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2015/01/09 User Experience, UXデザイン

UXデザインの範囲を議論することは、もうやめましょう。

金成哲です。

最近UXデザインが注目され、UXデザインの話がネット上でもよく議論されています。UXデザイナーとして活動している私としては、今のUXデザインに対する多様な業界からの熱い興味は嬉しい限りです。しかし、それらの議論の中でよく繰り返されることで、ちょっと無駄だなと思うことがあり、私なりの意見を書いてみたいと思います。

それは何かというと、誰かのブログやSNS、ウェブメディアに記載されたUXデザインに関する文章に対して、下記のような指摘をする人がよく見かけられます。

「それはUXデザインの範囲を狭く捉えているからだ。私はUXデザインをもっと広く捉えている。」

この手の話はUXデザインがまだ机上で学習されていて、仕事の現場では幅広く浸透していなからこそあるものと私は考えています。要するに、現場でUXデザインを活用する経験値がたまると自然になくなる議論です。

Ember

UXデザインの範囲をどのように捉えるかは各人がいくらでも自由にできます。一つの製品の機能定義だけを範囲に捉えることもできるし、製品やサービスの誕生から消滅までの全てのライフサイクルと捉えることもできます。もっと広く考えると、企業レベル、社会や国レベルでのUXデザインも考えられます。蛇足ですが、私は日々の生活や活動をもって、私という一人の人間の人生におけるUXデザインを行っているつもりです。要するに、生きていることがUXデザインをしているようなものなのです。

しかし、私がが個人的にUXデザインの範囲をどのように定義しているかは、仕事をする上であまり関係がありません。UXデザインの書籍に書かれた定義も多くの場合、そのままではリアルな仕事に適用できません。仕事で大事なのは「このプロジェクトにおけるUXデザインの範囲をどこまでにするべきか?」です。つまり、UXデザインの範囲は毎回変わります。

例えば、UXデザイナーとしてお客様のプロジェクトに参加する場合、その仕事におけるUXデザインの範囲は個人の思いよりは、プロジェクトの目的、お客様の予算、主幹部署の組織内での力、納期、使えるリソース、そして参加者に与えられた役割等、多様な要因によって決まることが一般的です。

一方、自社の製品やサービスの開発に関わっている場合は、自分の役職や役割によって、期待されることやできることが制限されます。自分の仕事を囲んだ社内・外の環境(コンテキスト)と密に連携することは大事ですが、期待される枠を超えて勝手に動き出すことは難しく、全体的に視点からすると望ましくもありません。

つまり、同じ人でも、個々の仕事で異なる範囲のUXデザインを行うことになるのです。従って、誰かが自分の仕事の経験やそこから得た知識・成果を述べることに対して「UXデザインの範囲が狭い」というのは、一般論を語るお偉い学者さんでもあればいいでしょうが、現場の仕事をしている人としてはどうかと思います。もし自分が考えているUXデザインの範囲と相手が語るものとの間に相違がある場合は、その差を生んだコンテキストを考えて見るべきです。相手がそのコンテキストや制約の中でやったことに対する評価をすればいいだけで、「範囲が狭い」という発言は、UXデザインの範囲をもっと広く捉えることができるリソースがあって、かつ十分なROIを実現できる確証があるとの前提がない限り、無用な突っ込みにすぎません。そんなこと言う人はUXデザインでコンテキスト分析、ペルソナ定義をする理由から考え直してみた方がいいかもしれません。おそらく、相手を理解しようとせず、自分のコンテキストを押しつけるのがUXデザインで学んだことではないだろうと思います。

事件は現場で起きています。また、現場の状況はマニュアル通りには動いてくれません。教科書的なUXデザインの範囲の定義なんかは書籍の中と、自分の頭の奥の方にきちんと整理しておけばいいです。現場では状況に合わせた柔軟な対応が必要です。今後そのようなことを言いたくなった場合は、相手のコンテキストを十分理解した上での意見であるかを自問するようにしましょう。ウンチクは夜の飲みの場とかのために控えておきましょう。

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