大橋氏 ── UCBは、ベルギーに本社を置くグローバルバイオファーマで、重篤な疾患と共に生きる患者さんのより良い生活の実現を目指して、革新的な医薬品の研究開発や創薬ならびに ソリューションの提供に力を注ぎます。 日本では、免疫炎症領域とニューロロジー領域に注力しており、今回のアプリの対象となった新たな抗てんかん薬を展開しています。
UCBは、「Patient Value Strategy」という患者さんのために価値を創造することを全社員が念頭に活動し、患者さんとそのご家族の方々が日々前向きに生きていけるような価値を提供します。
大橋氏 ── 今回は、てんかん患者さんの経過をフォローするアプリを作りました。
てんかんの患者さんは日本に100万人近くいると言われています。一人ひとり発作の症状が異なり、画一的な治療法では対応できない点がこの疾患の難しいところです。そのため、個々の患者さんの状況に基づいた情報提供をすることは、ドクターの重要なニーズになります。しかし、アプリ以前は、ドクターから聞いた情報をMRが自分の手帳やExcelファイルに記録して、個々人で活用していましたので、社内で共有されることや情報をすぐに引き出し対応することはできませんした。このような状態では、てんかんに苦しまれている患者さんにとっての価値を、ドクターに提供することも難しいと感じていました。
大橋氏 ── 目的に関しては二つあります。
一つ目は、ドクターから伺ったてんかん患者さんの情報をアプリケーションに記録し、それを元にドクターとディスカッションするといったコミュニケーションツールとしての利用です。
製薬企業は、患者さんと直接やりとりすることはできません。今回開発した症例フォローアプリでは、ドクターとMRの間で患者さんの状況を匿名のまま深く共有し、それを元に、製薬企業として適切な情報提供を行うことを目的としています。新たな抗てんかん薬の日本発売に合わせて2016年に、営業組織も新たに作りました。この症例フォローアプリを使うことで、症例ベースで話した経験がなかったMRも、ドクターと一人ひとりの患者さんについて深くディスカッションできるようになってきました。
二つ目は、MRが入力した情報をエリアマネージャーや本社スタッフがすぐに確認できることです。
これにより、臨床現場でどのような患者さんにどれくらいの用量でどのような薬剤と一緒に使われているか、安全性についてはどうか、といった詳細な情報を本社側で素早く把握できます。
そうすることで、最初に立案した戦略に問題が無いかを確認でき、必要に応じて素早く修正できるといったことです。
患者さんの情報を全体としてとらえるのではなく、今見ている患者さんを知った上でドクターとやりとりできることは、「Patient Value Strategy」というUCBの戦略を実践することに非常に役に立ちます。
大橋氏 ── 2016年9月よりMRが使い始めたばかりではありますが、入力症例数は毎月増えています。
リリースから3ヶ月後の2016年12月末までにMR全員が日々活用しているというのが成果の一つではないでしょうか?
現場の声としては、アプリで症例を追うことにより、MR自身が先生に提案した治療によって、発作が減ったなど、自分の活動結果が目に見えることやドクターからの突然の質問に対しても、登録した情報を元に会話したり、情報をすぐに引き出せることが非常に好評です。
大橋氏 ── アプリ使用のルール化や強制などは一切しておりませんが、MR全員が活用してくれています。NCDCさんとの開発段階から、現場のMRにもプロトタイプを触ってもらったり、意見をフィードバックしながら要件を修正したり、UIを改善しながら開発を進めたのが良かったのではないかと思います。
大橋氏 ── 症例フォローアプリの開発実績がある会社を検索している際に、NCDCさんのホームページを見つけ、同じような取り組みをされている企業の事例を拝見して、問い合わせをしてみました。
大橋氏 ── 4社程度のコンペ形式をとり、各社の提案を聞きました。その中でNCDCさんの提案が本アプリの開発に一番合っていると思いました。具体的には、早い段階から画面イメージができてきて、アプリのイメージがITに詳しくない私どもにとっても分かりやすいと思ったこと。他製薬企業での豊富な実績があり、細かなレギュレーションについても知見があることの二点が大きなポイントになりました。
大橋氏 ── アプリの完成イメージを簡単に伝えただけで、当初考えていたイメージ通りの画面構成がすぐに出てきたときは驚きました。
また、製薬業界の薬事法などについての様々な細かいルールを理解して頂いていたため、説明を省けて助かりました。
それと、開発期間が短い中でも要望通りのアプリを作ってくれたことですね。2016年3月に初めて提案依頼の連絡をして、そこから薬の発売までの期間を考えると、正直あまり時間が無い状況でした。NCDCさんはこの短い開発期間の中で妥協もなく、ほしい機能をしっかり実現してくれました。
大橋氏 ── とにかく対応が早く驚きました。
ユーザテストで出てきた課題に対する修正についても、よくある「社内に持ち帰って検討します」などといった回答はなく、その場でプログラムを修正して見せてくれたり、遅くても次週までには反映頂き再度テストを進めることが出来ました。
その結果、こちらからの依頼を反映した製品がおよそ2ヶ月で完成しました。
大橋氏 ── とにかく、こんなに短期間で、全ての依頼事項に対して解決できたアプリケーションを作成頂けたことです。
選定理由でも話しましたが、現場での使い方を想定して作成されたモックアップを、MRに確認、すぐに修正する手法を取り入れてもらいました。開発の早い段階でMRの使いやすいインターフェースや仕組みなどがすぐに反映され、その後、さらに改良できたことによって、ユーザーであるMRが十分に満足できるアプリに仕上がったのだと確信しています。
大橋氏 ── UCB本社(ベルギー)に対して本アプリ活用事例を紹介したところ、非常に良い評価を得ることができました。本社からは常に、新薬発売直後の患者さんのファーストエクスペリエンスはどうであったか?を聞いてきます。本アプリによって間接的にでも最初に投与された患者さんの情報を取り出すことができます。今までシステマティックにできていなかったこの部分をタイムリーにかつデータベースに基づいて報告することができました。
このようにUCB本社からも現場からも高い評価を得られましたので、今後はドクターから伺う情報の精度を上げ、患者さんにより深く寄り添えるためのものに発展させていきたいと思っています。日本発のこの方法を機会があれば、グローバルにも提案したいです。
大橋氏 ── MRの使い勝手にこだわって作った分、多くのチャレンジングな要望をしてしまい、かなり困らせたかもしれません。無理な要望にも真摯にご対応頂き有難うございました。
今後も「Patient Value Strategy」実現のために、本アプリは重要な役割を担っていきますので、引き続き、ご支援をお願い申し上げます。