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事例紹介Case
株式会社Liberaware様

ドローンによる自律飛行点検で、鉄道現場の労働災害ゼロと業務効率化を目指す

「狭くて、暗くて、危険な」屋内空間の点検を可能にする世界最小級のドローン開発と、収集データを用いた3次元化などの画像解析サービスを通じて、インフラ点検・維持管理の課題解決と現場のオートメーション化を実現する株式会社Liberaware。同社はコンソーシアム形式で、鉄道施設の巡視・点検・災害時確認をドローンで自動化し維持管理の効率化・省力化を図るプロジェクト「Project SPARROW」を推進しています。そのドローン運航・リソース管理の肝となる「運営システム」の開発についてお話を伺いました。

お客さまのニーズ
前例のない完全自律飛行の鉄道点検ドローンプロジェクトで、ドローン運航やリソース管理をする「運営システム」の構築に取り組むため、要件定義からUI/UXデザイン・プロトタイプ開発まで伴走しつつ、将来の内製化を見据えて技術・プロセスを継承できるパートナーを探していた。
NCDCの役割
ドローン運航・リソース管理を行う「運営システム」の要件定義から、現場担当者でも操作しやすいUI/UXデザインの設計、実装まで一貫して対応。また、複数ベンダーが関与する中でシステム間の連携仕様を取りまとめるなど、調整役も担う。

鉄道現場の「3大労働災害」撲滅に挑む「Project SPARROW」の挑戦

はじめに、貴社について教えてください。
内田氏:弊社は2016年に設立された会社で、主に手のひらサイズの点検用小型ドローンの開発を行っています。この小型ドローンは、原子力発電所の内部調査や、八潮市の道路陥没事故現場でのトラック発見など、非常に危険で過酷な空間を点検するドローンとして活用されています。私たちのミッションは「誰もが安全な社会を作る」ことであり、そのために「見えないリスクを可視化する」ためのプロダクトを提供しています。また、ドローンで撮影した映像の3D化や、AIを活用した映像解析などのソリューションも提供しています。
世界最小クラスの点検専用ドローン「IBIS2」
今回NCDCが参画した「Project SPARROW」の概要について教えてください。
内田氏:鉄道業界では、設備の老朽化・自然災害の激甚化・人手不足を背景に、高経年設備の効率的な維持管理や災害時の迅速な状況把握が課題となっています。さらに、人手不足が進む中でも触車・感電・墜落という三大労働災害は依然として発生しており、現場の安全確保も急務です。本プロジェクトは、こうした課題に対応するため国土交通省のSBIR(中小企業技術革新制度)に採択された国家プロジェクトで、鉄道点検をドローンで代行することで、危険な現場への立ち入りを最小限に抑えることを目指しています。
一般的なドローン開発プロジェクトとはどのような点が異なるのでしょうか。
有川氏:本プロジェクトで開発する機体は、人が操縦する通常のドローンとは異なり、自律的に飛行・点検・帰還する「自律型ロボット」です。実際に列車が運行する線路上を飛行するため、航空機の安全思想を取り入れ、1つの部品が故障しても飛行を継続できる「冗長化※1」や、悪天候下でも安定飛行できる設計など、高い安全基準を設けています。線路内では落下事故が即座に鉄道の運行停止につながるため、鉄道の営業運行と点検を同時並行で成立させることが非常に難しく、だからこそ自律型ロボットへの期待が高いという背景があります。
  • 冗長化:システムの一部に障害が発生しても、全体としての機能を維持し続けられるように、予備の装置やシステムを複数配置しておくこと。
「Project SPARROW」における試験飛行の様子
非常にステークホルダーが多い点も、本プロジェクトの特徴とお聞きしています。
内田氏:おそらく弊社の中でも一番ステークホルダーの多いプロジェクトです。鉄道事業者様をはじめ、自分たちだけでは実現できない部分も多いため、複数のパートナー企業にお声がけして共同開発を進めています。さらに、踏切の上空を飛行してよいか、といった法規制の観点からも多くの調整が必要で、関係官庁それぞれとお話しして許可をいただく必要があります。非常に多くの関係者が関わる、大規模なプロジェクトです。

