資料公開|事例に学ぶ。建設現場のデータ見える化と、データ分析やAI活用によるDX推進

公開 : 2023.02.13  最終更新 : 2023.06.06
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2023年2月9日にオンラインセミナー『事例に学ぶ。建設現場のデータ見える化と、データ分析やAI活用によるDX推進』を開催いたしました。
この記事では当日用いた資料を公開し、そのポイントを解説しています。

建設現場では施工管理のためにさまざまなデータを記録する必要がありますが、従来は人手による作業が多く、すべてのデータを正確に・迅速に記録して可視化するのは困難でした。
さらに、複数の企業が関与するプロジェクトでは、現場のデータを企業間でどのように情報共有するかもよく課題になります。

しかし近年は、IoTやクラウドを用いた現場の見える化やデータ活用、現場の人手不足を補う遠隔支援などにチャレンジする企業が増え、参考になる事例も増えつつあります。

今回は、地盤改良やコンクリート打設工事などの具体的なDX例を交えて、データ可視化・活用の方法をご説明します。

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建設業界のDX

建設業界のDXプロジェクトの多くは下図のように、まず「データのデジタル化」を行い、次に「データの活用」に取り組むという順で進んでいます。
今回は、そのプロセスの中でも特に図で示した赤丸部分4点について詳しく説明します。

  1. 建設現場の建設機器などからIoTを利用してデータを取得する
  2. 取得したデータを分析して業務改善に活かす
  3. 取得したデータを使って現場以外でできる業務を現場から分離する
  4. 取得したデータをAIで活用しさまざまな予測や改善を行う

施工データのデジタル化

NCDCでは、建設機器などからIoTでデータ取得、データ書き込みを行う場合、下図のような仕組みをよく用いています。

建設現場には、大きく分けて2種類のデータがあります。

  • 建設機器が保有していて、何らかのかたちで取り出せるデータ
  • 人がチェックして記録するデータ

この2種類のデータを両方クラウド上のデータベースへ送るために、建設機器のデータは、外付通信装置(エッジサーバー)を経由してクラウドへ連携させる。人がチェックして記録するデータは、タブレットやスマホなどのモバイル端末からアプリなどを使って入力するという仕組みです。
集めた現場のデータは全てクラウド上で共有できるため、本社や支社など遠隔地からも現場と同じデータを利用することができます。

建設業向けIoTプラットフォーム「ミエルコウジ」

前述の仕組みをオーダーメイドで開発することも可能ですが、NCDCではSaaSとして建設現場のデータをリアルタイムかつセキュアに共有できる「ミエルコウジ」を提供しています。

ミエルコウジは大きく3つの特徴があります。
1.建設機器からIoTを使ってデータをクラウドに収集できる
2.モバイルアプリから実績データや確認結果の入力、写真撮影ができる
3.遠隔値からデータを見て現場支援や品質管理ができる

ここから先はミエルコウジを活用いただいた事例なども交えて、具体的な建設DXの進め方を説明していきます。

建設機器とクラウドの連携

先ほどから繰り返し建設機器のデータをクラウドに集めるとの説明をしてきましたが、具体的には、IoTを使って建設機器に記録されている(あるいは外付けのセンサーから取得できる)、工事の進捗を示すデータやその他施工管理に必要なデータを取得します。
例えば杭打ち機で掘削する際に深度や傾斜角度などのデータをほぼリアルタイムでクラウドに集めていきます。
どこまで詳細なデータを記録すべきなのか、どの程度の頻度でデータを送るのかなどは工法や管理基準によって異なるので必要性に合わせて検討します。

また、建設機器からクラウドへデータを吸い上げるだけではなく、反対方向の通信、つまりクラウド側で設定した設計値や管理許容値などのデータを建設機器や管理装置へ送ることも可能です。従来はPCで作成してSDカード経由で建設機器に渡していたデータをネットワーク経由で送信できるようになります。施工機器や管理装置が対応していれば、特定の許容値を超えたらアラートを出したり、機器の動作をスタート・ストップしたりするといったコントロールも可能です。

建設機器からのデータ取得方法

建設機器のデータをクラウドに送るには、どうやって建設機器からデータを取得するかが最初の問題になります。
NCDCでは、PLCやシーケンサーなどの制御装置からデータを取り出せる場合は、制御装置と外付通信装置(エッジサーバー)をLANケーブルで繋ぐケースが多いです。建設機器がWi-Fiや Bluetoothなどのインターフェースを有している場合は、ケーブルは使わず無線でアクセスすることもできます。

