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2016/01/11 Enterprise UX, UXデザイン

UXデザインにおける合意形成の最も有効な方法

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NCDCでUXデザインもかじっている金です。(上の図とは多分、関係ありません。)

ここ最近参加したあるUXデザインの勉強会で、「UXデザインでデザインの方向性に関してメンバー間の意見が分かれた場合、どうやって合意に導くか」ということに悩んでいる方々がいました。このような悩みは他でもたまに耳にするので一回私の意見を書いておこうと思います。

UXデザインのプロセスの中には必ず曖昧な部分があって、デザインの方向性を判断する必要がある瞬間が訪れます。適切なペルソナの定義、採用するユーザーストーリーと捨てるべきストーリー、またユーザーテストの解釈とその対応策に至るまで、プロセスのいたるところでメンバー間の意見がぶつかり合う可能性があります。
もちろん、ペルソナやユーザーストーリーはリサーチによってある程度の根拠を掴めることができますし、ユーザーテストをすることでユーザーから直接データや意見を得て判断の根拠にすることもできます。しかし、それでも曖昧な部分は残ります。リサーチに対しては対象範囲とリサーチの手法、得られた情報の信頼性に対する反論を提議することができます。ユーザーテストに対してもサンプリングの偏りやサンプル群のサイズの適切性に対する疑問を訴えられることがあります。いずれにせよ、UXデザインプロジェクトに参加しているメンバーの中で判断が必要な時があります。
多くの課題はメンバー同士である程度の議論を経て方向性を合意することができますが、どうしても意見が分かれる場合、もしくはどうすればいいか分からない場合もあるはずです。そのような場合に、どうやってメンバー間の意見を調整し、納得させて、合意に導けばいいでしょうか?私はこのような質問には簡単にこう答えます。
「合意形成なんかする必要はありません。」
つまり、「UXデザインにおける合意形成の最も有効な方法」は「合意形成をしない」ことなんです。なぜかというと、その合意には時間と努力をかけて形成するほどの価値がないからです。同じプロジェクトで活動しているUXデザインチームのメンバーは基本同じコンテキストを共有しているはずです。そういう状態で合意できないものがあるのなら、それこそ、そのプロジェクトのUXデザインにおけるとても大事なものである可能性もあります。しかし、そこで民主主義的にみんなが議論し、合意することには何の価値もありません。頑張って合意に至ったとしても、それが正しいとの保証がないからです。その合意は下手すると次のユーザーテストでひっくり返されるかもしれないものです。そんなものに使う時間があったらどちらかに素早く決めて作業を進め、次のユーザーテストやプロトタイプで早速確認した方が絶対いいと思います。
しかし、合意形成までには至らないとしても、当面の方向性をどちらかには決めないといけないでしょう。それはUXデザインチームのリードUXデザイナーが判断すればいいと思います。UXデザイナーはUXデザインの責任を持っているロールですし、UXデザインに対して既存の経験と知見が他のメンバーよりは豊富なはず(!)です。したがって、先ずは彼・彼女の意見に従った方が確率的に安全性が高いでしょう。つまり、みんなで合意するために頑張るよりは信頼できる一人に判断を任せることです。もしその判断が間違っていたとしても、その確率は合意形成の時より高くはないはずです。合意形成に時間をかけるより素早く判断し、もっと早く確認するサイクルを作ることに注力するという考え方です。
しかし、メンバーは場合によってはUXデザイナーのその場の判断に納得できないかもしれません。UXデザイナーは他のメンバーに対してなぜそのように判断したかをきちんと説明し、その判断にまつわる不確実性とそれを検証する方法を提案する必要があります。ここがUXデザイナーとしての腕の見せ所でもあり、コミュニケーション能力とUXデザイナーとしての経験と知見が価値を発揮するところだと思います。だからUXデザインプロジェクトにはある程度のカリスマ性のあるUXデザイナーがいた方がいいです。信頼はごく希薄なリソースです。UXデザイナーがメンバーに対して円滑なコミュニケーションができなかったり、結果的に間違った判断を繰り返すと彼・彼女への信頼は急速で薄まれていきます。信頼を失ったUXデザイナーがリードするプロジェクトはいろんな声が出始め、やがて難航することになるでしょう。(話は逸れますが、個人的にはこのように属人性が強い面からUXデザインの方法論は方法論としてはあまり優れたものではないと思っています。)
言い換えれば、チームメンバー内での合意形成よりは、リードUXデザイナーによるある程度の一時的な独裁の方がより効率的で、結果的により良い結果に繋がります。もちろんUXデザイナーによる独裁は、後続の検証過程できちんと評価されるし、場合によってはその評価に基づいてクーデターも可能ですのでご安心を!。
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最後に一つ例を挙げてみましょう。iMacから始め、iPhone、iPadまで、次々とヒット商品を生み出したアップルのデザインプロセスを考えてみましょう。その中には合意形成という民主的なプロセスはあったんでしょうか?書籍や記事など、多様なリソースから伺えることは、あのジョブズ氏がユーザーの役となり、デザインにおける最終的な判断をしていたそうです。彼が製品に対する無限責任をとって、彼の最終判断で世界を相手に大きなイノベーションを引き起こしたんです。下の図は「もしアップルが民主的な方法で仕事をしたら?」というタイトルのものです。私の「UXデザインでメンバー間の合意形成に大きな価値はない」という思いと一致する部分があると思います。
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この話とは別に、「そもそも合意方式で本当に優れたUXデザインが生み出されるか」に対する議論も面白いと思います。それはまた別の機会に。
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