさんあるのです。メンテナンスをする側として、その都度紙のデータを起こさなければならないのが今の大きな課題となっていますので、長期的なDXとしてはまず現場の紙を完全に無くし、デジタル化していくことが重要だと思っています。
最後に、今後の展望や取り組んでいきたい課題についてお聞かせください。
鈴木氏:やはり、どの業界もそうですが「人材不足」が深刻です。弊社でも、2030年頃を境に、定年退職者の増加に伴う人材不足が予想され、現場で動けるベテランの不足が深刻になっています。DXへの取り組みや、生成AI活用などで生産性をあげつつ、同時に実質の人員確保も頑張っていかなければいけない状況だと感じています。
木下氏:元々の長期的な構想としては、ProfessSに「サービスマンのスキル情報(資格や現場に対するスキル)」をデータベース化して取り込みたいという思いがあったのですが、現状はまだそのスキル情報が入っていません。
当社の扱うビルの空調や熱源、セキュリティのシステムは、今の世代だけでなく、前世代、前々世代、その前……と非常に種類が多く、社外の方が触れないように複雑に作られているため、各サービス人員が深い専門知識を持って対応しています。現在は特定のスキルを持つ人材への負荷が集中しやすい状況ですが、こうした限られた人員の中でいかに高品質なサービスを提供し続けるかが重要な課題です。
将来的に資格や経験実績の情報をProfessS内に積み上げていくことができれば、「この現場に合う人はこの人」とAIが自動で選択・提案してくれるような、ディスパッチのAI化に役立てていけるのではないかと考えています。

清水 一 氏
アズビル株式会社
サービス本部
サービス企画部 企画管理グループ
グループマネージャー
木下 拓也 氏
アズビル株式会社
サービス本部
サービス技術部 サービス開発グループ
サービス企画部 アロケーショングループ
鈴木 雄祐 氏
アズビル株式会社
サービス本部
サービス企画部 アロケーショングループ

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