コンソーシアム内で浮き彫りになった「運営システム」の課題とパートナー選定

数多くのステークホルダーが協働する中で、NCDCが担当した「運営システム」はどのような位置づけなのでしょうか。
舟迫氏:私たちが目指すビジネスの提供形態として、鉄道事業者様が現場で何もしなくてよい世界を作りたいと考えています。点検はドローンが担い、その運航管理はLiberawareのメンバーが行う形になります。しかしそうなると、複数現場へのドローン配置や運航人員のアサインなど、バックヤードの業務が非常に煩雑になることが想定されました。その煩雑な業務をシステムで効率化するために立ち上げたのが、今回の「運営システム」です。
内田氏:元々、システム全体の役割分担は大枠で決まっていたのですが、どうしても整理できていない部分がこの「運営システム」に当たる部分でした。自律ロボットが日常的に動き出し、鉄道の運行とロボットの点検が同時に行われるようなオペレーションは前例がありません。既存のドローンシステムのように、コントローラーの制御や映像が見えるだけのアプリを持ってきても適合しないイメージがありました。
NCDCをパートナーに選定していただいた理由を教えてください。
舟迫氏:パートナー選びにあたっては、いくつかの条件を設けていました。まず、新規分野で要件が定まりにくいという背景から、アジャイル・スクラムの手法で柔軟に対応できることを重視していました。加えて、私たちのメインのお客様である鉄道事業者様との親和性や実績があることも重要な条件でした。さらに、現時点では社内にリソースがない状態ではあるものの、ゆくゆくは自分たちで開発を主導していきたいという内製化の思いがあったため、すべてを外部に委託して終わりにするのではなく、開発を通じて技術やプロセスをしっかりと継承してもらえる会社であることも求めていました。NCDCさんはこれらの条件を満たしており、実績にJR東日本様の案件が掲載されていたことも、最終的な決め手になりました。

協業を通じて得た気づきと、組織としての成長

実際にNCDCがプロジェクトに参画してからの印象について伺えますか。
舟迫氏:「運営システム」は口頭では説明しづらい機能が多く、実態が掴みにくいシステムです。そんな中、NCDCさんは最初の段階で私の拙い要件から精緻な画面モックを書き起こしてくれました。目に見える形で表現されたことで、社内メンバーが即座に共通のイメージを持てただけでなく、ちょうど開催されていた「鉄道技術展※2」でお客様にご紹介した際にも、業務の流れを手に取るように理解していただけました。ドキュメントベースの仕様書では絶対に得られなかった反響で、NCDCさんの強みが非常に発揮された部分だと感じています。
  • 鉄道技術展:鉄道・交通システムやインフラ技術、車両、旅客サービスなど、あらゆる鉄道分野の最新技術が横断的に集まる国内最大級の専門展示会。
「運営システム」のドローンの飛行計画(ミッション)を管理する画面のUIデザイン ※本画面は開発中のものです
AWSを活用した「運営システム」のアーキテクチャ図
開発のプロセスやプロジェクトの進め方についてはいかがでしたか。
有川氏:私自身、色々なソフトウェア開発会社とお付き合いしてきましたが、NCDCさんは一段と丁寧で素晴らしいと感じています。わからないことはわからないと正直に伝えてくれるおかげで、自分たちが伝えきれていなかったところが明確になる。そのやり取りを通じて、私たち自身がパートナーと協働していく上での「グリップ力」がまだ足りていないことに気づかされ、非常に勉強になりました。
舟迫氏:私たちの行き届かなかった部分を、NCDCさんが豊富な経験から先回りして配慮し、事前に課題を潰してくれました。それによって開発の時間が短縮できた面もあります。また、利害関係者が多く共通の言葉を探るのが難しい中で、皆に通じる共通言語を粘り強く引き出してくれたことが、全体の効率化に大きく繋がりました。
内田氏:プロジェクト発足当初は、主導権を自分たちで十分に握ることができず、開発を自分たちでコントロールしきれていない面がありました。しかしNCDCさんに参画いただき、ソフトウェア開発のプロセスを間近で学ぶことができたことで、今は他社に対しても見積もりの精度を厳しく見極められるようになりました。やれること・やれないことのリスクを明確にするなど、開発を自分たちで主導する力が組織として大きく向上したと実感しています。
プロジェクトの中で、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
舟迫氏:プロ意識に驚かされたエピソードがあります。システムへの理解を深めるため、弊社の八街にある実験場へハードウェアの見学に来ていただいた際、担当の木村さんは事前に休日を使って個人的にドローンのレッスンを受け、ドローンの基礎を学んだ上で見学に臨んでくださいました。そこまでしてくれるのかと正直驚きましたし、圧倒的なプロ意識を感じました。