近年では、建設機器がはじめからIoT機能を有しており、建設機器メーカーが管理するクラウドにデータを収集しているケースも多くなっています。
しかし、各建設機器メーカーのクラウドにデータがあると、複数メーカーの建設機器を利用している建設会社は一元的にデータ活用するのが難しくなります。さまざまな現場・さまざま建設機器から取得したデータを一元管理するためには、各メーカーのクラウドにあるデータベースと接続して可視化できるサービスを利用すると便利です。

先ほどご紹介したNCDCの「ミエルコウジ」ではAPIという機能で各建設機器メーカーのクラウドを含めさまざまなサービスと連携可能です。
複数のクラウドサービスにあるデータをどう一元管理するべきかお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

建設機器からデータが取得できない場合

最近の建設機器はクラウド連携がしやすい一方で、古い建設機器はクラウドにデータを集める仕組みは付いていないですし、データを取り出せる仕組みさえないことも多いです。
その場合でも、例えば加速度センサーや温度センサー、GPS、カメラなどで得られるデータであれば、センサーを建設機器に外付けすることで現場のデータをクラウドに収集することは可能です。

データ活用の方法

続いて、クラウドに収集したデータの活用方法として、ミエルコウジを使って現場を支援する事例をご紹介します。

ミエルコウジのダッシュボードでは、さまざまなデータをリアルタイムに確認することができます。このダッシュボードは、管理項目、許容値などを工法や部材の仕様に合わせて事前に設定しておきます。

地盤改良での適用例

地盤改良工事では、下図のように土質柱状図、現在の深度、電流値、目標到達深度、回転数などをダッシュボードで確認することができます。

例えば、杭打ち機で掘削する際の「傾き」が許容値を超えた時に、ミエルコウジが自動的にアラートを出し、施工管理者に注意を促すことも可能です。

このように、データで判断できるものは許容値を設定しておいたり、ベテランの方が施工の過程で注視しているデータをダッシュボードに組み込んでおき見るべきポイントを示唆したりすることで、経験の浅い方でもベテランの持つノウハウを活かせるようミエルコウジがアシストします。

コンクリート打設での適用例

コンクリート打設工事の場合、下図のように時間の経過と注入量の累積を表示し、計画した総注入量に到達したか確認することができます(工法や工種により指標は異なります)。

打設する速度が重要な工法の場合、注入量の速度が規定を超えた場合はアラートを出すことも可能です。
これを応用して、規定速度を超えた場合には建設機器の動作を止めるような制御も可能性として考えられます。

データを活用した建設DX施策

続いて、ミエルコウジなどのサービスを活用して現場のデータをリアルタイムに共有できるようにすることで実現可能な4つの建設DX施策をご紹介します。

1.遠隔地からの現場業務支援、複数現場の担当

従来は紙やExcelを使って現場で管理していたデータをクラウド上でリアルタイム共有すると、「現場でやるべき業務とそうでない業務」を見極めて、現場以外でも可能な業務については遠隔地から支援できるようになります。
また、現場業務の軽減によって、ひとり一人の管理する現場の数を増やす(複数現場の管理を担当する)体制を取りやすくなります。

2.現場業務の外部化、センター化

遠隔地からでも現場の施工データにアクセスできれば、一部業務の外部化・センター化が可能です。
たとえば、従来現場で行っていた顧客向け資料の作成や施工のダブルチェックなどを外部からサポートすることが可能です。職長の方が残業して日報や出来高データの登録などを行なっている場合は、日中に事務所側がサポートすることで労働時間の削減につながるのではないでしょうか。
また、こうした業務支援を集約しセンター化することができれば、業務ルールの平準化・標準化、コスト削減、欠員が出た際のフォロー体制の確立などさまざまな効果も期待できます。

3.業務の自動化

現場から分離した業務のうち、定型化できるものは一歩進めて自動化できる可能性があります。人が関与すべきものと機械で自動化するものを分けることで処理速度が向上し、人は本来の業務へ集中できるようになります。
自動化をさらに進めると、集めたデータを用いて人の頭では考えられない複雑なデータ間の関連性を見出す検証作業のようなものをAIに自動処理させる仕組みも考えられます。

4.働き方改革への対応、人手不足の解消

下図は国土交通省の資料を抜粋したものです。現行制度では3500万円を超える請負金額の工事では監理技術者の専任が必要ですが、働き方改革への対応やICTによる合理化により専任制度の緩和が検討されています。