巡回業務の「8割削減」と保守業務全体の効率化、自動運転車を超える未来の社会的意義

現在の「運営システム」開発の進捗状況はいかがでしょうか。
舟迫氏:本プロジェクトは長期的なロードマップに基づくもので、現在は「TRL6※3」という段階にあります。お客様の実際の環境での実証はまだ少し先の話ですが、今のタイミングで業務の課題やオペレーションの設計をいかに深く想定し潰せるかが、次のステップを左右します。私たちは鉄道現場の経験が浅いため、鉄道の有識者にご意見を伺いながら、想定ユーザーに実際に使っていただき、課題を洗い出してブラッシュアップするサイクルを丁寧に回しています。
  • TRL6:Technology Readiness Level(技術成熟度レベル)の略で、技術の成熟度を評価する指標。TRL6は「制御された環境(シミュレーションや実際の運用に近い環境)でのシステムやプロトタイプの性能実証」の段階を指す。
「Project SPARROW」が商用化された際、具体的にどの程度の効果が見込めますか。
内田氏:試算では、人が歩いて線路内を巡視・点検する業務の約8割を削減できると見込んでいます。鉄道総合技術研究所(鉄道総研)がJR四国様と共同で発表した論文※4によると、通常業務の約2割がこの「巡回業務」にあたります。この巡回業務の大幅な削減に加え、巡回業務以外の目視作業や内勤作業の効率化も図ることで、鉄道保守業務全体としても大きな負担軽減効果が見込まれます。
  • 鉄道工学シンポジウム論文集 2024年28巻1号 鉄道保線系設備の保守効率化のための実態調査と展望(四国旅客鉄道、鉄道総合技術研究所)
今後のロードマップや、目指す最終的な目標について教えてください。
有川氏:まず現在開発中の機体やシステムをしっかり作り込み、来年の実証実験を成功させ、2028年4月のリリース・商用化を実現することが、目前の絶対的な目標です。これが実現すれば業務フローが変わるだけでなく、社会的にも「定期的にドローンが線路を自律飛行してよい」という合意形成がなされます。見方を変えれば、自動車の自動運転よりも早く、車輪を持たない自律飛行ロボットが一般の方の目に触れる、初の社会インフラ点検事例になるはずです。非常に社会的意義の大きいプロジェクトだと考えています。将来的には、この「運営システム」を起点に、他施設や他社への外販・カスタマイズ展開も視野に入れています。
最後に、今後NCDCへ期待することをお聞かせください。
舟迫氏:長期的には自社で組織を整備し、ソフトウェア開発を内製化していきたいと考えています。ただ、組織づくりのノウハウや、目線の異なるステークホルダーをまとめて一つのシステムを作り上げるノウハウについては、1〜2年先を見据えたとき、まだ自信があるとは言えません。技術開発メンバーは現在急増していますが、人が増えてもすぐに組織力が高まるわけではありません。共通理解を醸成し、現場とのギャップを埋めるチームづくりについて、ぜひNCDCさんの知見からアドバイスや支援をいただきたいと思っています。
内田氏:「運営システム」は一見バックヤードの地味なシステムに見えるかもしれませんが、私たちのドローン運用における最も重要な「思想」がすべて凝縮されています。このシステムそのものが、他社へ展開する際の強力な差別化要素になると確信しています。この思想をどう打ち出し、マーケティングやビジネスへとつなげていくか——そうした戦略面についても、ぜひ一緒に考えていただけると嬉しいです。

内田 太郎 氏
株式会社Liberaware
執行役員
SBIR事業管掌
有川 樹一郎 氏
株式会社Liberaware
技術開発部
舟迫 洋平 氏
株式会社Liberaware
SBIR事業開発部

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