令和4年4月25日 適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001479700.pdf


具体的には、遠隔施工管理を活用することで兼任を可能とする制度が検討されているのですが、この資料に書かれている遠隔施工管理とはスマホでデータが見られる、ウェブ会議やウェブカメラで現場の状況がリモートで分かることなどを指します。

しかし、たとえばウェブカメラさえあれば遠隔地から現場の状況を正しく早く理解できるのかというと難しいケースもあります。
そこで、ミエルコウジのような現場のデータをクラウドで共有し、リアルタイムで同じダッシュボードを確認できるサービスが役立ちます。ウェブ会議と併用してもらうことで、監理技術者が遠隔地にいる場合でも詳細なデータを見ながら現場のスタッフと相談して、適切な指示を伝えることが可能になります。

現在の建設業界が抱えている人材不足や、今後の働き方改革への対応をしていくためには、一人当たりの業務を効率化することが求められます。
建設DXの施策としては、デジタル技術を活用することによって現場でやるべき業務とそうでない業務をうまく分割して、現場の業務を効率化することが重要だといえます。

データ分析やAI活用

現場からIoTを用いて取得したデータの活用方法として、最後に、データ分析やAIにより予測や改善に役立てる方法を紹介します。

現場のデータがExcelファイルで個人や支店ごとのフォルダに置かれたままでは、それらを横断的に分析することは困難ですが、クラウド上のデータベースに集約すれば、全国各地のデータを横断的に分析することも容易になります。

分析にはBI(Business Intelligence)と呼ばれるアプリケーションが使えます。
例えば「工法ごとの〇〇のコストを見る」など指標を定めておけば、BIを用いて簡単にグラフなどで視覚的に表現できます。また、支店ごとのデータ比較など各ユーザーが自分の見たい指標に切り替えることも容易にできます。

ただし、闇雲にデータを集めればいいわけではなく注意点があります。全社横断でシステム化やデータ分析を行う場合に以下のような課題がよく挙げられます。

  • 支店ごとに現場IDの採番ルールが違う
  • 支社ごとに帳票フォーマットが違う
  • 同じ現場でもシステムごとに異なる現場IDを使っている

この状態のままではデータを関連付けて分析することができないため、これらの業務ルールの標準化や見直しもする必要があります。

AIによる予測や分析

建設現場から収集した大量のデータをAIに学習させると、過去のデータに基づいて将来を予測することができるようになります。
たとえば、過去の現場データからAIで予測モデルを作り、工事計画や日程を予測する使い方が考えられます。新しい現場の工期や工種などの情報を入力すると、AIが似たような現場の過去のデータから必要な期間を予測して、工事計画の例を表示するというような仕組みです。

現場経験が浅い方が経験豊富な方と同じように工事計画を立てるのは難しいと思いますが、AIの予測と経験豊富な方の考えが近いものになることも多いため、経験やカンという暗黙知を明らかにして、若手に引き継ぐという目的でもAI予測は役に立ちます。

なお、あらかじめ分析の観点や予測のロジックが立てられる場合は必ずしもAIを使う必要はありません。例えば、現在の計画に一人足すと工期がどのくらい縮まるかを予測するのはAIがなくても実現可能なはずです。
なんでもAIでやろうとせずに、複雑なデータ間の関連性の調査などAIに任せた方がいいものを見極めて利用することが大切です。

AIによる予測や分析の例
  • AIに過去の工事記録を学習させ、工期、人員に影響の大きい要素をいくつか見出し、次の工事に必要な期間や人員を予測させる
  • AIに現場の写真を学習させ、画像内の文字を読み取らせる
  • AIに現場機器の発する音を学習させ、振動音から機器の異常を検知する

建設DXのご相談はNCDCへ

NCDCはIoTを用いて収集した施工データの活用(データ分析)や、業務ごとに分断されたシステム間のデータ連携など、多様な実績があります。
IoTを用いたプロジェクトをご検討中の方、建設DXプロジェクトのパートナーを探している方はぜひお問い合わせください

また、ミエルコウジに関しては、対応可能な施工機械、計測機器、管理装置を積極的に増やしています。「自社製品をクラウドに接続できるのか検証したい」「クラウドに接続できたらどうデータを見える化できるのか知りたい」といった課題をお持ちの方はぜひご連絡ください。

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